『地獄先生ぬ〜べ〜』の新規エピソードが連載開始されて、新アニメも7月から始まるらしい。ちらりと見たけど絵柄も当時の記憶そのままという感じだった。すごいなあ。
『ぬ〜べ〜』って、日常のシーンはコミカルだけどホラー部分はしっかりホラーしてて、小さい頃のわたしには本気でめちゃくちゃ怖かった。だから、さっき『当時の記憶そのまま』とか知った風に書いたけど実はあんまり読んだことがない。美容室とか公民館みたいな、どこかの施設に置いてあったのを何気なく手に取ったんだったかなあ。病院の待合室にあったジャンプで見かけたんだっけな。なんにせよ、ヒエーッとなってすぐ読むのをやめた……気がする。
わたしはそんなふうに興味本位でホラーものに手を出しては何ヶ月も引きずる子どもだった。トイレはもちろんお風呂も怖かったから、三つ上の兄に脱衣所についててもらってやっとお風呂に入ったこともある。
その夜わたしは、昼間に見た怖い話が脳裏にこびりついて自動でループ再生されてしまって困っていた。洗い物だなんだと忙しくしている母にお風呂を促されたが、とても一人で入れるテンションではなくて途方に暮れた。確かわたしは小学生の中学年くらいで、きょうだいと一緒にお風呂に入る年齢でもなくなっていた(というか、兄のほうが妹とお風呂に入る時期を過ぎていた)けど、怖いもんは怖い。誰か信頼できる人にそばにいてほしくて、兄に「あたしがお風呂に入ってる間、そこにいて。漫画とか本読んだり、何しててくれてもいいから。お願いします」と頼んだのだ。兄は、わけのわからんことを言い出した妹を馬鹿にするでもなく、かといってめちゃくちゃ気遣うでもなく、ごく平坦なトーンで「いいよ」と応じてくれた。
それでもお風呂中はまあ普通に怖かったんだけど、びくびくしながら振り返れば、ドアの磨りガラス越しに兄の丸まった背中がぼんやり見えて安心できた。脱衣所の床に座り込んで、ONE PIECEだか小説だか単語帳だか、なにかを読みながら静かにそこにいてくれたんだと思う。お風呂を上がる段になったらわたしからドア越しに「出まーす」と声をかけて、兄は「ほーい」と脱衣所から出て行き、わたしが脱衣所に出てパジャマを着る……という流れで無事にミッション達成とあいなった。
リビングに戻ったわたしはちゃんと兄にお礼を言っただろうか。あまり記憶がはっきりしない。でも、怖がりなわたしの変な頼みごとを茶化さずに聞いてくれたことは確かに心に残っていて、お兄ちゃんへの信頼と尊敬を構成する基礎のひとつになっている。