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浅井リョウの小説と村田沙耶香の小説とエッシャーの絵画

小林ゆうすけ
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公開:2026/7/4

ちょっと前にXで、「浅井リョウの小説はつまらん」「村田沙耶香の小説はつまらん」という趣旨のポストが小さな盛り上がりを見せているのを観測した。この二人はいずれも自分の好きな作家であり、自分の中の近い棚に分類されている両者でもある。浅井リョウ氏と村田沙耶香氏の作品には何か共通する近い性質があるような気がしており、それは私が彼らの作品に魅力を感じるポイントであって、またおそらく、彼らをつまらんと思う人がつまらんと思った理由にも関係しているんじゃないかと思った。

その共通点とは、「メタっぽい視点」「構造ありきの物語」なんじゃないか、というのが私見である。浅井リョウも村田沙耶香も、メタ視点の構造作家だなという印象がある。この現実世界に関して考えたいテーマがまずあって、それを考えるためのサンドボックスとして物語の世界をエミュレートするのが彼らだ。で、丁寧に作り出した虚構の中でわちゃわちゃしている登場人物たちを一つ上の次元で神のように眺めながら、物語のエッセンスを少しずつそこへ垂らして、展開が動いていくのをまた眺めている。読者である私たちはその横に立っていて、神が世界を作り動かしていく景色全体に感動するのである。

つまらん派の意見として、「登場人物の心理描写が稚拙である」「作者の都合で物語が進展していてリアリティがない」といったものがあるようだった。これについてはまあ、たしかにそう思う。が、彼らの作品は別にそういうところで戦っているわけではないとも思う。作者の都合で人形劇のように動かされている世界の、舞台装置の機構とか美術道具とか、そういう演出の妙も含めて作品の魅力なのである。

エッシャーの絵画がこれに似ていると思う。彼の絵画のすごさは、いわゆる画力とはちょっと違う。3次元空間と2次元空間の狭間のゆがみとか、そこで揺らぐ人間の認知とか、そういうものをズバリ指摘する観点の鋭さと、そのコンセプトを見事に絵画に落とし込んでビジュアル化する技量にこそ魅力があるように思う。だから「エッシャーの描く人物には感情の深みがない」とか、そういう文句は付けようと思えば付けれるのだけど、あまり的を射ていない感じがする。

すべての絵画が人間の複雑な内面を表現することに価値を集中させているわけではないし、小説もやはり同様である。私は浅井リョウや村田沙耶香やエッシャーの世界を見るまなざしと、彼らの作る世界に惚れている。

@yuu_kobaya
世界のすみっこで、もそもそ身をよじって生きています。 デザイン, 技術, 読書, 学び... いろんなことが好きな人。 わたしについて:yusukeweb.work