あの頃のドラゴンズドグマが帰ってきた

弓猫
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以下は、カプコンに送ったご意見・ご要望をそのままコピペしたものだ。

まず初めに。

ドラゴンズドグマの続編を出してくださり、本当にありがとうございます。

楽しませてもらっております。

その一方で、最適化不足以外にもゲームバランスに関して様々な批判が来ており、ディレクター・プロデューサーを始め開発陣の方々が心を痛めていないか、自信を無くしていないか一抹の不安を抱えております。

前作を初代から遊び尽くした私でさえ、最初は不便さに戸惑いました。

特に、宿代の高さに頭を抱え、調整不足なのではとすら思いました。

しかし、進めていくに連れ徐々にプレイヤーの理解が深まっていく骨太な作りは前作を上回っており、既存の枠組みに囚われない新鮮なゲーム体験を堪能させていただいております。

近頃は既存の名作をなぞった作品が多く、それ自体は否定しませんが、そればかりだとマンネリが来てしまいます。何を遊んでも既知の楽しさで、もう自分はゲームを卒業すべきなのかと本気で悩みました。

そんな中、キャンプや牛車、被弾による体力低下など、前作から引き継いだものを含め独創的なシステムを数多く引っ提げ、他のゲームのセオリーが通用しない唯一無二なゲームをこのご時世に送り出す勇気と革新性にとても感銘を受けました。

こちらとしましては、批判に折れて安易に難易度を下げるようなことをせず、時間と共に徐々に攻略法を明かしてプレイヤーの理解を促したり、攻略法を増やすアプデを提示するスタイルを続けてほしく思いますが、難しいところなのでどのような形になってもついていきます。

実況や攻略サイトであっという間にゲームが消費されてしまう現代において、「時間のかかる不便さ」という死にゲー以外の形で消費社会にアンチテーゼを示すパイオニア精神を、今後も続けてほしいと切に願っています。

前作ドグマにも、そのような「古き良き楽しさの中にある革新性」がありました。今作にも同じ精神を感じることを嬉しく思います。

批判の声ばかり大きく感じるかもしれませんが、それ以上の熱量で楽しんでいる人もたくさんいます。

ご多忙かとは思いますが、お体にお気をつけて今後も改善や追加コンテンツの開発を頑張ってください。

言いたいことは大体上記の通りだ。

ドラゴンズドグマを初期から遊び続けている人ならご存知の通り、もはやこのシリーズはリリースすると必ず炎上する。

初代も、オンラインも、そしてご多分に漏れず2もそうなった。

荒削りで改良の余地があることは事実なので、その全てを手放しで褒める気はない。

しかし、アプデを繰り返して改善されていっても、当初から訴え続けてきたゲーム性が損なわれることはなかった。

正直、過去に2度も炎上しているから、今回はさすがに折れて丸くなったのかと発売前は思っていた。

SNSでの期待値が高く、大衆から注目されている空気があったからだ。

いくら改良されたとはいえ、前作は激しく人を選ぶゲームだった。

唯一無二の中毒性に満ちたゲームでありつつ惜しい点も多いので、間違っても僕は万人におすすめはしない。

だから、もし前作を踏襲するのなら、不便さや雰囲気に浸る情緒的なゲーム性が大衆に受け入れられるはずがないと思っていたし、だからこそ今作はもっとマイルドに角を取ったゲームになることを予想していた。

それが、いざ蓋を開けたらご覧の有様だ。

過去記事で分かるように、信者の僕ですら戸惑いを隠せないほどにハードで硬派で不便なゲームだった。

しかし古臭くはなく、しっかり遊び続けると対策可能な不便さが多いことに気付かされる。

既存のルールが通用せず、完全に新しいゲームを遊びながら攻略法を手探りで手繰り寄せていく感覚。

カプコンもそれを楽しんで欲しかったのか、発売直後から宿代が高いだのセーブが巻き戻るだのと言った批判に対し、沈黙を貫いた。

いずれこれらは緩和されることが予想されるが、未知の困難に対し不便さで時間を消費しつつ何日もかけて解法を見出す楽しみを残してくれたカプコンの計らいに感謝したい。

挑戦状

オープンワールドは、広ければいいわけじゃない。過剰なファストトラベルが興を削ぐ。

近年やっと言われるようになってきたことを、ドラゴンズドグマは12年も前に荒削りな形でアンチテーゼを叩きつけ、大荒れした。

今回も同じだ。

ご意見に書いた通りだが、今は大抵のゲームが1ヶ月も経たずに消費され飽きられるのが当たり前な中、ドラゴンズドグマ2は「死にゲー」以外の形で長く遊ばれるオープンワールドを再び叩きつけてきた。

