グッドエンド(隠しエンド)でクリアしました。
途中の感想は、3月にもあります。
・一通りプレイを終えて
想像していたものより一線を超えてて頭抱えた。1人でゲームをしてるのに、真相が近づくにつれ「いや〜……それは……マジか〜……」と思わず口から出てしまった。
物語の構成が巧妙なゲームなんですが、特に真相に至るまでの現実パートは、非常に性格が悪いですよね(言い方)4年という長い軋轢を乗り越えて、友情を取り戻した矢先に、真実が開示される。この流れは、実際にプレイしていると結構なダメージが入ります。プレイヤー視点では、3日間かけて友情が再構築されているように見えていたんだけども、実際は、その輪の中にサニーは入れていなかった、という。
終盤をプレイしていた時の感情は、辛い・悲しいよりもとにかく"混乱"が大きかった。というのも、マリの死因について、私の倫理を司る部分が「まあまあダメ!」の判定を出した為、その後に続く「マリや友人との幸せな思い出・サニーを後押しする夢の中の友達」という描写が全て「突如流し込まれる都合のいい想像」のように感じてしまった為なんですよね。その結果「サニー、最後まで頑張ってくれえ」⇄「これってそんないい話風にまとめてもいいのか!?」が交互に襲いかかる、情緒の温冷交代浴みたいになってしまったし、整うどころか乱れる一方だった。
しかしその感覚に関して、サニーも自覚的である事は、作中でなんとなく察せられますよね。サニーを後押ししてくれるマリも友人も、結局サニーが自分のために見せる都合のいい夢なわけです。特にマリなんて、本当に自分を応援してくれているかなんてわからない。確かに自分が死んだとしても、サニーに愛情深い言葉を投げかけそうな人物ではあるけれど、未来を奪ったのはサニーなわけで、死んだマリの本心を知る人はいないじゃんってなってしまう。でも、サニー自身もそれを分かっているから、自分を勇気づけてくれるマリと、自分を執拗に追いかけてくるマリ(影)がいるわけなんだよな。オモリが最後、「あなたみたいな人に、生きる資格なんてない」「真実が明らかになった時は、あなたが自分を嫌うように、みんなもあなたを嫌うだろう」「あなたにできることは状況を悪化させることだけだ。いっそ死んでしまったほうがマシだ」とサニーに投げかけたのも、まさに自分の気持ちなわけで……都合のいい夢を見ているなんてこと、サニーはわかってんだよ自分で……な……
オモリ戦で「大切にする」を使用した際に、友人からかけられる言葉も全て、真実を知らない友人たちの言葉なわけです。でも、あの輝かしい思い出を過ごした友人たち・マリの死を乗り越えた友人たち・変わってしまった自分を含めた5人を、お互いにもう一度迎えられた友人たち、の善性を信じて勇気を奮っている。バジルが話してくれる「希望」というのが……何の根拠も途方もない希望なんだけど、それに縋るしかない共犯者2人の、物悲しくて前向きな言葉が、この2人だから起こってしまった悲劇なんだけど、この2人だからこそ乗り越えられる局面でもあり、相反する感情をぶつけられていろいろ考えさせられるゲームだなと思います。
と、冷静になれたのはプレイを終えて一拍おいてからだったんですが!プレイ中に釈然としない気持ちになっていた部分は、作中の描写を咀嚼するとおおむね腑に落ちる部分が多く、考えれば考えるほど、逃げのないゲームだなと思いました。なのでプレイを終えた直後も、味わい深いゲームをプレイしたな、とは思っていたんですが、少し時間がたってからの方が、よりいいゲームだったなと感じることが出来ています。
・グッドエンド?
OMORIのプレイヤーはみーーんな「グッドエンディングを迎える」の実績を解除して、二度見したんじゃないかと思います。景品表示法にひっかかっちゃうよ、せめてトゥルーエンドとかにしとけ~~?!
