年末に義理の実家に帰っていた。東京から1時間半ほどの北関東の片田舎にある街だ。
義父が気を利かせて、近所のローカルスーパーでお昼ご飯を買ってきてくれるのだが、それがなんとも言えないものだった。
定番で買ってきてくれるのが、398円のハンバーグ弁当。安い。安いのは認めるが、それなりの味。ハンバーグが硬すぎて、付属の割り箸がへし折れた。
ハンバーグ弁当だけでは心許ないと思ったのか、78円のおにぎりと69円の菓子パンも一緒に買ってきてくれる。だけど、お弁当だけでお腹いっぱいなので誰もそれに手をつけない。
次の日も、同じものを買ってきてくれた。本当に同じものを。398円のカチコチのハンバーグの弁当。コツを掴んで割り箸を割らずにハンバーグを食べることができた。だけど、こんな事で成長しても仕方がない。
そして積み上がる78円のおにぎりと69円の菓子パン。昨日の分がまだ余っているのに、この日の分も加わってさらに増えた。
義父は食に無頓着なのだ。お腹いっぱいになれば何でも良いという考えなのだと思っていたが、実はただ「知らない」だけなのではないかと思ってきた。
「お昼=近所のローカルスーパーのカチコチのハンバーグ弁当」。
それ以外を知らないのだ。
次の日は、ちょっと食べに行きませんか?とお誘いして、車で40分ほどかけて「はま寿司」に行った。義実家周辺にはローカルスーパー以外のお店が本当に無いのだ。
はま寿司はもちろん普段から普通に美味しいし、地元でもたまに行くのだが、この日はカチコチのハンバーグ弁当から解放された感も相まって、最高のはま寿司だった。義父も喜んで食べてくれていた。
次の日のお昼、義父にこう言われた。
「また、あの寿司屋行くか?」
はま寿司を覚えた。