ハースブラウンを許さなかった

鈴木せりふ
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ヤマザキ春のパン祭りの季節である。食パンであればだいたい100円で1点が相場とされているところ、2.5点のロイヤルブレッドを常時138円で売っている神の店が近所にあるものだから、朝食を牛乳だけで済ませていた生活習慣を歪めてまで、買えば1000円そこそこの皿のために、日々ポイ活に勤しんでいる。ピザーラブランドのピザトーストソースが、トマトの味わいが濃厚でとても良いことを知った。

しかしデイリーヤマザキには、パン以外の商品にもポイントの付いた商品が豊富に存在する。この間出先でデイリーヤマザキに入ったら、サンドイッチはもちろん、おにぎりにも、弁当にもあのシールが貼られているじゃないか。調子に乗って翌日食べる分まで買いだめしたら、食パン3斤分くらいのポイントが簡単に溜まってしまった。こうも簡単に荒稼ぎできてしまうと、近所にファミマとミニストップしかないばっかりに、別に習慣でもねえ食パン食ってんのが馬鹿らしくなってくる。もちろん値段だけで言えば食パンのほうが安いんだけど、なんたって回転率が違いすぎる。せいぜい2,3回の食事で食パン3斤は食えん。

そして先日、別の用事で出かけた先で、駅前にあったハースブラウンというパン屋に入った。惣菜パンをいくつか買って会計を済ませたら、小さな紙切れをもらったのだけど。

そこには見覚えのある白い皿の写真が。

そう、ハースブラウンはヤマザキが経営するパン屋のひとつで、実はここでもあの皿をゲットできるキャンペーンが開催されているのだ。チケット5枚で皿と交換できるので、パン祭り基準ではこれ1枚に6点分の価値があることになる。しかもこのチケットは500円につき1枚手に入るので、1点あたり83円という、通常ではあり得ない高レートで取引がされていることになるのだ。そのへんの店では120円の菓子パンが0.5点であることからも、ハースブラウンの触法ぶりは常軌を逸していると言わざるを得ない。

なんだよなんだよ、結局パン祭りなんて近所にヤマザキの店があるかどうかで難易度が5倍変わるガチクソゲーじゃねえか、何がポイ活だ馬鹿野郎、食習慣崩してまで白い食パン食って馬鹿みてえじゃねえか、「このペースで頑張れば4月中に2枚目も行けるかな」じゃねえんだよ、さっさと電車乗ってハースブラウンで爆買いして来い。

次の引っ越しの際に同じ過ちを繰り返さないためにも、SUUMOは物件情報に、ヤマザキ春のパン祭りの対象店からの距離を表示させるようにしておいてください。


……という文章を4月の頭に書いて、ずっと公開しないままでいた。正確には一度公開したのだけど、その直後に別ウィンドウの書きかけの状態で上書きしてしまって、慌てて下書きに戻していた。しずかなインターネットにバージョン履歴があるということに気づいて、今回めでたく公開時の文章が復元できたのだけど。

これを書いてから半月の間に、自分の食生活が大きく変わって、今ではとてもパンなんか食べようという気分にならない。18点まで溜まったシートは手元にあるけれども、ここにシールを追加で貼っていく気力ももうない。たった2週間でこんなにもマインドセットが変わるもんなのか。