漫画について

yuami
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公開:2026/1/2

「あわい」を本やWebで読んでくださった人へ、ありがとうございます。あとがきに書ききれなかったことや、ふと考えた事を記録してみます。

この作品は、メインは「自分らしさ」を考える主人公の物語ですが、凛ちゃんの存在についても同じくらい私にとっては大切で、だからといって彼女を舞台装置的な見え方に閉じ込めてしまうことも絶対に嫌だと思っていたので、ひとりの個性として読んでもらえるように、色々悩みながら描きました。

90年代生まれの私が見てきた世界では、何かのマイノリティであるというだけで「自分らしい」とか「個性的」などと評されて、尖ったキャラクターを期待されたり、手放しで全肯定されるような現実を少なからず目の当たりにすることもありました。

原稿期間中も、不意にそのような場面に出くわし、その場にいる面々が悪びれもなくきらきらと1人の人間を型に押し込んで褒め称えていくあいだ、私はそばで黙っていることしかできませんでした。

せめて作品で、世間に対して静かに問いかけたい、何が正義だとか悪だとか裁きたいわけではないけれど、漫画を通してひとつの視点を描けるのならば、それは小さくても意味があるんじゃないかと祈りながら描きました。

「作り出したものが誰かを傷つける可能性もあるんじゃないか?」といううっすらとした不安は常に頭を離れることはなかったのですが、個人的な体験を添えて連絡をくれた同級生がいたことは、積もらせた心配が吹き飛ぶくらいに嬉しかったです。

こちらの作品は、ありがたい機会をいただき漫画アプリに掲載され、自分の力だけでは到底届くはずもなかった人たちに読んでいただけることになりました。時間を割いてページをめくり、閉じずにコメントを打ち込むところまで辿り着いてくれた人までもがいることにしみじみ感謝しています。

以下は余談です。

この話を描くタイミングで、お話作りの上達のためにシナリオの教本を買いました。世の中にあるエンタメがいかに計算され尽くしているのかを知り、センスだとか才能といったぼんやりとした言葉以前の膨大な先人の知見やどっしりしたメソッドの存在に安心したことを覚えています。

創作となると進む先はあまりに果てのない宇宙のようにも感じるけれど、自分の目の前にはまだまだ堅実な階段が続いていくんだ、と学生時代のような瑞々しい気持ちになりました。本を紹介してくれた人は「この本読んだら夢がなくなるよ?」とその場では笑っていたのですが、手にとってよかったと思っています。

2025年は、6月の作品も含めて試行錯誤の多い年で、いままでのような奔放で直感的な描き方とは違う印象を受けた人もいるかもしれません…過去のあなたの方が好きです、と言われてもしょうがないとは思っています。まだまだ私の作品はハリボテの小屋かもしれないけれど、そのうち家のような形を成して、いつかは自分らしい色をふんだんに添えることができるかもしれないので、その時また出会って楽しんでくれたら嬉しいです。