このゲームをプレイしている真っ最中だと、みんなに真実を話すことは、もはやサニーのエゴにも見えるんですが、全エンディングを俯瞰してみると見え方が少し変わってきますよね。真実を話さずにいることは、サニーとバジルの限界を意味するわけで、サニーかバジル(もしくは両方)が死亡してしまうと、みんな無事とは言えないんですよね(サニーが死亡した場合の、みんなの描写は見ることができないけれど、バジル死亡ルートの反応を見ると、幸せになれないことは想像に難くない)
話すことも・話さずにいることも幸せじゃないわけだ。そもそも、この物語の幸せは過去にしかない。プレイヤーがこの物語を始めた時にはもう、詰みの一歩手前なわけで、その中でも、全員に救いの可能性があるのは「もう1日」エンド。だからこれが、グッドエンドになる。
サニーがみんなに真実を話したという事は、友人を傷つけ・失望されたとしても、自分の罪を償い・バジルを開放しようという、意思だ。彼の人生を続けようとする意志を感じて、じーんとする。このエンディングをいい結末だった!と解釈することはできないけれど、サニーの未来が少しでも明るければいいな、と願わずにはいられない結末だった。
本当にこのサニーかっこよくて好きですね……
・それはそうとバッドエンド
この画面を見た時に興奮で手が震えた、私の性癖の1つに自殺があるため。
バッドエンド(特に飛び降りED)は、こっちが正規ルートでも遜色ないほどの出来で驚き……致命傷のMy Timeが我々を襲う。トレーラーで流れた曲がバッドエンドに使われるとは誰も聞いてないのよ(歌詞を踏まえるとそりゃそうなんだけど)
グッド・バッド共に非常に好きで、そこに優劣があるわけではないんですが、こちらのEDのほうが感情がベショ……となってしまいました。手前で書き連ねた通り、グッドEDはサニーにとって辛い人生の続きになるわけですが、飛び降りEDはこれが正真正銘のおわりなわけで。やっと彼にとって完全な安寧が訪れると思うと……よく頑張ったね、といいたくなる。
・ゲームとしての手触り
ストーリーにばかり焦点を当てて話してしまったんだけど、「ゲーム」という体験する遊びを生かした、挑戦的で試行錯誤が感じられるギミックが多く、遊んでいて楽しかった!特に、戦闘における感情システムは、ゲーム主題との組み合わせが抜群かつ華やかで、本当にいいシステムだと感じています。
ただし、超快適なプレイフィールでした!とは言い難く、終盤は避けられない雑魚キャラに、かなり疲れてしまっていた部分もあった。せめてポケモンの虫よけスプレーのように、一定時間エンカウントを避けられるアイテムとかがあれば、だいぶんストレスが軽減されたのだけど……
他にも、大雑把なマップしか見られない・素早く移動できる手段が少ない・先の見えない行き当たりばったりな行動が多い・手間がかかるサブクエ(おつかい)が多いなどなど……サニーが作った優しい夢の世界にプレイヤーを没入させようとするあまり、RPGのシステムと噛み合わせが悪くなってしまった部分も多々あったな、と思う。
しかしゲームに載せられたきめ細やかな愛情を見れば、そのストレスの多くは手間を惜しんで残ったものではなく、作者の理想のために解決を優先すべきでないと判断したものなのではないかと思う。ストーリー上の演出はもちろん、ストーリーに直接関係はない、イベントやモーションまで……ここまで作ってるの!?と、完走するまで驚きっぱなしだった。
私にとっては、全てのストレスを差し置いても、体験する価値のあるゲームだった!と思える作品でした。コンソール版もたくさん展開されているので、さらにこのゲームをプレイする人が増えたらいいなあ。
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以下はさらに雑多な、各キャラクターに対しての所感です。ますます読まなくていいやつ。
バジル
作中、あまりかかわることが出来なくて、終盤までキャラクターがつかめなかった。そのわりに彼からサニー/オモリへの執着がすごく、情緒不安定でヒステリックな部分もあるので、あまりいいイメージを抱かないキャラだったんだけど、真相を知ってから冷静に考えてみると、そりゃそうだよなあ~って思う部分がかなりある。
特大の秘密の共有をしておいて、精神が壊れるくらいの罪悪感を背負っているのに、サニーだけ引っ越しってどういうことだよ!そりゃないよ!ってなるよな、キレたくもなる。(サニーはサニーで、茫然自失としている所に、バジルから死因偽装の話を持ちかけられたのではないか?と解釈しているので、お互いに思う所がありそうと思っているのですが……)
齢12、3くらいの子供が死因偽装とかするのかな……と考えたりもしたんだけど、子供って時に大人となっては、理解できない/取り返しのつかないことをしたりするからなあ。親に怒られることや、友達に見捨てられることが、世界の終りのような事態になってしまうことも……ある。特に「誕生日に願うことがないくらい現状に満足していて、いつも助けてくれている最年少の友達を守らなくてはいけないバジル」と、「最愛の姉と大喧嘩するくらいに、姉を含めた友達との楽しい時間が好きだったサニー」は、どうにかマリの死がなかったことにできないか、せめてサニーが関与していない風にはならないか、今の幸せな現状を守れないか……と考えてしまったのかもしれんな~と思う。
夢の世界のバジルの人柄を見ていると、当時は不思議ちゃんでありながらほがらかでよく笑う、お話し好きの男の子だったようで。このキャラクター性で、死体埋め・メンヘラ・今は上手く笑えない子が昔は上手く笑えていた、という要素を抑えており、業のトリプルセットみたいな存在なのが可愛いと思います。
ケル
作中もっともファインプレーヤーで賞。なんでもそつなくこなす姿からヒロの活躍が目立つんだけど、ケルがいなかったらほんま終わってたな……と思う部分が多い(また本人は無自覚っぽいのがいい)
月並みな言葉だけれど、ケルがいつも誰かの手を引いて大きな一歩を踏み出してくれるのが素敵だな、と思います。繊細な感情には寄り添えなかったりガサツなところがあったりと、ノンデリっぽいところはあるものの、サニーをはじめ、その遠慮のなさでしか救えなかった人々がいるだろうなと感じる(傷つく人以上に!)
