どうしてこんなに自信のない声なのだろう。人生というものをそれなりにやってきたのに、どれぐらいの声量で、音程で、どれぐらい間をおいて話せばいいのか、いまだによくわからない。大きな声を出すと緊張も比例して大きくなるので蚊の鳴くような声しか出せない。話す人によっていろいろ変わってしまうのが嫌だから、いっぱいの人がいる時は話すのをやめる。
どうしてこんなに人と目を合わせるのが怖いのだろう。相手のどちらの目を見るかもいつも悩む。悩んで悩んで、いつも大抵は相手の左目を見ている。本音を話す時は、俯いてしまう。昔から、笑っていないといけないんだという強迫観念がつよかったのは、だいぶまっしになった。
どうしてこんなに写真を撮ってはだめなものとして考えてしまうのだろう。撮ってもいいですか?と聞き出すのが恐ろしい。街中で不意にカメラを構えるのにもとても勇気がいる。家族の写真を撮るのは、昔は、撮るといなくなってしまいそうだからやめていたけど、最近は撮っておかないといなくなってしまいそうなので多少無理しても撮るように心がけてる。
インターネットはいい、全部おんなじ文字の大きさだし、目見なくても大丈夫だし、文字を考えてから送れるし。
とまあ、いろいろ考えていても、ファインダーを覗いてしまえば、その瞬間に雑音がザッと消える。ファインダーの中以外は真っ暗で、そこにだけ世界がある、あの感覚、たまらなく好き。