ここだけ異次元なのかと疑うくらい何もかも安価だったお気に入りのスーパーがなくなってしまった。子供の頃から親に連れられて通っていたスーパーだったので結構ショックだった。跡地には新しくドラッグストアが出来た。ピカピカの塗装が印象深かった。
私は新しいものに慣れるまでとにかく時間がかかる。そういう特性だ。新しく出来たドラッグストアに興味がありつつも何となく物怖じしてしまい、毎回店舗に入るまでには至らなかった。通院の通り道にあるし入りやすい場所にあるのに、何となくの物怖じが長引いた。
そのまま半年ほど過ぎたある日、世間話で気になるドラッグストアがあると同僚に話したら「あそこ惣菜美味しいよ」と教えられた。知見だ。でもドラッグストアなのに惣菜? はて? 不思議に思いつつも重要なのはそこではない。美味しいお惣菜があるのなら行くか…となり、勇気を出して行ってきた。
親の顔より停めた駐車場に車を停め、猫にギャリギャリにされたマイバッグを片手に店内に入る。
左手に焼きいもが売られていた。紅はるか。
この時点でこのドラッグストアの事がちょっと好きになっていた。焼きいもを売っているスーパーの事を愛している。でもおかしいな。ドラッグストアに普通焼きいもって売ってるのかな。
店内を眺める。鮮魚コーナーや生肉コーナーもあるし、玉ねぎやキャベツがネットに詰められワンコイン以下で売られている。箱入りりんごやみかんも破格の値段で並んでいる。惣菜も所狭しと並び、積まれ、内容量すらえげつない。
これ、ドラッグストアと改名しておきながら、中身が異次元スーパーのままなのでは?
ちょっと改装しただけで、本質は変わっていないのでは?
私が新しい縄張りに慣れるまでに要した時間、心の整理や失われたスーパーを悼む気持ちを返してほしかった。
なんだ、全然何も失われてないじゃん。それどころかパワーアップして帰ってきたのでは。よかった、よかった。
焼きいもとサーモンのお寿司を買って帰った。
美味しかった。通おう。
めでたし、めでたし。