吾子は、夕飯がごはんとハンバーグとみそ汁だとすると、ハンバーグを全部食べて、次にごはんを全部食べて、最後にみそ汁を飲むという食べ方をする。三角食べをしなよと思うのだけど、ふとコースや懐石は一品ずつ食べるよな、とその言葉を飲み込む。
私はコースが苦手だ。いっぺんに出して欲しい。いっぺんに出されたコース料理がおいしいかどうかわからないけれど。コースや懐石というのは、思うに食事というのが会話の時間であるという前提でデザインされた発明に思われる。そして私にとってはそうではない、食事の時間は味わう食べる時間以上の何物でもない、ということに過ぎず、吾子はといえば確かに食事の時間によく喋る。親と顔を合わせてゆっくり会話できる貴重な時間だと思っているのかもしれない、と逆に顧みたりするのだった。