美容院に来ている。いつからか美容院でカラーの合間などに本を読むことを思いついた。部屋の中で積み上げられている本は一冊一冊は手に取ると読みたいと思ってる本なのに、部屋にあるとそれが当たり前になってなかなか読みきれない。そのうちの一つを気分で美容院に持っていく。いや、気分も大事だけど美容師さんに話しかけられても大丈夫そうなタイトルという点も大事だ。
今日は『ワンルームから宇宙をのぞく』という本を読み終えた。もともとSNSで繋がっている人が携わって作られた本で、それで私のタイムラインに流れてきたので気になって読んでみたのだった。正直言うと読む前は、著者のプロフィールだけで自分のコンプレックスが掻きむしられるようだった。私は小さい頃作家になりたかった。そのあと研究に夢中になって、そして研究が自分には向いていないと絶望した。博士課程には行かずに就職して技術者になろうと思った。だから博士号を持っている人にはすべからく嫉妬してしまうのだが、そこに「文章が書ける」が加わるとめちゃくちゃ羨ましくなってしまう。めちゃくちゃである。
それでも本を読むと、当たり前だけど誰かの見た景色や考えや、気持ちに触れられて、そこには自分が言葉に出来てなかった気持ちの欠片のようなものを見つけた気がした。久保さんの風景描写が好きだな。私はついつい自分の内面ばかり言葉にしてしまうから、もっと見た風景とか、そこにあったものをちゃんと覚えて書き起こしてみたい、と美容院の大きな窓から差し込む光を見て思った。