生権力としてのマグナレギオとベルゼブフ

ytkhako
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公開:2024/11/1

マグナレギオってメチャ生権力だよねって思っている。

生権力という概念についてちゃんと説明できるかはかなり怪しいのでなんかフワッと……詳細は本とかを読んでほしいんですけど、ざっくり言うと近代以前の権力はだれかを死に至らしめる力として存在していたのに対し、近代以降の権力は人びとの生のあり方とか再生産とかの領域に入り込んでそれらを左右する力としてあるよねみたいな感じだと思う(たぶん)。

まず、マグナレギオって借り腹やバナルマなどの制度でメギドラル社会の人口管理みたいなことを行っていて、これって生政治と呼ばれるものだなと思っている。

そのうえでマグナレギオはヴィータ体で過ごすことをメギドたちに強制していて、メギドたちの身体の在り方に介入している。あと正しい身体の在り方を占有してもいて、マグナレギオの外に在るまつろわぬ者たちにたいして「正しくない」身体を強いているという意味でも、メギド全体の身体に介入している。

あとマグナレギオは戦争をして個を発揮するものとしてメギドの生を定義していて、それに沿わないメギドたちをどこからか見つけてやってきて罰するということもやっている。マグナレギオの方針に沿わないメギドを蛆にとって都合が悪いとしてフライナイツが消していたとかも含めて、メギドラルのほぼ全体に監視の目が及んでいて、メギドたちに「戦争をして個を発揮せよ」という生き方を強制していて、多くのメギドたちはこのマグナレギオが提示する生の価値を内面化している。

それによってメギドたちは自らは戦争をして個を発揮するものだという価値を持つ主体として自らを成立させている。

個を発揮する生という価値の内面化ってすなわち同一性という、つねに他ではなくこれである自分という幻想の内面化なんじゃないか? とわたしは思っていて、それって他であり得た可能性の簒奪なのではないか。みたいなことを考えている。そしてこれは作中でヴィータの可変性、他である可能性を奪われていないこと、と対比されていると思っている。

みたいなことを考えたときに、ベルゼブフってこれらに対置させられる存在として出てきているのでは、と思った。マグナレギオが規定するのとは違う個と個の関係を模索していたのはもちろんそうなんですけど、生まれたときにしばらく成り損ないだったのって、何にでもなれる可能性がある状態から他者との戦争ではない関わりによって自らを成り立たせていくってことじゃない?

それって生権力であるマグナレギオによるものとは別のところにも主体としての個が成立する契機を見出しうるという可能性を示しているんじゃないかな? といまのところ思っているし、そうだといいな〜と思う。

@ytkhako
ごくふつうのはこ