ジーザス・クライスト=スーパースター(エルサレムVer.)感想【東京公演@自由劇場】

yum
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観劇日∶3/2 マチネ、3/6 マチネ、3/20 マチネ

※全体の感想ですが一部男性アンサンブル5枠さんの感想あり※

夏ぶりの自由劇場とお洒落キャストボード…!クラシカルな赤い壁紙、黒いボードに光る金字の推しの名前、本当に最高ですねぇ…。

今回のエルサレムVer.は3回観劇することができました。3/2は抽選で巡り会えた1階席、3/6,20は先行から2階席でした。

同じ主題でもキャラクターの伝え方や演出がジャポネスクとがらりと変わっていて世界観の描き方に鳥肌が立ちました…。

特に実感したのはやっぱりジーザスとユダ。

ジーザスについて、ジャポネスクで神永さんを観たときは隈取メイクの影響もあってか感情の動きが声でしか判別できなくて自分の死を前にしても諦観しているように感じていたんだけど、エルサレムでは、悩んで、苛立って、絶望して、諦めてと人間らしい表情一つ一つがはっきり見えたから、ピラトが言う「ちっぽけなただの男」であることを実感する。この作品のジーザスはどうしようもなく“人間”だったなと感じた。

ユダについて、ジャポネスクと愛の種類が変わっているような?単純に観劇回数が多くて私の解釈に幅ができたからかもしれないんだけど、ジャポネスクではジーザスを一方的に神聖視して自分の理想から外れたことに落胆していたように見えていた。でも、エルサレムのユダに感じたのは落胆よりも嫉妬や独占欲のような、自分との関係性から外れることへの我儘さが見えたような気がした。

そして、今回更に嬉しかったのはキャストさんの複数パターンで観劇できたこと!加藤さん・神永さんジーザス、吉岡さん・佐久間さんユダ、守山さん・江畑さんマリア。他にも名前のあるキャラクターのキャストさんから両アンサンブルさんまで、本当に沢山のキャストさんに素晴らしい舞台を届けていただきました。

主要な方だけキャストさん別に感じたことを書くんですけど、ズレてる解釈かもしれないので大目に見てもらえると嬉しいです…。

加藤さんジーザス

落ち着いているというか、綺麗であろうとするように見えるジーザス。表情を取り乱しているようには見えないのに、苛立ちとか感情がしっかり乗っていることが分かるのが凄い。神が答える気がないと理解した時のヤケクソな感じの「死ねと言うなら死んでやるからそこで見てろよ?!」っていう反抗心?がめちゃくちゃ刺さる。

神永さんジーザス

ジャポネスクと違って不安気な表情をするようになった気がする。恐る恐る神へ問いかけて、(返答がない…?まさか私にこのまま死ねと言うのか…?!)というような、心情が漏れ出て徐々に高ぶるような歌い方に感じた。この場面で2階席からオペグラ越しに視線が合った時は心臓が竦んだ。そして、圧倒的な声量でシャウトが物凄く伸びて群衆に群がられるところとかゲッセマネとかゾワッとしました。

吉岡さんユダ

吉岡さんが抱く愛は青くさい、若さがあるような感じがした。嫉妬心かな?「私はこんなにも貴方を愛しているのにどうしてこちらを見てくれないのか。女にうつつを抜かしてしまうなんて、私の愛した貴方はどこへ行ってしまったのか。許せない。憎らしい」というような。理想を押し付けているけど、当人は押し付けてるなんて微塵も思っていないから裏切られたって被害者になる。引っ込みがつかなくなった子供みたいな心がぎゅ…となる切なさがあった。

佐久間さんユダ

「貴方が綺麗であるために貴方を愛している私が支えてあげるのです」と、私が居るから貴方はここまでこれたのですよとでも言うような、彼の愛には執着心が見えた。そこにマリアが割って入った上にジーザスが心を開いているからとんでもないですよね。はぁ??って感じ。佐久間さんユダの裏切りは「ならこっちから壊してやろう」という幼気な破壊衝動にも見える。太宰治の『駈け込み訴え』でまさに!と思うのは佐久間さんのユダだなと改めて思いました。

また、加藤さん・吉岡さん、神永さん・佐久間さん、加藤さん・佐久間さんと組み合わせで相互関係が微妙に変化しているところもとても面白かったです。

初めて2階席から観て気づけたんですが、照明でユダやジーザスの心情が見えるような演出が好きだなと思いました。ユダは青みがある粘度高そうな渦巻模様でどろどろぐちゃぐちゃな愛憎が見えた。ジーザスは掌で絵の具をぶち撒けて塗り拡げたみたいなじゃぎじゃぎした模様で苛立ちが強く見えた。特にあの場面は何故自分が死ぬのかって嘆いているから、感情の刺々しさが照明によって増していて、ピンの当たり方も含めて(腰から下が沈むように黒く見えた)死の予見が視覚化されているように感じました。

