短歌51-60

yuzi
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51

雨の日のヘッドライトが拡散し 赤く凍って視界滲ます

52

走り去る車の光を目に入れる 後部座席で身動ぎもせず

53

焦がれても二度と会えない人がいる どうして? 世界は異常なはずだ

54

形相を裏切るような傷が付き惜愛しつつ遠くへ返す

55

コンクリの壁を貫く水の出た跡のある穴 あれを見ている

56

電柱の金具の銀の指輪色輝く 冬の空は水色

57

陽をあびてつやつや青い自動車がゆっくりくらくらしていいきもち

58

匣中のカブトのわずかな特徴を語るごとく友情を手探る

59

1体の夜 空恐(そらおそ)ろしさもない 「何も無い」が上半分にある

60

夜風肌寒くてぬるい 大丈夫だけど苦しい 家族もいるのに