今日は何もしない日、というより何もできない日。研究室が閉まっている上に雨が降っているため、何もできない。とりあえず本を二冊読んだ。
一冊目は宮澤伊織「ときときチャンネル 宇宙飲んでみた」。東京創元社のアンソロジーに毎年(?)収録されていた短編シリーズの単行本化。書き下ろしが入っていないので熱心なSF読者なら6作全部読んでいてもおかしくないのだが、自分は「時間飼ってみた」しか読んでいなかった。各収録作は零細配信者とズボラ科学者のコンビ配信の書き起こしで、科学者の方が用意した(り用意してなかったりなぜか部屋にあったりした)謎のアイテムが原因でひと悶着が起きる流れが続く。小説としての形式だと、地の文が十時さくらの発言、鍵括弧つきの発言が多田羅未貴の発言となっていて、登場人物の発言以外の描写が一切されない点が珍しい。現在起きていることを全て声に出して紹介する配信者を題材にしているからこそできる構成ともいえる。ここまでで色々書いてはいるが、「軽い百合オタクでSFも嫌いではない」ぐらいの所謂オタク人間に読ませるのにちょうど良い作品なのではと感じた。二人の関係性が「良い」し、何より終始読んでいて楽しい。非常におすすめ。
二作目は斜線堂有紀「ゴールデンタイムの消費期限」。斜線堂有紀作品は商業媒体の単著のうち7~8割ほどを読んでいるはずなのだが、この作品はそこから漏れていたうちの一つ。数年前に単行本が出ていた長編で、最近出版された文庫版を書店で見かけたのでこの機会にと買ってみた。小学生~高校生の頃に天才と持て囃されてきたが才能に陰りが見えてきている若者を集めた政府主催の謎のプロジェクトに主人公が参加するが・・・というのが物語の概要。割とライト文芸的な色もあり、この著者の作品の中ではメディアワークス文庫三部作に似た雰囲気を感じた。特に「私が大好きな小説家を殺すまで」は才能を無くした人間の話題や創作のアイデンティティ(あるいはゴーストライター)の話など共通する点も多い。終盤にある名作国内短編SFのオマージュがあり、そこも結構好き。