「茶色い味の素」は存在しえるのか?

⚠️いつものことながら、この文章は私の考え・仮説を書いているだけなので、大いに疑って読みましょう。

「味の素って体に悪いよね」みたいなことは私はまったく思わないが、何かと揶揄されてしまう味の素株式会社の『味の素』。

下の動画は、そういった批判に対抗したいと考えたのか2014年に公開された「味の素ができるまで」という製法を説明したもの。まず最初にこの動画をご覧いただきたい。

サトウキビを発酵させ私たちがよく知る味の素が出来上がるまでを説明しているが、みなさん「えっ、味の素って作ってる途中は茶色いんだ!」と思ったのでは?動画中では濾過、濃縮、結晶化に従い色が白くなっていっていることがわかる。

色から感じる「商品の品質」

どうやら動画中で言う「純度を高める」という過程で不純物を取り除く際に『味の素』が茶から白に変化している。

私は10年ほど前から、世の人が味の素に怪しさを感じる要因の大部分に "白さ" が関係しているのでは、と仮説を立てている。白い砂糖もなにかと同質の疑惑をかけられているようだし。

あくまで想像だが、それでも味の素をわざわざ白くする理由は「生成されていないと単純においしくない」「白い方が見栄えがする」「白くする過程がないとうまく結晶化しない」「味に影響する不純物を取り除く過程でどうしても白くなってしまう」「料理に色がついてしまうから」などがあるのかもしれない(繰り返すけどあくまで私の想像で "答え" じゃないよ!)。

例えば、きび砂糖のような「茶色い味の素」を作ったら世の中の拒否反応はかなり軽減されるのではないか?容器をパンダの柄にする以上の効果が得られる可能性は高そうだ。とはいえ私ごときが思いつくレベルの議論はとっくに味の素社内で交わされているはずで、茶色い色の『味の素ブラウン(仮)』が発売されないのは正当な理由があるのだろう。

仮にブラウンが発売されたら白い従来の味の素の売り上げにも影響が出るはずで、気をつけないといけないのはうまくやらないと「茶色があるってことは、白いほうはやっぱり不自然じゃん!」というメッセージングになってしまうこと。なので、基本的には「利用シーンを広げる」という前提のもとに白・ブラウンを別の用途・方向性で売りながら「味の素」ブランド全体に対する忌避感を徐々に下げていく、という展開だろうか(何度も繰り返しますが私個人の妄想を書いています)。

知覚品質とは

このように商品の色が変わるだけでも「消費者が感じる品質」は大きく変わる。このような事象をマーケティングの用語で、"顧客が感じる品質" という意味で「知覚品質」と言う。

例えばコンビニのコーヒーマシンはコーヒーの豆が入っているのが目に付く。コーヒーの豆が見えないドリップマシンよりも「おいしいコーヒーを作ってくれそうに感じる」だろう。マンガ『ラーメン発見伝』の芹沢さんの有名なセリフ「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」も同様のことを指摘している。ちなみに私がキリン一番搾りの回で「搾り汁のシンボルあんまり美味しくなさそう」的なことを書いたのも知覚品質に対する懸念だ。

商品の知覚品質を上げる方法・アプローチは多様であり、マーケターやデザイナーの腕の見せ所と言える。と、同時に「詐術的な側面」もあることを忘れてはならないことはしっかりと指摘しておく。さまざまな知覚品質の例は今後も取り上げていきたい。

@akirafukuoka
福岡陽(akirafukuka) NTTコミュニケーションズ デザインスタジオ KOEL 所属 ntt.com/lp/koel ブランドストラテジストとして「善いブランドを創る」ためブランド/ストーリーテリング/デザインを扱う仕事をしています。