自分で着替えると決めた朝

yunon_phys
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公開:2026/3/26

「プリンセスになりたい」

3歳になったばかりの娘が、保育園に行くための着替えのタイミングで、突然そう言い出した。

言うや否や、クローゼットまで走っていき、お気に入りのドレスを指差して「これ」と主張する。

正直、困った。

そのドレスは薄手で、この時期には寒いし、そもそも保育園に着ていく服でもない。

理由を説明して、いつもの服を着ないかと提案する。

けれど、聞くはずもなく、ついには泣き始めてしまった。

ここで、少し迷った。

このまま押し切るのは簡単だ。でも、それでいいのか。

結局、「保育園に着いたら着替えよう」と約束して、ドレスを着せることにした。

ドレスを着た娘は、すぐに機嫌を取り戻した。

絵本を読んだり、ボールで遊んだり、さっきまで泣いていたことが嘘みたいに、楽しそうに過ごしている。

その様子を見ながら、「まあ、こういう日があってもいいか」と思い始めていた。

そして、出発の時間。

そのままドレスで靴を履かせようとしたとき、娘がぽつりと言った。

「着替える」

そう言って、自分からドレスを脱ぎ、さっきまで頑なに拒んでいた服に袖を通し始めた。

あれだけ泣いていたのに。


あのときの「着たい」は、ただの気まぐれだったのかもしれない。

あるいは、「一度着ること」が必要だっただけなのかもしれない。

どちらにせよ、ひとつだけ確かなことがある。

親が説得しなくても、子どもは自分で折り合いをつける。

3歳でも、状況に応じて行動を選ぶ力は、もう芽生えている。

もちろん、すべてを理解しているわけではないだろう。

でも、「今はこうする」という判断を、自分で下している。

それを見て、少し驚いた。

そして同時に、少しだけ寂しくもなった。

手をかけなくてもいい場面が、少しずつ増えていく。

ちゃんと育っている、という実感と、

もう少しこのままでいてほしい、という気持ちと。

その両方が混ざった、朝の出来事だった。

@yunon_phys
カケハシ CTO