デザイン業界の変遷(30年前〜10年前〜2025年)

Blue Regret
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公開:2025/2/8

私の目が見て来たデザイン業界の変遷について備忘録として書いておく。先ずは前編。結論から言うと、常に一つ二つ先のキャリアを睨んでおくのが肝要だと思っている。人は目新しいキャリアに飛び付く傾向がある。そしてそこは直ぐにRed Oceanになってしまう。Red Oceanになる頃には次の海に渡っている。そして既にその次の海を見据えている。そのくらいの余裕が必要だと思う。キャリアは変えていくものだと思っている。特に今の時代

私自身は、Web業界20-30年と言うバックボーンは持っていない、がこの10年くらいの変遷は見て来た。実家が印刷会社だった事もあり、紙の業界の闇は一通り知っている。自分の幼い頃に見た現実、10年前の私の目から見たデザイン業界、そして今についてその流れを思い出しながら書き起こしてみようと思う

広告業界。Illustrator, Photoshopの世界。厳しい世界。デザイナー = 奴隷の様な扱い。真夜中に電博の人が来てあれこれ指示を出しそのままデザイン事務所に滞在しその電博の人は豪華なお弁当を食べて深夜まで寛ぎデザイナーを監視する。デザイナーは徹夜しデザインを仕上げる。そんな日々が永遠と続く。私は幼い頃にその様な光景を何度も目にした。大変な業界。デザイナーの地位は最下層。デザイナーになったら人生終わり。そう思っていた

10年前 (2015年) 。スマホが世の中に普及し始めた頃。グラフィックデザイナーという職種が影を潜めWebデザイナーという人種が台頭し始めていた。Webデザイナーの横で「紙しかやったことない人」は肩身の狭い思いをしていたに違いない。プロトコルが全く異なる。デザイナーと言う肩書きは同じでも出来る事が全く違う。グラフィックデザイナーの中に「インタラクション」と言う概念はない。Webデザインはインタラクション。「ユーザー(とシステムのインタラクション)」という新しい概念。私は当時、Webデザインと言えば、中村勇吾さんを連想していた(私は2006年に初めて中村勇吾さんをテレビで知った)。そう言えば一昨日このような記事を見つけた

10年前、Webデザイナーが活躍していた時代、たが彼らの年収は400-500万円程度。その時も未だ「デザイナーの地位は最下層」と思っていた。当時、マーケターの年収は700-800万円。そこには大きな差があった

私は2016年にSlackと言うツールを知り、その時にビジネスコミュニケーションの新しい形を知った。同時期にSketchと言うUIデザインを作る為のツールをプロデューサーと呼ばれる人から教えて貰い、使うようになった。Sketchの出現と時を同じくして出現した「UIデザイナー」という役職。年収レンジが桁違いに高い。当時、Webデザイナーの年収は400-450万円程度。UIデザイナーの年収は700万円を超えていた。ユーザーインタフェースデザイン。UIデザイナーはユーザーの事を理解している。周りはそう思っていた。ユーザーの事を理解していなければ、プロダクトを作ることは出来ない。「プロダクト」という言葉。プロダクトマネージャーという役職と共にUIデザイナーという役職は聖域化され光輝いていた。数百名規模の組織に一名程度しか在籍していないUIデザイナーというfunction。当時、UIデザインの知見は何処にも無かった。蔦屋書店にUIデザインの本は一冊も置いてなかった。私は当時よくこのサイトを見ていた

しかし、その数年後、UIデザイナーが大量発生することになる。2018-19年頃。UIデザインの知見は世の中に広まり、非デザイナーもUIについて語る事ができるようになりUIの民主化は加速した。UIデザイン界隈はRed Oceanと化していた。すると今度はプロダクトデザイナーという役職が目立ち始め、彼らはプロダクトマネージャーと共に上流工程に入り伴走形式でリサーチを主導していた。「上流工程に入っていけるデザイナー」。彼らは「UXリサーチ」という武器を片手に元々あった「UXデザイナー」という役職(と言うか概念)の抽象化を更に推し進めた。すると突然この様な事を言い始める人達が現れた。「お前のアウトカムは何?」。UXデザイナーに突如突き付けられた現実。この時を境に色々言っているけどアウトカムを出せない(売上に貢献出来ない)デザイナーが淘汰され始め、非デザイナー(Figmaやv0を使い熟せる人材)がデザイン機能を担うシーンを目にする。UXデザイナーは「UXリサーチ」という錆び付いた武器を手放すことが出来ず、最後の力を振り絞ってその武器を振り翳す訳だが、「ドメインエキスパート」という魔力に掻き消され、力尽きていく。2025年時点で市場に残っている事業ドメインは素人(UXデザイナー)が扱うには難し過ぎるので、リサーチしても結局何も分からずに終わる。それならその事に既に詳しいドメインエキスパートがデザインを考えた方が圧倒的に早いし正確。確度も高い

10年前と今。後編へ続く

@blackblue
日々の出来事や人と話して知ったことを書こうと思う。