15時頃、lineニュースの通知が来て、「そういえばこれくらいの時間だった」と思う。東日本大震災があった日。わたしは大学2年の春休みだった。神奈川は震度5強程度で済んだが、今まで経験したことのないような揺れが恐ろしかったし、日々津波と原発の映像をテレビで見ながら、もうこれ以上、ひどいことは起こらないでくれと毎日願っていた。神奈川に住む私ですらこんなに不安だったのだから、被災地の人たちの当時の苦しみや悲しみは計り知れない。前職場ではこういう時追悼の時間があったが、今は無いので、心の中で黙祷をした。
いつもはよいこの定時退勤をきめている私だが、今日は用事があり1時間程度の残業をすることになっていた。そのせいか少し疲れて、家に着いた途端リビングのへたったラグに倒れ込んだ。まわりには畳んだ洗濯物の小山がぽこぽことある。あぁ、なんにもしたくない。リモートワーク中の配偶者がわたしが帰ってきていることを知らず、リビングに来てトドのような生き物が横になっているのを見て驚いていた。疲れたので横になっています、と言うと、せめてと枕がわりのクッションを差し出してくれる。優しい。15分ほど横になり、むくりと起き上がる。とりあえず縦になるところから始めよう。
一度立ち上がってしまえば勢いで動ける。コンロ周りを軽く拭いたり、朝ごはんで使ったままの食器を食洗機に入れたりして、夕飯づくりにとりかかった。米をまず炊く。
今日使ってしまいたい食材は、解凍済みの豚ロースの厚切り肉と、熟したアボカド。たしか、長谷川あかりさんのレシピ本にとんかつ用の豚ロースを使ったものがあった筈だ。レシピ本を開き、記憶の中にあるページと同じものを見つけた。Twitterにも上げてらしたのでシェアしておく。
これ作ってみたかったんだ。まずメインはそれに決定。アボカドの方は、同じく長谷川あかりさんの別のレシピで、以前作ってとても美味しかったタコとアボカドのサラダにしよう。タコは冷凍のが少し残っているので、これも使い切れる。これもレシピが公開されていた。太っ腹だなぁ。
豚とにんじん、調味料を全てフライパンに入れ火にかける。蒸し煮にしている間にアボカドとタコのサラダの方を作り始めた。熟したアボカドは2つあったのだが、1つは傷んでしまっていた。もう1個はちょうど食べ頃という感じで、助かった。以前、割と経済的に豊かな友達が「成城石井ならアボカド買う時に腐ってないか確認するために切ってもらえるよ!」と教えてくれたなと思い出す。ただ、私が買っているアボカドは1個120円程度で、成城石井のアボカドはなんか…250円くらいするんだろう。成城石井でアボカドを買ったことがないのでわからないけど。わたしがいつも行ってるスーパーは2個買ったら1個は食べ頃のものだと考えると、結局出費には大差ないような気はする。なら成城石井の方が食材が無駄にならなくていいか。というか、そもそも食べ頃のアボカドを買って3日くらい冷蔵庫に入れていたから傷んだだけでスーパーは悪くない可能性もある。
しょうもない考えごとの合間に、フライパンの方の様子を見たり、たこを茹でたりじゃがいもをチンしたりして手を動かす。ボウルにアボカド、じゃがいも、たこ、クミンなどの調味料を入れて、そこにレモンを絞った瞬間クミンの香りが立ち上った。あぁたまらん。ざっとあえて、サラダが先に完成した。
ほどなくして豚とにんじんも出来上がり、火を止めた。もう少しでご飯も炊き上がる。長谷川あかりさんのレシピのおかげでちょっとおしゃれな食卓になりそうだし、せっかくだからかわいい食器やコップを出すか。お水に余ったレモンを絞ってみちゃったりして。
なんか色に統一感がないけど、まぁいいや。別室でリモートワーク中の配偶者に声をかけたら10分後に行くと言われた。わたしはとにかく美味しいうちに食べたいので待たない。いただきます。
にんじんと粒マスタードの甘味が豚ロースにじんわり染みていて美味しい。元から塩味は薄めのレシピでお好みで塩をかけて食べるように書いてあった。すこし塩を振るとより甘さが際立ってご飯が進んだ。
配偶者が遅れてやってきたのでご飯をよそう。先ににんじんだけ口に入れて、うまっ、と声を漏らしていた。うまいうまいとお肉もサラダもどんどん食べ進めて、後半にはご飯のおかわりをしていた。気に入ったようで良かった。