短歌21-30

yuzi
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21

歩くほど 自分のからだを支配する権利が消えて 痛みが満ちる

22

ぬるい風 飲み会帰りの高架下 異界に飛ばされたような夜

23

星 月も 色もない ただ昏い虚(うろ) 宇宙が夜空に化けているのだ

24

人間は 痛みに耐えているあいだ 肉としてかたちを持っている

25

不倶戴天 どんなに焦がれても隣で生きていけない何かに恋す

26

まっ白く光る小石を見つけては 涙を浮かぶ 言葉の旅は

27

美しい言葉のあまた限りなく 河原にラピスが敷かれたように

28

引力が愛 斥力が孤独なら? 喩えて何かの答えを手繰る

29

みぎゆびが君に3本無かろうとその気高さは変わりはしないが

30

うすい愛 うすい愛でも重ねればいつか光の羽衣たるか