特に、「あと3日」の現実パートでのケルとのお別れシーンで「お前久々に人と話したって感じだけど……気にすんな!練習あるのみ!」と言ってくれるところが、なんだか好きです。プレイヤーからすると、サニーもオモリも無口無表情なので、どう言った様子かはあまりわからないんだけど、やっぱり挙動不審だったり、年齢不相応な様子があったのかな……と思います(まあナイフ振り回し事件もあったし)それをみても、あまり遠慮した様子を出さないところが彼の優しさであり、愛嬌だな、と思うところです。
また明るく目立つキャラクターとは裏腹に、舞台装置としては渋い活躍を見せるところも好きです。特に4年後の友人たちと初めて会うのが、大きく変わらないケルだからこそ、オーブリーとの邂逅が引き立つのが本当に…… このゲーム、全体的に上げて落とすのが上手なので、それにまんまとやられたーってなる部分ですね。夢世界の延長でナイフを振り回してしまって、オーブリーたちに反感を買うシーンは、現実と虚構が入り混じってしまった/虚構の世界に帰ってしまいたいと思うサニーの感情とプレイヤーの感情が重なりあう、とても上手いな〜!と思ったシーンなんですが、ここでも必要以上に叱責せず、引き留めてくれるのがケル、というところも好きです。
ヒロ
作中で1番被害者……イケメンでなんでもそつなくこなせるのに、受難体質・苦労人気質で主体性のない男とか嫌いなヤツいる?いねぇよなぁ!って感じの男。正直に言うと結構えっちな目で見てたし、今も見てます。全然過去形じゃない。
目立ちたがり屋のケルとは反対に、比較的おとなしくしているのに注目を浴びてしまうキャラクター性で、ほほえましい反面、本人は本当に苦労していそう。スイートハート城でのドタバタは、笑いなしには見られない。
人の機微に聡いあまり、スペースボーイ船長への対応など、相手のナイーブな部分には二の足を踏む所があり(あれは私も触れないけど)ケルのある種、空気の読めない部分が突破口になるシーンもあります。こういった「相手の事情を鑑みて、深く話を聞けなかった」という自己認識と強い責任感が「マリの自殺を止められた立場なのに止められなかった」という後悔に繋がっている一面もあるのかなあ……と考えたり。そう思うと、サニーとバジルのしてしまった事は本当に罪深いのですが、じゃあ2人が悪いじゃんって話には……ならない……(サビ)
現実パートにおいて、積極的にオーブリーやバジルとの会話を試みる姿は、その頃の後悔を踏まえた上での強さかもしれない。本当に頼もしいお兄ちゃんです。
通常、彼ほどできた兄がいると、下の子供は劣等感を抱いてしまいそうなものですが、ケルにはあまりない。特に4年後の現実パートでは、ヒロのことを尊敬している姿が、強く描かれているように思います。
その理由の一端が垣間見えるのが、ケルと2人でマリの墓を訪れた際に語られるエピソードだと感じています。マリの死後、ケルに対しヒロが非常に酷く当たってしまうエピソードですね。ヒロの錯乱っぷりに衝撃を受けたケルは、兄弟共々泣いてしまうんですが、それを見た両親は、泣いているケルを置いてヒロばかりを慰めてしまうんですよね……ケルは笑いながらその時のことを話してくれるものの、本人は傷ついたであろうし、ご両親のどこかに順位付けがあるのでは?と思います。(単純に、表面上は通常通り過ごしている弟より、引きこもっている兄の方が心配だったという事もあると思いますが)
その中で、ヒロだけは泣いているケル気づいて、我に返り、謝って慰めてくれる。そういう、ケルの様子にヒロだけが気がついている場面が、日常でも多々あるのだろうなあ~……と。兄弟で差別されているわけではないと思うのですが、ご両親が「ヒロに比べてアンタは!」とケルを怒ることがあったのではないかな~というのは容易に想像できますよね。でもヒロは、いつも一番にケルの味方をしてくれる。だからこそヒロは、ケルにとって尊敬できるお兄ちゃんであり続けているのかな、と感じられます。
