遂に、私は『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』を見ている。
結論から言ってしまうと、めちゃくちゃ面白い。
歴戦のフォロワーの方はご存知かもしれないが、私はこの作品に対して放送当時からずっと「気になる」「見てみたい」と言い続けていた。しかし、なんやかんやで時間が取れず、さらにここ一年半ほどは仮面ライダーの方で忙しくしていたので、結局手を付けられないままになっていた。それを、ようやく、今になって見始めたのである。
改めて確認してみると、初めて「ドンブラ見てみたい〜」とツイートしてから、丸三年が経過していた。三年て。
とにかく、念願が叶った。
現在は第10話まで視聴済み。
一気見ではなく、時間のあるときに母と一緒に観ているため、かなりスローペースな歩みである。母も特撮好きなので、これまでも『W』『エグゼイド』『ビルド』などを一緒に観てきた。
イケメン俳優にキャーキャー言ったり、「変身!」と叫んで激しくポーズ取って変身するのと、「……変身」と静かに呟いてクールに変身するの、どちらが良いか※で熱い議論を交わしたりする時間が、とにかく楽しい。娘の趣味に付き合ってくれる、理解ある母ちゃんである。
※ちなみに、母は前者で私は後者である。
母は仮面ライダーよりもスーパー戦隊の方が肌に合うらしく、ドンブラザーズも毎回とても楽しそうに観てくれている。それがまた、こちらとしては素直に嬉しい。
……と、少し話が逸れてしまったが、ここからは改めて、ドンブラザーズの感想へと戻る。
冒頭でも言ったが、めちゃくちゃ面白い。
ネットでは散々「トンチキだ」「意味がわからない」と騒がれていたので、どんな錯綜した話なのかと思っていた。しかし、いざ蓋を開けてみれば、そこにあったのは繊細な人間ドラマだった。確かに度肝を抜かれる展開は多いものの、井上敏樹の脚本はいつもこんな感じなので、まあ慣れ親しんだ味である。
個性的なキャラクターたちをうまく引き合わせながら進んでいくシナリオが、とにかく面白くてたまらない。ドンブラザーズのメンバー達は、唐突に「戦士」に選ばれ、謎の力を手にし、否応なく戦いに巻き込まれていく。
それでも、誰ひとりとして手に入れた力で悪巧みをすることはなく、真っ当に人助けのために使っているのがとても良い。
かといって、彼らは完全な善人というわけでもない。等身大の人間として、迷い、もがき、苦しみながら、それでも「ヒーロー」という存在になっていく過程が丁寧に描かれていて、とても見応えがある。
まだ物語は最序盤にも関わらず、すでにドンブラザーズのメンバーが愛おしくてたまらない。
スーパー戦隊特有の男女混合のわちゃわちゃ感と、巨大ロボ戦の様式美もやっぱり良い。
……え、こんなに素晴らしいシリーズが、今年で終わっちゃうんですか?そんな……
さらに言えば、OPとEDがどちらも非常に素晴らしい。
まずはOPだが、これに関しては初見で度肝を抜かれた。
私が最後にしっかりスーパー戦隊を追っていたのは、2011年放送の『海賊戦隊ゴーカイジャー』までで、スーパー戦隊の主題歌といえば、明るい曲調で、サビの最後は必ずその戦隊のタイトルで締める── というイメージが強かった。しかし、『ドンブラザーズ』(というか令和以降のシリーズ)は、どうやらその常識に従わないらしい。曲調も歌詞も、そのすべてがこれまで私の知っている戦隊OPとはまるで違っていて、純粋に驚かされた。
とにかく「イマドキ」なのである。令和だ。
というか、ちびっ子たちはこの曲、歌う事ができたのだろうか……と、つい余計な心配までしてしまった。
さらに、OPでキャストがダンスをする演出も、どうやら令和以降の試みらしい。これがまたとても良い。踊り方ひとつ取ってもキャラクターごとの個性がしっかり出ていて、眺めているだけで非常にかわいらしい。
一方で、EDテーマはOPとは打って変わって、ちょっぴり切なくなる曲調だ。
私はすでに、この曲を聴くだけでうっすらと泣きが入る体になってしまった。
まだ10話なのに……
メロディもさることながら、とにかく歌詞が良い。その中でも「チガイはマチガイじゃない」というフレーズが、とりわけ強く胸に刺さった。シリーズの中でもイロモノ枠であろうこの作品だからこそ放てる励ましであり、同時に、これ以上なく優しい肯定でもあるように思える。
この曲が流れて、1話が終わるたびに、切なくなる。
リアタイしていなくて本当によかった。
多分、めちゃくちゃロスになっていた。
そして恐らく……最終回で号泣する。
まだ10話までしか観ていない身で、ここまで語ってしまっていいのかという気もするが、それだけ、この作品に心を掴まれているということなのだと思う。
三年越しにようやく辿り着いた『ドンブラザーズ』は、私が想像していた面白さとは少し違う角度から心を掴んでくる作品だった。もっと分かりやすく賑やかで、勢いだけで突っ走るような作品なのだと思っていたが、実際はこんなにも繊細で、人の心の奥に踏み込んでくるような物語だった。
これから先、どんな展開が待っているのかはまだ分からない。
けれど、母と一緒に、ああだこうだと語り合いながら、最後まで楽しんで見届けていきたいと思う。
目指すはめでたしドーンとハッピーエンド!