幅広い手応え

弓猫
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ゲームの難易度を簡単にして間口を広げるほど、手応えがなくなる。

手応えを重視するほど、難易度が上がり人を選ぶようになる。

大昔から議論されている命題であり、今さらこれ自体を深く解説する必要は無い。

では、どう解決するか。いくつか策はある。

例えば、手応えを無くし、フレーバーに振り切った体験を提供する。

あるいは、難易度選択を実装する。

要は、手応えを味わいたい人のみが、プレイヤーの能動的な選択で味わえるようにするというものである。

これはこれで優秀な解決策ではあるが、僕はこの手のゲームを作る気がない。

理由はいくつかあるが、まず僕自身がこの手のゲームをあまり面白いと思えないのがひとつ。

スリルや手応えを感じ、乗り越えて達成感に浸ってこそのゲームだと思っているので、雰囲気に特化してゲーム性をかなぐり捨てたものを作るという行為に食指が全く動かない(その手のゲームを否定しているわけではない)。

また難易度選択においても、クリアできる前提の安全な条件で遊ぶという行為にスリルがなく、遊ぶにしても作るにしてもあまり好きな解決策ではない。

もうひとつの理由として、作るのがめんどくさいという身も蓋もないものがある。

難易度の数だけバランステーブルを作らねばならないし、デバッグの量も増える。

雰囲気特化のゲームは、いわゆる使い回しができず常に新鮮なゲーム体験を用意せねばならない割にプレイ時間は短くなりがちで、よほどの物好きかハイセンスな感性の持ち主でない限り、手を出すべきジャンルではないと思っている。

ならどうすべきか。

手応えを感じてもらいつつ間口を広げ、しかし難易度選択には頼らない。

僕がパッと思いつく限り、解決策は2つある。

メタAI

バイオハザード4で実装されて、業界で話題を呼んだ内部システム。

プレイヤーの行動をAIが監視し、その腕前を判断して難易度をリアルタイムで変動させるというものだ。

具体的に言うと、被弾が多いほど難易度が下がり、ノーダメージで進むほど難易度が上がっていく。

すごいものだと、コントローラーの入力値から緊張具合を読み取り、油断したタイミングで敵を出現させるゲームもある(Left 4 Dead)。

この難易度はプレイヤーに示されることはなく、ひっそりとリアルタイムで刻一刻と変化していく。

故に、メタ視点で俯瞰しながら調整するという意味でメタAIと呼ばれている。

他にも、回復アイテムを所持していない時に瀕死になると、回復アイテムがドロップしやすくなる仕様もその類だ。

一言で言うなら、敵に接待プレイの指示を出すAIというものである。

便利な反面、最近のゲーム慣れしたプレイヤーからすると接待されている事がモロバレなので、やや没入感に欠けるのが難点だ。

最初から導入するというより、ゲームをより面白くしたいなと思った時にあとから実装すべきものかもしれない。

リソース管理

もうひとつが、リソース管理を導入するというものだ。

リソースとは、早い話、アイテムやゲーム内通貨のことだ。

蘇生アイテム、貴重な銃弾を消費する強力な武器、高いお金で買える使い切りの即死武器などが該当する。

下手な人はリソース回収のためのマラソンをすればいいし、上手い人はそれらをせずに手ぶらで突っ込む危機感を味わえばいい。

主にカプコン製のゲームの多くで採用されているシステムで、バイオハザードは最たる例である(バイオはマラソンをするゲームでは無いため、それらに加えて難易度選択もあるが)。

僕の好きなドラゴンズドグマ(カプコン製)、Bloodborne(フロム製)もリソースによって大幅に難易度が変動するゲームで、どうも僕はこの手のゲームが好きらしい。

リソース管理のいいところは、エリクサー症候群を刺激できるところだ。

要するに「別に湯水のようにアイテムを使えばこの場は凌げるが、今後大丈夫だろうか?」という葛藤である。

貴重なリソースを使わないという選択をプレイヤー自らで判断することで難易度が上がる仕組みのため、死んだとしても節約した自分のせいだと納得しやすい。

難易度選択を「今この場でケチるかケチらないか」で常に変動させることができ、非常に優れた解決策であると僕は思っている。

…………

というわけで、今回作るゲームにも導入したいなと思った次第だ。

特に蘇生アイテム(死んでもその場で復活する消費アイテム)は是非とも導入したい。

難易度を大幅に下げるだけではなく、例えば高所から転落死して復活することで時短するといった横着なプレイも可能になり、どんな遊びが見つかるか開発者としても今から楽しみだからだ(SEKIROにも、蘇生システムを悪用したグリッチがいくつかある)。

というわけで、ゲームでアイテムを使えるようにしたいなーという、ただそれだけの事を仰々しく語ってみたのでした。

@yumineko
個人ゲーム開発者。開発の進捗は ci-en.dlsite.com/creator/20437 にて