シンセイジからヒトになりつつある

松下ゆき
·

子、この世に生まれ落ちて45日経過。

出産で、子を一目見てまず思ったのは「に、人間だー!」だった。おなかにいるときは胎動を感じても「なんかドゥルンドゥルン動いてウナギが入ってるみたいだな」と思ってた。しかし入ってたのは人だった。

だが身体は人間のそれではあるものの、動きはもちゅもちゅと緩慢に空を掴むような手つき目つき。動物じみていた。「新生児という生き物」というのが正確な感じ。

「シンセイジ」いかにして「ヒト」になってくんだ?というのは気になっていた。言葉も持たず、視力もほぼ持たず。世界をどう認知するというのか?

そしたら生まれた翌日、寝ながら口を激しくチュパってるのを発見して衝撃。初日はこんな動きしてなかった!つまりはじめてミルクを飲んでから、「世界をチュパチュパするといい感じ」に気づきチュパに目覚め、チュパの夢を見ていた。

そうして子の世界はチュパ・尻が冷たい・眠い で構成された。わたしは「チュパ」担当。

おもえば胎内のときは呼吸も食事も排泄もオートメーションだったわけで。きみも大変だな。

そんな子であったが、一ヶ月あたりから、新生児微笑とは異なる、明らかにこちらと目が合った時にニンマリする笑顔をするようになり、「あぷー」「ふぇう」とかめちゃくちゃ語りかけてくるようになった。

1ヶ月にして、明らかになんか言いたいことあるし、コミュニケーションを求めている…!45日現在、その頻度は加速度的に増えている。

生まれながらに社会的生き物の運命付けられている動物のさだめを見た気持ちだ。

人付き合いがあまり器用でない自分は、「いっそ一人でも満足して楽しく過ごせる孤高の人になりてぇ…」と思ったことは一度や二度じゃないし、そんな単独で完結できる人は完全生命体とすら思う。ただ、完全生命体はヒトに生まれた以上かなり逆らった状態なのだろうな…と赤子の原始の社会性欲を見て改めて感じいった。

なんにせよ、ニコニコしてあぷーあぷーと語りかけてくる赤子はかわいくてかわいくてあらためて悩殺されている。チョロい親である。これがやつらの戦略か!