あとこれとても驚いたんですけど、磔刑の時に血がガッツリ滴る仕様になってたんですね…。観劇前に噂には聞いてて、私個人はグロ耐性も割とあるので身構える程もないかと思っていましたが、予想以上にちゃんと血に見えて凄かったです。オペグラで近くに観ると血糊だなってちゃんと確認できるんですけど、舞台全体から観ると照明の暗さで赤黒い空気に触れたような血の色になっていて絵になるなと感心しました。

それにしても血の表現がリアル過ぎて、それを受ける加藤さんも神永さんも「本当に杭打たれてないよね…?」と心配になるほど苦痛に満ちた演技をされるんですよ…。心底ゾッとしました…。カーテンコールで急いで血糊拭いたのかなと思えるのでちょっとホッコリするんですけど、痛い表現が苦手な人には結構辛い場面なので気持ちに余裕を持てる時に観ると良いかなと思います。

以前のジャポネスクは、初めての世界観と圧倒的な表現力を前にとにかく目を開き続けて観ることに必死だったんですが、今回のエルサレムでは3回観劇できたから戯曲を楽しむ余裕も持ててとても嬉しかったな。歌詞どころかリズムも思い出せなくてモヤモヤしていたところが解消されて、好きな曲が増えていって、今はCDが欲しくて欲しくてたまりません。ジーザスもユダもマリアも群衆も司祭たちも全部の歌が素晴らしくて大好きです。

ジャポネスクで気になった使徒たちの歌『最後の晩餐』がエルサレムを経てもっと好きになって、更にオーバーチュアがど真ん中に刺さりました。ジャポネスクのオーバーチュアは、次々に群衆が出てきてあっという間に流れてしまって聞き入ることが出来なかったんですが、あのドロリとした重い入りからのギターはやばいですね…。ジーザスに手を伸ばしながらも触れられない群衆の動きも含めて大好きすぎて早く京都公演が観たい…。

ここから男性アンサンブル5枠さん感想です。

ジャポネスクからの継続は森さんで、佐々木さんは完全にはじめましての方でした。エルサレムのお稽古写真で森さんが兵士の衣裳だったからジャポネスクと同じ1枠かなと思っていたんですが、なんと5枠。全く違う役なのかどうなのか、ドキドキしながらmy初日を迎えました。

嬉しい事に、ジャポネスクと似た配置でまた隊長の役を拝見できましたし、更に台詞も新しいダンスや動きも増えていて最高尽くしでした!

森さん隊長は、どっしり構えて立ち塞がっていて、押し退け、腹部に一発蹴りを入れてなぎ倒し、下から掻い潜る者は髪の毛引っ掴んで払い倒して…と凄まじかったです。表情変わらなくて淡々としてるところが更に怖さ倍増してる。

佐々木さん隊長、群衆への一発目は飛び蹴りしてたの強い。あと結構ぼこすか膝蹴りかましてて武闘派な隊長さんでした。前線に出て戦うの好きそう。

2人の隊長の鞭捌きの違いも面白かったところ。

森さん→左右の手に持ち替えてなるべく地面を引きずらないようにしている。39回のうち合間に2回ほど大きくぶん回す動作がある。最後の39回目は一番激しいし40回目も躊躇わずにやってしまいそうな程勢いが強い。鞭打ちの命令を受けた時は淡々としているのに20回目くらいで目を見開いて口元は歪んでて目は笑ってない最高に怖い笑顔を披露する。

佐々木さん→右手でやり通す。鞭打ったままの荒々しさを残して地面を引きずりながら移動する。ピラトに命じられた時から口元が笑みの形をとっているけどこちらも同様に目は笑ってない。39回目のぶん回しが終わった後は思ったよりすんなり突き飛ばされてた。偶然かもしれないけど。

エルサレムVer.もとても好きな作品でした。JCS素晴らしい。今の状態でジャポネスクVer.が観れたらまた違った感想を持つことが出来たりするのかな?ジャポネスクもいつかまた見たいしエルサレム次の京都公演も楽しみ過ぎるし、福岡来てくれるのも待ち遠しい…!

キャストさん、スタッフの皆様、東京公演大変お疲れさまでした。無事に千秋楽を迎えられて心よりお祝い申し上げます。これからも素敵な時間と巡り合えることを楽しみに待っています!ありがとうございました!

@yum
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