テック企業のlow-balled offerに妥協するな

yuya
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Amazonに入社して1年と4ヶ月が経過した。7月からのSDE2へのプロモが内々に決まり、振り返ってみるとAmazonへの入社でSDE1として入社したのは割と致命的なミスだったなあと今になって思う。その理由を書いていく。

  1. レベルの重要性を見誤っていた

傲慢かと思われるかもしれないが、ぼくは会社由来のドメイン知識を除けばAmazon内においてウェブアプリ開発全般の知識なら強いほうだと思っている。でも、タイトルはSDE1なのだ。これのせいで舐められているんじゃないかと感じる場面はけっこうあった。

じゃあSDE2へのプロモを早く目指せばいいじゃないかという話になるが、そう話は簡単ではない。昇進には時間がかかる。なぜならテック企業で昇進するためにはいわゆる「Promotion Document」といって社内での実績をアピールするドキュメントを書かなければならないからだ。同僚複数人やさまざまなひとにレビューを依頼するのだが、これを書くためには当然複数のプロジェクトをこなさなくてはならない。

またプロジェクト自体も当然チーム依存だ。テックスタックが進捗を生み出しにくいものである可能性、インパクトがまったくないようなプロジェクトにアサインされる可能性、マネージャーが自分の昇進に興味がない可能性。。。内部昇進はチームや部署依存があまりに大きすぎるのだ。

ぼくは当初、「いい仕事をしていれば誰かがすぐに昇進させてくれるだろう」という甘い目論見だった。しかしその価値観はAmazonでは通用しない。あなたがどんな仕事をしようがそれは「L4/L5の仕事」であり、いわゆるL4/L5の仕事に関してリーダーシップレイヤーの人間は気にしていないのだ。だからいい仕事をしたと感じるならば、それをキチンと売り込まなければならない。Amazonでは結果よりもその過程がどうだったかを重んじるため、いかにそれをアピールするかと、その過程の信憑性をL6やL7などの上位プレーヤーに支えてもらうかが鍵となる。

  1. インタビュー時点でリクルーターに確認をしなかった

インタビュー時にリクルーターから「これはL4でのインタビューですよ」という通達はこない。セッティングしておいたからインタビュー受けてね!というだけなのだ。ぼくは実務経験が2.5年近くあったので、これはSDE2のインタビューなんだろうなと暗黙の了解をしていた。しかし実際にインタビューを受けて、最後のセッションで「あれ、システムデザインの質問とかないの??」とインタビュワーに直接問いかけて、そこで初めて受けているプロセスがL4のものであることを知ったのだ。

ぼくがすべきだったのは「これはL5のループですよね?L4は自分のレベルではないので、L5にしてください」とリクルーターに初めから確認すべきだった。amazonの求人票はどのレベルなのか分かりづらい。求人票に乗っかっているのは対象の経験年数だけだ。例: https://www.amazon.jobs/en/jobs/2623891/software-development-engineer-japan-seller-services-tech

また、L4でのオファーが出たあとに「L4なら辞退します、L5のループをセットできませんか?」と強気にオファーを断る交渉をすべきだったとも思う。ぼくはUSへの異動可能性という観点から、GoogleかAmazonに入りたかった。当時は2022年のレイオフ真っ只中であったが、ぼくはAmazon以外の外資系テック企業2社からミドルレベルでのオファーを貰っていた。対抗オファーをもっていたこともあり、給料という面でAmazonのオファーに不満がなかったので、SDE1としてのオファーを受けた。しかし自分のキャリアという観点からすると、あそこでSDE1というタイトルで妥協するべきではなかったと今になって反省している。

  1. 転職は職位があがるスピードを遅くする

単純な話だが、転職は職位をあげるうえではリセットと同じ扱いになる。新しい環境やチームに馴染むまでの時間、チームが保有するコンポーネントについての理解にかかる時間、ドメイン知識の習得。。。それらは内部昇進とは無関係だ。

Amazonであれば通常SDE1からSDE2なら1年~3年、SDE2からSDE3へは追加で3~5年かかると言われている。しかしこの期間は単純に個人のパフォーマンスによって決まるわけではない。この時間がかかる運ゲーをひとつの会社でやることが果たして得策だろうか?個人的には満足のいくレベルでのオファーをとれるまで、長期間インタビューを受けるほうが得策だと思う。

Amazonでの仕事は自分がプロとしてこの界隈で生きていくためにたくさんの教訓を教えてくれる。もうしばらくは、転職や昇進といったしょうもないゲームをお金のためにプレイしようかなと思っている。