短期間で消費できるものならしてみろと言わんばかりだ。炎上も必至と言える。

ニューゲームが無いのも、前作を遊んだ身としては開発の意図がよく分かる。

ポーンのレンタルシステムをフル活用してほしいのだろう。

ニューゲームからやり直すと、借りていたポーンがレベルダウンして名前も変わってしまい、なんならお気に入り登録から外れる可能性もある。

やり直しがきかないシステムで強制的に遊ばせた上で、ゲーム内にキャラクリをやり直すアイテムを置くことで代替したかったのだろう(2個しか買えない初期の仕様は全く擁護できないが)。

エアプ

これは完全に余談だが、エアプが勘違いして群がるのもドラゴンズドグマの恒例行事と化している。

初代にも、オンラインにもいた。

遊んだ僕ですら意図を汲み取りきれず勘違いするぐらいなのだから、どれだけこのシリーズが前衛的なことを続けているかがよく分かる。

不便さを全面に押し出してゲーム性にするなんて、僕には到底思いつかない。

「最近何遊んでもつまらないな、なんかドグマの新作で刺激が得られたらいいな」ぐらいの気持ちで手に取っていたが、とんでもない問題児かつ麒麟児がふたたび生まれてしまったのだと痛感する。

エアプが薪をくべ、一般ゲーマーが阿鼻叫喚し、一部の物好きが調教され信者へと身を落とす……完全に前作の初期と同じ流れが繰り返されていることに感動すら覚える。

このまま同じ流れを辿るなら、2も前作同様10年遊べるゲームになりうるだろう。

しかし、前作と違う点も当然ある。小林プロデューサーの不在だ。

彼自身は数多くの問題発言を繰り返してきたので一筋縄では説明できない人物だが、事実として数多くの批判をものともせずに「なにか出さないとシリーズが死んだと思われる」と言いながら、完全版やネトフリのアニメ、ソシャゲにネトゲなどあらゆる手を使ってシリーズを延命させてきた。

間違いなく、彼なくして2は出なかっただろう。

僕が一番気がかりなのは、そんな小林氏がもうカプコンを退社して久しいことだ。

今のプロデューサーやディレクターがどんな人となりなのか僕は知らないが、今後同じようにドラゴンズドグマがぶっ叩かれ続けると、本当にそのまま沈んでしまいかねない。

冒頭のご意見をカプコンに送ったのは、そういう経緯がある。

どうせ届かないだろうが、好きの声を可能な限り届けておく必要があると感じた。

直してほしいところもたくさんあるが、ありきたりな凡作にならないでもらえたら嬉しいなと思っている。

余談

見てのとおり、僕はもうドラゴンズドグマにすっかり頭をやられた狂信者である。

初代が発売する前から好きだった。

東京ゲームショウでたまたま流れていたPVに釘付けになり、試遊ブースで遊んで完全に虜になった。

あの頃から、今に至るまでずっとファンだ。

そして、ドラゴンズドグマはずっと「惜しい」ゲームであり続けている。

不満が尽きない。その不満を補ってあまりある唯一無二の中毒性に頭をやられてしまうから、どれだけ不満でも替えが利かずに狂い続けるしかないのである。

今作の批判に対する擁護も、楽しいと思いこみたいから自己暗示をかけているわけではなく、本心である。

なぜなら、シリーズに不満点があるのは付き物であり、そこを認識して言語化することにも、合わなかった人が叩いてくるのにもとっくに慣れているからだ。

ましてエアプの頓珍漢な批判なんて、もう一種の風物詩ですらある。

触っても合わない人がいて当然だし、触りもしない人からは勘違いされやすいゲームだ。正直、ここはもっと上手くやれてもいいと思うが、そこをかなぐり捨ててでも合う人の好みにとことんリソースを割いている潔さもまた好きな理由の一つでもある。

ドラゴンズドグマが今後どうなるのか僕には分からないが、最適化や一目見てダメだと分かる不満点(竜憑きなど)が改善されたら、気になる人は遊んでみてはどうだろうか。

博打が怖いなら、基本的なゲーム性は変わっていない前作を手に取ってみるのも悪くない。

この記事を読んで、まとわりつくような鈍重な不便さの先にあるカタルシスを味わい、沼に溺れていく犠牲者が1人でも増えることを願っている。

@yumineko
個人ゲーム開発者。開発の進捗は ci-en.dlsite.com/creator/20437 にて