視聴率低迷の月9「君が心をくれたから」は名作かもしれないって話。

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視聴率過去最低をマークしそうな「君が心をくれたから」をなぜ不人気なのかを探るために見ていたら、このドラマは名作なのでは?と思えてきた。

ではなぜ、受け入れられないのか?

結論から言えば「コンテンツの速度」が現代にマッチしていないからだと考えている。

コンテンツの速度というのは、話が進む時間とコンテンツ自体が提供される時間の2つがあると思う。

TikTokなどショート動画は最初の1秒〜2秒が勝負で、ここで面白いと思ってもらえなければ見てもらえない。

だからドラマも最初に面白さが伝えないと脱落されるが、このドラマはとにかくテンポが遅い。

最初の3話くらいまで間延びしている感じで、やっと6話目くらいで本題に入ってきた印象で、週1話というペースがさらに脱落者を生んでる気もする。

Netflixのように全話配信されたら流れで見てくれる可能性もあるが、特に続きが気になるような展開もないので、「もういっか」になりやすい。

「主人公の女性が、愛する男性のために心を差し出すことで助ける。しかし心を差し出すというのは、3ヶ月かけて五感をすべて失うという過酷な奇跡だった。」

これがドラマのあらすじだが、最後は絶対「泣く」というのが見えてしまうし、脚本も泣かせることに注力しているような、感動の押し売りのような印象なので、これらの点が視聴率が下がっている原因かな?と思っている。

ここからは、「実は名作かも?」と感じた点を書いていく。

結論は「悩める現代人が求めているものが詰まっている」という点で、このまま低評価で見られないのは残念な気がした。

このドラマでは、3ヶ月以内に決められた期限に1つずつ五感が失われていくのだが(1週間後に嗅覚など)、その過程が丁寧に描かれていて、例えば嗅覚なら香水の匂いを嗅ぐだけで良い思い出が蘇ってくるように、記憶と強くリンクしていることがわかるようになっている。

嗅覚を失う前に主人公が、匂いと思い出に向き合っていき、今ある幸せを感じるという姿が、「当たり前のものが実は幸せだった」と改めて気づかせてくれる。

そして「幸せな後悔をするべきだ」というセリフが出てくる一連のシーンでは、主人公はどっちを選択しても後悔する状況でこのアドバイスをされる。

人生でも数ある選択肢で悩む人は多いが、結局どれを選択しても、どっちが良かったなんて答えは出ないし、大小限らず後悔は必ずついてくる。

だから、今は何が大切なのか?「今」を意識することをこのシーンでは伝えている気がした。

このドラマは「五感を失う = 絶望的な未来」だとして、よくよく現状を考えたら幸せだったりしない?という、将来に絶望し現状を嘆いてばかりいる現代人たちへのメッセージになっている気がした。

超高速情報化社会で暮らしているとそのテンポで考えてしまうが、そういう瞬間的に消費されるのではなくて、するめみたいに噛み締めていくドラマだと思う。

じっくりと見ながら、今ある幸せについてじっくりと考える。

忙しい現代人に、そんないい機会を与えてくれるドラマだ。

どうなっていくのか、続きが楽しみになってきた。