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人生
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夫婦揃ってまた10時頃までだらだらと惰眠を貪り、昼前にようやくベッドを出た。今日は車で10分程度のところにあるわたしの実家に用事があり、2人で出向く予定だ。母に「寝坊したのでちょっと遅れます」とlineを送り、のんびり身支度する。脱衣所で歯を磨きながら、リビングで配偶者が緑に葉水をやっているのを鏡越しに眺めた。

わたしの実家はいま母ひとりで暮らしている。兄はダウン症で足も悪いので普段は施設で暮らしているが、月に2度ほど、週末だけ戻ってくる。今日は兄が戻ってきている日だった。

今日の用事のうちの1つは、配偶者が兄のために買ってくれたものを使えるようにセッティングすることだった。普段施設で過ごす兄が退屈しないよう、母はタブレット端末を兄に持たせていたが、それがもうかなり古く動作も遅いし、バッテリーもすぐ消費してしまう状態だった。それを見かねた配偶者が、秋葉原に出かけた際に中古のタブレットを購入して、プレゼントしてくれることになったのだ。中古とはいえ、元から持っているものに比べたらずっと新しいし、動作も早い。実家で兄と話しながらネットワークの設定などをして、ついでにhuluのユーザーアカウントが余っているからと、1つは兄用のアカウントにして観れるようにしてくれた。

わたしや母ですらそのままにしてしまっていた兄の不自由を、頼まれた訳でもなく配偶者は解決してあげようとしてくれる。真に優しい人間だと思うし、そういう人と結婚して良かったと素直に思う。

実家で用事を済ませる合間に、母にお昼をご馳走になる。食卓に並んだのはうな丼とお吸い物に、ぬかづけ。こんな豪華なもの貰っちゃっていいの?と言うと、いつもは1300円くらいはするうなぎがこの前1000円で買えたから、と返ってくる。わたしは間違いなくこの人の子だ。

きゅうりとかぶの糠漬けは、「今朝漬けたばっかりだからもうほぼサラダね。塩をはるか遠くに感じる」と言っていたが、糠漬けの旨みがあり、じゅうぶんに美味しかった。

その後パソコンやスマホまわりの困りごとを聞いて、気付けば日は暮れて17時になっていた。このあとにわたしは新宿伊勢丹の英国展に行こうと思っていたが、思ったより時間がかかったので行くか迷う。でも今日を逃すと月火のどちらかに仕事帰りに行くことになり、それはちょっと疲れてしまうかも。結局今日行くことにして、配偶者には先に家に帰ってもらった。

英国展は、三越伊勢丹の百貨店で定期的に催されている。普段日本では買えないお店の紅茶やスコーン、イギリス菓子や雑貨などを手に取ることが出来る楽しいイベント。コミケよろしく開店前から並び、友人と協力してお目当てのものを買い回ったりしたこともあるのだが、今日はのんびり遅い時間に1人で向かう。いつもつい買いすぎてしまうので、今回は自重しようと決めていた。

それに今回一番買いたかったのは紅茶だったので、スコーンはついでに少し買えればいいかな、と思っていた。本当にそう思っていたのだ。

ヒギンスの紅茶をいくつかと、ピコティーのウイスキーティーを購入。あとダーヴィルズオブウィンザーのアールグレイも以前飲んで美味しかったのでリピート買いした。とりあえず最低限目当てのものは買えたので、会場をぐるっと一周してみることに。様々なスコーンのお店が並ぶ中、人を掻き分けつつ歩く。英国展ラバーの私にとっては馴染みのある店名が並んでいる。

ここのスコーン美味しかったなと、ティボーマルション氏のブースで足を止めた。少し並んではいるが、完売している様子も無いし買おう。列に並んでいると、ブースのパーテーションに貼られた写真が目に入る。

破顔してしまった。なんて味のある良いイラストなんだ。ティボーマルション氏は以前に出店した時も自身の身長の高さを半ば持ちネタにしているようだったが、そうか、ショーヘイよりも6センチ大きいのか。ボクの持っている棒はおそらく野球のバットではなくスコーン生地を伸ばすための綿棒なのだろう。小さなデコピンの絵がやたらに上手いが、愛犬家なのだろうか。

こんな極東の島国に催事のためにわざわざ来て、朝からせっせとスコーンを焼いてくれるだけでも恐れ入ってしまうのに、日本語とかわいい絵を使ってこんなふうに客を楽しませようとまでしてくれるのか。そのサービス精神やあっぱれ。

感謝をこめてスコーンをほぼ全種買い、また他のお店を物色する。最終的に4つほどのお店でスコーンを購入し、合間にクロテッドクリームも3種購入した。やっぱりスコーンにはクロテッドクリームがないと。中学生の頃よしながふみ作の西洋骨董洋菓子店を読んで、スコーンにたっぷりクロテッドクリームを乗せて食べる姿にとても憧れたものだ。

結局いっぱい買ってしまった。いやでも今回はキャロットケーキやヴィクトリアケーキなんかは買ってないし、ジャムの類も買ってない。スコーンだって定番のハフキンスやベノアはあえて買わなかったし、前に比べたらかなり我慢した方だ。正直美味しそうなジャムやケーキを見てかなり買うか迷ったけど。と頭の中で言い訳を、ではなく自分で自分を褒めてあげながら、帰路につく。

20時過ぎに帰宅し、散らかった部屋を見てもう今週は、いいや。と思う。お弁当のストック作りは今週はパスしてしまおう。夕飯食べて早めに寝たらもうそれで及第点だ。記念日もちゃんとやったし、実家の用事も済ませたし。また言い訳もとい自分への褒めをして自分を納得させる。わたしは自分で自分を丸め込むのが上手い。

夕飯は元から予定していた鶏手羽と鶏団子を入れた水炊き風の鍋にした。鍋と白米だけの夕飯だったが、昨日かなり手の込んだものを食べたのでいいだろう。なんだかんだ2人で白菜を半玉ぶんも平らげた。

土日の余韻に後ろ髪をひかれながら、明日からの労働に備えて寝る支度をする。充実した1日だったのか、久しぶりにすぐに眠りにつくことができた。

@zinesay
夕飯日記