急に『No.6』を読み始めた記録。文庫版(講談社文庫)で読んでいます。
1巻
『No.6』遠い未来のこととも全然思えず、今に近い話に思えて、辛くなってきた。
2巻
ネズミが、自分が紫苑を大切に思ってることをきっちり理解した上で、リスクが大きすぎるから手放すかどうか葛藤していて、ネズミみたいに飄々とした人物が、感情に嘘をつかないところが私には珍しく映った。
3巻
温室育ちで親切をそのへんの人にひょいひょいあげる紫苑は、ネズミにそれでは生きていかれないと何度も忠告を受けてるけども、温室育ちが長く長く周りの人間と培った泉みたいな慈しみでしか動かない心もいくつかあって、ネズミもホントはそれがわかっているんだと思う。
というかもっと単純で、追い詰められた人を引き上げたかったら何度も何度も心を砕く必要がある、余裕のある人は何度も心を砕くだけの余裕がある、みたいな……。
ぐるぐる書いてたら同じこと2回言ってる……。
追い詰められた人を引き上げたかったら何度も何度も心を砕く必要がある、これまで慈しまれた経験のある人は何度も心を砕くだけの親切心の蓄えがある、これだ。
ネズミの台詞の要約で「全力で引き上げられないくせに手を出すな」というのは、半分そうで、半分そうではないと思ってて、助けの手があまりにもなさすぎるから少し手を差し伸べてくれた人に全力で縋ってしまうという因果が逆なことが起こっている、と、おもう、一人の力で引き上げられる範囲は狭いというのは、うん、そう、
私は「家が嫌ならうち泊まったらいい」と言ってくれて実際泊めてくれた友人やDiscordで書いた愚痴にリアクションしてくれる人にも助けられたし、少しの助けだとしてもゼロじゃないとも、思いたいのだった。
あとね、『春あかね高校定時夜間部』の雨森みこさんの独白がすごく好きだから……。
「例えば自分が担当でも何でもないのにいつもそばに寄ってきて話しかけてくれた看護師」「空腹で眺めていたクリスマスバザーで手渡された本来は売り物のサンドイッチ」「どちらも職業倫理を強く持っていてああいう親切をしただけだったんだろう」「落とし物を拾うのもごく普通の親切であって 特別なことじゃない 本当に本当に相手にとっても些細なことのはずだから…」「こんなにも心に焼きついて何度も何度も思い返してしまうことなんぞ」「こんなにも縋って生きていることなんぞ そうしてくれた誰も知るはずのないだろうな!」
とりとめが ない
4巻
『No.6』、政府軍による人狩りに抵抗しないまま泣いていたはずの女性が、立ち上がって「殺されてたまるもんか」と軍に石を投げたシーンがとても好き。ここにいる全員が「殺されてたまるもんか」と考え始めたら? 圧倒的な力を前に、うなだれていた全員が顔を上げたら? そんな瞬間を想起させて、止められなくさせるようなシーンだった。
その時は力に押しつぶされても、何百回も瞬間を重ねたら、どうなるだろう。……というのを、あとがきで「半歩すすむ」と書いていて、あとがきまで好きになった。
7巻
NO.6、ここに来て「私が勝手に(立場があるから、1人称視点になっていたから)」死なないだろうと思ってた人物まで呆気なく死んで、胸にべったりした質感が残りはじめた、
死ぬ原因が、こいつは俺より立場が上だから、危ない橋を渡っても平気だろうというイヌカシの油断で、同じ支配を受けるものの中で、地位というものの脆さよ……と思う
これからNo.6文庫版を見る方へ 文庫版カバーに書かれてるあらすじはかなり内容に踏み込んで書かれているため、カバー全部外してから読んだほうがいいです
9巻
ささやかに生きて、犠牲にならず、生き延びることが世界を変える 生きる力が満ちていくような文がたくさんあるな
私は恋愛にも性的なことにも興味がない方なんですが、紫苑に同じ性質を感じます
1巻で沙布に告白されたときも、直接的な言い方だったから思考停止しただけで、「付き合ってほしいの」ならえっ……どうしよ……沙布のことめっちゃ好きだし……くらいの思考の間が生まれていた気がする。紫苑と沙布の"(No.6内の)立場の差"を考えたら、付き合う的な時点で目をつけられてもおかしくないし、あの言い方になるのも分かるんだけど……。
『No.6』全巻読み終わりました〜 !!! これは8巻に挟まっていた栞。本編とちょっとリンクしてていいと思う。