シャニマスの言葉で救われる人はここにいるよと思った。
シャニマスに求めていた話すぎる。PVの時点で思っていたけれど、読了後、改めてこういうものが読みたくて私はシャニマスをやっているんだ、と思った。
道徳的に善であれ、悪であれ、あなたが選ぶ言葉、放つ言葉に(良くも悪くも)意味がある、という話だと感じた。
最初、田舎の学生とめぐるがギスギスしていたときは共感の話なのかもと思っていた。
田舎の景色をめぐるは本当に綺麗だと、素敵なものだと感じていただろうけど、それに不満を持っている学生からしてみれば嫌味にしか聞こえない。「瞬間的なものだからこそ、苦しんでいないからこそ、そう言えるんだ」という気持ち、わかる〜……。生活環境だけではなく、いろんなことに言える話だと思う。
それでもめぐるは諦めずに学生に「知りたい」とアプローチを続けたこと、すごく良かった。こういうところも、彼女を善として見てしまう原因なんだけど。
二人でかけっこをして、学生が「人間じゃん」と納得するところ、ここを共感のシーンと思っていたんだけど、多分言葉なんだろうな。異世界の住人のように思える、できたニンゲンも、コミュニケーションのとれる、自分と向き合って話し合える人だということ。こういう気づき、とても大事だと思う。
一方で言葉の届けられない人達がいたこともすごく良かった。
真乃にとっての勧誘の人、灯織にとっての通行人、めぐるにとっての元アイドル。向こう側の人と明確に線引かれるイルミネが戸惑うところ、すごく良かった。三人とも卑屈なように見えるけれど、実際そうなんだよね。切り捨てるのは劣等感を感じる側なことが多い。だって善い人はわざわざそんなことしない(というか気にしない)から。ここで言葉に戸惑うイルミネは、凄く誠実だと思う。自分が思っている気持ちが相手にはまっすぐに届かないであろうことを知っているから。
さらにここから分岐があって、元アイドルはめぐるともう一度会話するところがいいなと思った。
かつて光の言葉が伝わらなかった人も、決して暗い道ばかりじゃない。自分で光を見つける時も、作中にあるように、影の中にある言葉だからこそ前に進める時もある。もちろんそうならない人だっているけれど。
それでも、これだけの可能性を見せてくれること、凄く素敵だと思った。
ルポライターがイルミネのことをライバルというのも凄く素敵。仲間でも、救い救われる関係でもない。違う世界で生きる、同じことをする人。言葉を、言葉で、伝えようとする人。本当に素敵だ。
会話している場所、銀曜日のお店だよね?それも凄くいい演出だった。相手の知らない一面があること、無理に暴こうとしないこと、それでも知りたいと思うこと(うろ覚え…)を描いた銀曜日と、相手と言葉を交わしたい、伝えたとしても相手を傷つける可能性がある、それでも言葉を選ぶことをやめない絆光記。最高だ。
1番良かったのは映画の感想。冒頭の救われたというところに繋がる。
イルミネが宣伝をした映画は、映画ファンからは酷評。宣伝も、イルミネ自身はどう思っているのかと問われる。差はあれど、彼女達は本心から映画を良いと思っていて、その批評に戸惑う。それでも自分が思ったことを、自分の言葉で伝えていく。
報酬カードのコミュもそう。友人と映画を見に来ためぐるのファンは、友人から映画を否定的に語られる。めぐるが好きだから色眼鏡で見ているじゃないかとか。それでもファンは、そういった影響があるとしても、楽しめた事実は嘘じゃないと言ってのける。
あなたの感想がまわりと一致しなくとも、あなたが感じたその気持ちは嘘ではないし、まわりによって捻じ曲げることなんてしなくていいというメッセージに思う。
これ、コミュ内では肯定的な意見が少数派(埋もれる側)だったけど、逆も然りだと思っていて、勝手に自分を重ねて泣きたくなってしまった。
道徳的善性100%肯定で終わる、みたいな話が私はかなり苦手。苦しいことはみんなでシェア、人を助ける、努力は素晴らしい、など。私はそれになれないから。
だから、そういう作品に対して「感動した」とか「泣いた」みたいな感想が溢れると悲しくなる。そう思えない自分は心根が捻じ曲がってて、卑屈で、陰湿な性格だと言われたように感じるから。被害妄想なんですけど。
批判的な意見は声が大きくなりやすいし、誹謗中傷にも繋がりやすいし、全てを肯定するわけではない。
それでも今回のイベコミュを読んで、ネガティブな感想をもつことも諦めなくていいんだと、必ずしも悪いことばかりではないのかもしれないと、そう思えた。ライターの意図している内容とは違う、都合のいい読み方かもしれないんだけど、本当に嬉しかったんだ。
でもこれもコミュの主題だよね。相手に伝わるように言葉にするけど、言葉を選んだって相手が聞いてくれるかわからないし、相手が思った通りに受け取ってくれるかわからないし、相手が傷つくかどうかもわからない。それでも言葉で伝えることをやめず選び続けること。本当に素敵なお話だった。