いくつもの言語と文化を持つこと、地域と福祉とインターネットと私

Maki
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公開:2024/5/6

5/3旅路の記録より 復路の船にて

私には故郷がない、と感じているのは転勤族の子どもだったことが由来なのだけど、そんな育ちの結果、関西地区の訛りと、東海地区の訛りが混じっている。でも文化背景的には関西に寄っている、気がする。今暮らしている東京のことは、まだよくわかっていない。いつも東京はマスメディア越しに触れてきていたから、うっすらと言葉と消費文化は多くの人に身近なものなのかもしれない、と、また東京の話をしているな、とテレビ番組を見ながらぼんやりと抱いていた不満を思い出す。旅に出ると考えるのは、いつもこういう、東京ではないどこかで住み暮らしていた感覚。

地域と言葉、言葉と文化は密接だ。旅先でその土地に生まれ育った人から学ぶ言葉や慣習を知ると、痛感する。

ろう者から手話を習う中で、その背景にある聴者と違うコミュニケーションや繋がりを知る時にも。

進学や就職や転職で、今まで触れてきた分野や専門性、業界が違う場に飛び込んだ時にも。

そして、病気や障害と共に生きることになって、医療者や支援者とコミュニケーションしたり支援要請のために学ぶ時にも。

それぞれに言語があり文化がある。たとえ同じ日本に住み暮らしていても、成り立ちと背景がちがう。遠くに見ていたトウキョウといっしょ。

福祉は、地域性がある。その地域で住み暮らしてきた当事者と自治体の関わりや自業者の考え方が、地域によって全然違うことが、ままある。同じ東京都内でも、区町村で違う。福祉サービスの基となる法律類は国で統一されているのが基本なので、あるべき姿は同じものを持っているはず、と思いたいけれど、そうではない、厳しい対応をされたり受けられないサービスがある、というのを、インターネット越しに知ることが、ままある。悲しい気持ちになりつつも、人の関わりが大きい事業は標準化されにくい、というのを、旅行先で標準化されていないが故の良さを感じながら、または地域の当事者活動が活発的な成功例を思いだしながら、考えている。

私は今住み暮らす自治体に、いつまで暮らすかは、わからない。家を買うことも定住化することもイメージがわかない。私自身の育ちの影響もあるし、障害や病気が増えながら思うのは、将来的には福祉的なサービスを受けやすい住み替えをするのが未来には起こりうるのだろう、と思っているから。シェアハウス暮らしを20代の頃にやってみて、他者と暮らすのは性に合ってるなと実感しているのもある。今回の旅の宿、ドミトリーと共有部がありゆるやかに交流するホステルも、好き。人がたくさんいる場が安心する。そこにはいろんな言語と文化が入り混じる必然性があり、偶発性が生まれ、何かの考えに囚われてしまいそうな私が、ふっと楽になる瞬間がある、そんな体験を重ねてきたから、好きなんだろうなと思う。

私とあなたは違う人間で、違う文化を持っている。

日本語圏で住み暮らしていると、たまにこの感覚が薄れてしまう時があり、私はそれがとても、苦手だ。

私とあなたは同じ考えを持つ人間で、同じ文化を背景に判断している、と思い込んでいる人は、私の凸凹や異質さに不穏になったり攻撃したりする、という体験を、これも過去に重ねてきたから、なんだろうけど。

世界が繋がり続けながら分化し深化しゆく現代の情報社会において、一つの言語・一つの文化だけを持ち続けて他者と相互理解を深めるのは、難しい瞬間がある、ように私は感じている。

あなたの言語、あなたの文化はどこからきていて、あなたはどう感じているか、知ることで私が広がる瞬間があり、互いに今まで考えたことがなかった選択や考えを得ることがある、そうした驚きと喜びを、私はもっと、知りたい。

世界はそうやって成り立っている、と理解するまでは、苦しかったなを思い出す。

どうして現実世界にはチュートリアルがないんだろう、と、転校するたびに違う言語と文化に放り込まれ、生データから学習するたびに思っていた。その土地で生まれ育った人が多い土地ほど、馴染むのに苦労したし、去るまで馴染めないと感じる土地もあった。

それでもいつかまた私がそこに住み暮らすかもしれない可能性はあり、そうした土地の福祉もより良いものであってほしいとそこで暮らす同朋に思うこと。この<同朋>は、インターネット越しに困難や解決策をシェアしあうどこかの誰かを指しているようだな、と、書いてみてから考えて気がついた。私のリアルワールドの故郷はないけれど、インターネット日本語文化圏は、多分、一番長い時間触れている場の一つ、だから。

だからインターネットの土地がより豊かになるように、情報を流す先を意図していることがある。Twitterで知った本の感想はTwitterに流しているのもその一つ。Twitterがなかったら知らなかった医療福祉の情報はたくさんあるから、私は私の体験を、1データとして流している。

でもXになってしまった今はそこまで信頼をしていない、人がたくさんいるからまだ過去のような使い方もできるけれど、運営の信頼度はBlueskyの方が私の中では格段にあり、信頼できるプラットフォームがより豊かに繁栄することを願い、テキストや写真を流しゆく。

広いSNSだけでなく、小さなインターネットの関係性も、私にとっては大切で、それは今明示的な場はDiscordが一つある。5月末からその場で新しい試みを始めようと思う。インターネットの同胞たちとつながり交わりながら、言語と文化を行き来しながら、あなたや私が、呼吸がしやすくなる世界を一端で作っていきたいね、と思っている。インターネットにこうした場を作るのは、ほらまた東京ばっかり、の気持ちが私の中にいまだにどこかにあるから、なのもあるんだろうな。地方都市出身インターネット育ち、これから先の居住地本拠地はどこになるかわからないけれど、インターネットを通してあちこちが豊かになればいいねと願っている。

@chan_maki
脳の中が賑やかなときに書き出しにくる。Autisticなじぶんを認めることで心地いい着地を見つけはじめた。多くの困難は不注意と多動にあるADHDer。2024年の目標は「トイレを我慢しない」。視覚過敏が年々強くなるのでサングラスを増やしたい。Bluesky: bsky.app/profile/chanmaki.bsky.social