エフェメラを集めるのが好きだ。
まず「エフェメラ」とは何だろうか。
ざっくりいうと、情報の掲載された紙きれといったかんじ。チラシ、フライヤー、チケット、本に挟まれている情報、無料でもらえるしおり、箸袋……
これに価値を感じたのはわりとはっきりしたきっかけがあって、大好きな漫画家・藤子不二雄A先生がこういうものを集めていらっしゃるようだったからだ。
定食屋や食堂でご飯を食べると箸袋にはいった割りばしが出てきたりする。仕出し弁当。そういったものの箸袋には店名が書いてあり、どれも一期一会で、その場所でご飯を食べた思い出や記念になる。
チケットは言わなくてもわかってもらいやすく、捨てずにとって置いている人が多いかもしれない。ライブや映画、美術館博物館、記念切符。どれもその時の記念品であり、むしろ「捨てる理由がない」。
映画のチラシはコレクターも多い。そもそも、コレクター以外があれをもらって帰ることはあるのだろうか。……好きな作品の映画化、ならその作品の記念としてもらうかもしれない。
私は一時期映画チラシをコレクションしていた。好きな作品に限らず、その時上映予定になっているものやデザインがかっこいいと感じたものも一~二枚ずつもらってきて、ファイルに入れたりする。私のコレクションはチラシの厚みで……30cm~40cmぐらいだろうか。最近は好きなアニメや個人的に注目の映画のチラシしか集めていないから、大して増殖はしていないはずだ。
映画チラシの魅力は、ポスターを小さくしたような素敵なデザインもさることながら決まった「B5サイズ」に詰め込んだ情報量の多さだ。マニアの人はチラシの裏の劇場スタンプ違いも集めるという。昔は「劇場がどこでも違いを感じないなあ」と思っていたが、そのうち各劇場が閉鎖されて行ってしまうと、グンとその劇場名に価値を感じるようになった。もう京都スカラ座や京都宝塚劇場のスタンプが押されたチラシは手に入らないのだ。
そう、エフェメラの魅力はその一過性にあると思う。刹那、広範囲に情報を届けるために作られるチラシやパンフレット。情報の賞味期限が過ぎたら無用になるもの。
しかし、私の手元には20年以上前のチラシもコレクションされている。これはもう歴史だ。二度と手に入らない紙片がいま私の手元に、あの時と変わらず保管されている。もうこの情報の中で生きている情報はほとんどないのだ。