生理が重いタイプの女だ。ピルを飲んでいるからかろうじて生活できるけれど、重い日はできるだけ何も予定を入れず、ひとりで過ごせるようにしている。頭痛・腹痛・倦怠感といった体調の悪さよりも、心の不安定さのほうが生活に障る。
仕事の予定だったら1回あたり1~1.5時間という限られた時間だけギリギリ平常心を保てるけれど、プライベートで1日中誰かといると100%当たり散らす。理不尽にキレる。だからひとりで過ごす。
年末年始の後半、生理が来た。当初は適当に理由をつけて一人で過ごそうかと思っていたのだが、結局パートナーと一緒にその日を迎えてしまった。案の定、重い日になると感情が毛羽立って、何もかもが嫌になる。いつもと変わらない会話をしていても、言葉の節々に嫌味を感じては勝手に不機嫌になってしまう。そういう自分にまた腹が立って、自己嫌悪のループに落ちていく。
パートナーから「とりあえずベッドで過ごそうか」と提案されたのに、ベッドに行くまでにしばらくかかった。提案されたから行くというのが主体的じゃなくて嫌だし、一度ベッドに入ったら何もしないで1日を過ごすことになりそうで嫌だ。そもそも動きたくないからベッドに行くまでがだるい。
……というような内容でしばらくごねていたけれど、いっさい不機嫌にならず、かといって「じゃあどうするの」と詰めてくることもなく、なんとなく私の戯言を受け止めながらベッドに誘導してくれたパートナーのおかげで、いつの間にかあたたかい布団にくるまれていた。
おもしろい話題も思い浮かばないし、テレビも本もイライラしそうで受け付けないので、ただただ腕枕にうずくまってぐずぐずと愚痴にもならない声をぶつけていると、スマホがブブブ、と震えた。
LINEで「すきだよ」と送られてきていた。気の抜けたひらがなのスタンプをわざわざ一文字ずつ打ち込んできていて、画面が間延びしてアホらしく見えた。そのあともいくつかのパターンの通知が飛んできて、最終的にはどの選択肢を選んでも「すき」という結果にたどりつくLINEで作ったあみだくじが送られてきて、腹を抱えて笑った。
直接言葉を交わすと話題に関わらずそのすべてに感情が逆立っていたけれど、スマートフォンの画面に浮かぶ「すき」の嵐には、さすがに何一つ文句が言えなかった。醜い言葉と暴力的な論理を敷き詰めて感情をぶちまけたくなる私を、解像度の粗い単純な言葉がよしよしと撫でて落ち着かせる。
生理が重い日には単純で馬鹿みたいな「すき」をください。私が私を「きらい」だと思う回数よりも多く、私が笑えるまで。