という概念が、ホラー映画界隈の中であるらしい。
公式に定められたものではなく、マニアの中で勝手に言われている定義付けだ。
その中だと、僕は「ハイテンション」しか見ていない。
ホラー映画はまあまあ見てきたが、その中でも独特の異彩を放つ作品だと思う。
傑作と崇める程ではないが、B級の凡作だと油断していたためいい意味で予想を裏切られるパンチの効いた作品だった。
レビューサイトではやたらと脚本の粗を指摘する声が多く、なぜこんなに辛辣なのだろうかと首を傾げて読み漁ってみたところ、そこで初めて四大フレンチホラーの概念を知った。
どうやら、四大と言うには過大評価だと不平を言われているようだ。
本家が名乗ったわけでもあるまいに、ちょっと不憫だと思う。
ハリウッド以外の映画
ホラーに限らず大抵ハリウッド映画しか見ないのだが、ヨーロッパの作品も機会があればちょこちょこと見ている。
ハイテンションにも言えるが、ヨーロッパの映画には独特の調律があるように感じる。
下品なものを上品に見せてしまう魔力がある。
ハイテンションに関しても、けたたましく唸るチェーンソーに大量の血飛沫、無くても成立するエロスなど、手垢がつくほど擦られ続けてきた古典的で分かりやすい下品なエログロがある。
が、作品全体を通しては品性下劣ではなく、むしろなんだか文学的な小説を一冊読み終えてしまったかのような不思議な高揚感がある。
監督のアレクサンドル・アジャも、「皆分かりやすいホラー描写しか見ず、そこで凡作のレッテルを貼られるが、そこで終わらないものを表現したかった」みたいなこと(うろ覚え)を語っており、恐らく意図したものであろう。
また、ハリウッド映画から離れるメリットとして、いわゆる「ハリウッドメソッド」が通用しないという新鮮感もある。
進撃の巨人にジャンプメソッドを感じないのと同じで、ハリウッド映画は傑作が多い反面、大衆向けで娯楽として非常に受け皿が広いというか……分かりやすいとまで言う気は無いが、定型化された面白さである。
早い話、ブレイク・スナイダーの三幕構成が幅を利かせており、「え!?今からそんな話に転がるの?」という驚きが、良くも悪くも起きにくい。
無論、ハリウッド映画もブレイク・スナイダーだけをなぞっているわけではなく、サスペンスの巨匠として名高いヒッチコックも、ヨーロッパ(イギリス)の映画監督だ。
ヒッチコックは「なぞらないと駄作になるのでは?」と思うほど、世界各国で使われ続ける洗練されたテクニックが多いのに対し、三幕構成を始めとするブレイク・スナイダーは「ハリウッド映画を量産するためのテクニック」に寄っている感じがして、必須とは言えない感じがする(めちゃくちゃ浅学な知識からなる感想なのでまさかりはご容赦ください)。
フランス映画や韓国映画といった、アメリカ以外の名作には、見慣れたメソッドを思いきり踏み外したものが多数存在する。
次に何が起きるのか本当に予想が付きにくいし、オチに関しても同様である。
予想がつかないから面白いし、目が離せなくなる。
話が散らかって何が言いたいのかよく分からなくなってきたが、ハリウッド以外の映画に触れるのも味わい深いなと思った。
おまけ
この記事を書き始めた時に本来伝えたかったことが書けなかったので、ここに書き加える。
ハイテンションは、今まで僕が見てきた中ではかなり出血量が多いほうの作品だ。
ナンバーワンではないが、もういいよと言うくらいには血なまぐさい印象が強く残っている。
しかし調べてみると、四大フレンチホラーの中ではグロも出血量も一番大人しいと言うから驚きだ。
他の三作は、一体何百リットルの血が流れるのだろうか……。
ちなみに、僕が見た映画の中で一番出血量が多いと感じたのは、日本映画の「冷たい熱帯魚」だ。
容赦を知らない正真正銘の暴力グロ映画であり、血どころか肉や骨では済まないレベルの物体が、これでもかと言うぐらい画面を覆い尽くすR18映画だ。
ただ、最多出血量という意味では異を唱える人が多いチョイスであることは自覚しており、まだまだ僕も映画好きを名乗るには寡聞だと再認識した。
余談なのにさらに話が逸れるが、暴力やグロの描写にも様々な哲学があり、痛々しさ・生々しさを重視するのか、爽快感を重視するのか、非日常的なトリップ感を重視するのかで色合いからカットまで全く見せ方が変わってくる。
この辺もヨーロッパ映画には独特の赴きがある。
全く傾向が異なるが、オーストリア産の「グッドナイトマミー」も大好きなホラー映画のひとつで、機会があればそちらも記事にしたい。