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人生
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写真は昨日の日記に上げ忘れた、送水口を司るパンダ。多分落とし物のぬいぐるみだろうが、ここに置かれていた。文字の色とパンダの服の色が揃っていて、なんだか最初からそこに居たみたいに馴染んでいた。本当は阿吽像みたいに2体居たのに片方居なくなってしまった、みたいな雰囲気がある。

今日はすごくよく寝た。昨晩22時過ぎに就寝して5時前に一回目が覚めてしまったが、二度寝して合計8時間近く寝た。流石に朝の電車に揺られても眠くならなかった。

出勤しながら、友人にlineを打つ。長く借りていたものを返すために近いうちに会うことになったのだ。直近の休日の予定を確認すべくスケジュールアプリを開く。ふと、もう2ヶ月美容院に行っていないことに気づいた。予約しなきゃ。一旦友人にlineを送ってから、いつもの美容院の予約ページを見た。幸運にも今日の夜の時間帯が空いている。土日に行こうと思っていたが、今日仕事帰りに行ってしまった方が楽かも。勢いで今日の予約を入れた。今日は配偶者が飲み会らしいし、ちょうどよかった。夫婦の片方だけ用事があるより、同じ時にそれぞれに別の用事がある方が、お互い気が楽でいい。相手にその時の家事を任せてしまっているとか、そういう後ろめたさを感じずに済む。

仕事を定時で終えて、電車で原宿まで向かう。表参道近くのお店なので普段は表参道駅から行くのだが、時間と電車の都合で今日は原宿から歩いた。クレープに目もくれず、いやちょっとだけチラ見しつつ、竹下通りをずんずんと進んでいく。久しぶりに歩いた竹下通りは、「今こんな感じなんだ」と「まだ"こう"なんだ」が混在していた。

裏原と呼ばれるあたりを通り過ぎ、少し坂を上るといつもの美容院に着く。慣れているというのもあるが、ここは飾りすぎていなくてほっとする。いつもの美容師さんが出迎えてくれた。

この美容院は個人事業主の美容師さんたちが共同で運営しているようで、アシスタント的なスタッフは居ない。シャンプーからブロー、セットまで全てその担当の美容師さん1人でやってくれるのだ。わたしはもともと大学の頃からお願いしている人が居て、その人が独立してこのお店に入ったので、そのままこの美容院に通っている。ただ、その人はいま育休中だ。代わりに別の人にお願いしているが、その人も腕がよく、なんだかんだで結構長いこと担当して貰っている。

「こういうふうにしたいんですが」と話すと、出来ること出来ないこと丁寧に説明してくれたうえで、出来る範囲で工夫して叶えられるようにしてくれる。いい美容師さんだ。

他愛無い話をしながら、カラーリング、シャンプー、カットと滞りなく進む。途中、成城石井の話題になり「成城石井で120円くらいのレタスを、安い!と思ってカゴに入れるけど、120円のレタスだけ入れたカゴをレジに持っていくのが恥ずかしくて、つい何か別の物も買ってかっこつけてしまう」みたいな話をした。美容院で何の話をしているんだ。

最後にオイルで軽くスタイリングし鏡で仕上がりを確認する。髪をきれいに整えてもらうと、仕事帰りの適当な服装もなんだか少しマシに見えてくる。せめてメイクをしておけばよかったとは思うが…。平日は眉毛を書くのみでメイクはしていないので、今日もそのまま来てしまった。美意識の強い人からすれば原宿や表参道にノーメイクで行くなどありえないだろうな。

美容院を出る頃には21時を過ぎていた。お腹が空いたが、近くでひとり夕飯を食べるのにちょうどいいお店が無い。あってももう閉まっている。家の近くまで行って、ファストフードで済まそうか。また食べ物のことを考えながら電車に乗った。

その時だった。言葉は悪いが、ゲボが出そうなセクハラを見た。電車のドア横、壁になっている側に30代くらいの女性、そのすぐそばに40代くらいの男性が立っていた。女性が敬語を使っていて、聞こえた話からしてその女性はお子さんがいるようだった。男性はやたらと女性に身体を近づけていて、ふらついてもいないのに腰や背中を撫で、肩を抱き時折ぐっと顔を近づけ覗き込んでいた。男性は左手の薬指に指輪をしていた。

自分の口が真一文字になる感じがした。マスクをしててよかった。あまり人のことを見るのはよくないな、と一旦視線を外し、出来るだけ会話を耳に入れないようにする。最寄り駅に着いて、降りるためにすぐそばを通った時、手を絡めているのが視界に入った。

勿論、セクハラかどうかはわからない。パートナーに対して「自分は子どもを早めに産んだ」という話を敬語でする人も居るかもしれない。色々あって、実は独身同士で、ふたりとも好きあっていて楽しんでいるだけかもしれない。ただ、私が見ている時だけで言えば、女性は終始その男性の方に顔を向けていなかった。声色は普通におしゃべりを楽しんでいるようだったが、肩を抱かれても、俯き気味でドアのガラス窓を向いていた。

一方的に敬語を使うような間柄の相手と同じ電車に乗ることになって、壁際に追い込まれ、身体に触れられ、はっきりと拒否が出来るだろうか。振り払えるだろうか。そういうことをする人を。

本当のところはわからない。ので何も言えず、ただ気分が悪くなった。電車を降りて、なんだかムカムカした気持ちで、ひとりでお酒でも飲んでしまおうかと思った。駅そばの居酒屋に向かう。

普段、そんなにお酒を飲まないし、1人で居酒屋に入ったことはほぼ無い。でも1人で飲みたいと思った。女だからと世の中に舐められているような気持ちに、勝手になっていた。わたしは何もされていないのに。世の中に対して「舐めるな」と思って、1人飲みを実行したのかもしれない。それとこれと何の関係もないのに。

一瞬、がやがやと賑わう雰囲気にちょっと怯んだが、外席の端の方でひとり穏やかにしみじみとお酒と焼き鳥を楽しむ高齢の男性が目に入る。私とて、この人と同じように楽しんでいい筈だ。その男性とひとつ席を空けて隣に座った。華金でお客さんが多かったのと、遅い時間だったのでほとんどの品物が売り切れていたが、残っているものでなんとか注文した。

先に来たジンジャーハイを飲み、お通しを食べる。となりの男性は、変わらずゆっくりと酒と肴を楽しんでいる。他のお客さんたちは、もうみんな良い感じに出来上がってこちらには目もくれない。お酒も入ってか、なんだか急に力が抜けてきた。お腹が空いてイライラしていたのもあるんだろうか。

頼んだ焼き鳥は炭火の香りがして、しみじみと美味しかった。スマホの電池がほぼ無かったので、写真は撮っていない。さくっと食べて飲んで、さっさと店を出た。流石に1000円は超えたが、ほぼせんべろみたいな値段で済んでしまった。

帰り道、飲酒運転になってはいけないので自転車を引き歩いて家に帰る。少し冷たい空気をアルコールでほてった顔に感じると、涼しくて気持ちが良かった。

@zinesay
夕飯日記