オーブリー
共感性が高く、感情的になりやすい、良くも悪くも女の子らしい女の子!というキャラクター。感情の「むかむか」で涙が出てしまう所なんかが、すごく彼女らしさを表していて好きな表情差分です。ままならない・白黒つけられない現実への鬱憤が強く、負の感情に振り回されている所など、揺れ動くティーンの感情が魅力的な子だと思います。
彼女が悪い子ではないとわかっているあまり、現実パートでのバトルや喧嘩は痛々しくて、結構悲しい気持ちになっちゃったね……また、ケルがかなり強くオーブリーに当たるため、そこまで言わんでも~~!!となった人は多そう。かくいう私も、1日目はどうしてもオーブリーちゃんの気持ちに思いをはせてしまい、ケルとのハイタッチは見送るくらいしょんぼりしてました。多くは語られないけど、マリを失った時期に、家庭でも色々あったようで本当につらい境遇の女の子だと思います。
現実パートで初めてオーブリーを見た時、マジのガチ本気で度肝抜かれたのは私だけ?トレーラーに出ていたのにね……外見も口調もすごく変わってしまったんだけど、ストーリーを進めていく内に、昔のころのままピンク色が好きで、マリと髪を染める約束をしていたことを覚えていたり、協会に祈りに行っていたり、まるで姉御と舎弟のような関係に見えていたキムとは本当に仲が良かったり……と繊細で心優しい本質は変わっていないところが見えて、いいよね。終盤で「(みんながマリを忘れるように人生を進めるように見えた中)アタシは、人生が、時が止まってくれないのが辛くて」という言葉を聞いた時にマジで半泣きでした。私も、大切な人を失ったとき、ずっと立ち止まってくれない/悲しんだままでいてくれない周囲を恨むだろうな……とめちゃくちゃ共感してしまったんですよね。そのあと「でもみんなは自分なりに痛みを乗り越えようとしてただけだったんだね」と続き、オーブリーが停滞から抜け出した事が垣間見えて少し明るくなる場面なのですが、そもそもキムとの友情を見ていると、彼女自身も無自覚に新しい居場所を作って、痛みを乗り越えようとしていたのだろうな、と思いますね。
ところで……サニーが真実を伝えた際、許してくれそう/許してくれなさそう、なんかを語るのはナンセンスだと思うのですが、その読めなさ・含みの持たせ方もまたうまい所だな~と感じています。
例えば、私が思うオーブリーの気質としては、感情的で、容認できないことに対して、相手の事情を考慮することが苦手なタイプに見えるため(バジルが写真を汚したと誤解すると、いじめに近い態度をとってしまうなど)通常の状態であれば、サニーが行ったことを許すことはできないだろうな……と、考えています。ただ彼女は作中で、泳げないバジルを湖に突き飛ばしてしまう、という経験があるため、人はあっけなく事故で加害者になり得てしまう事を体験しているんですよね。
対して、普段は自分の事情より他者の気持ちをおもんばかることが多いヒロには、恋人を殺されたという、簡単に許容するわけにはいかない事情があるわけで……3人の先の見えない塩梅が、グッドEDの絶妙なビター感に拍車をかけているよな~と思います。
マリ
私は「死んだ女が一番いい女」という言説を持っているのですが、まさにという感じ。精神性が爆美女にもかかわらず、死んだことで1ステージ上がってしまった……
もちろん欠点がない人ではなかったと思うのですが、気が効くのに奔放な部分がある少女というのは、あまりにも死者として魅力的なキャラクターだと思います。ピクニックで話をしている限り、細かいことにこだわるのはどちらかというとヒロの方で、マリはおおらかな性格をしていた印象だったので、サニーが嫌気を刺すほど、完璧な演奏にこだわっていたというのは意外でした。もしかすると、夢の中のマリは、サニーの願望が少し反映されているのかなあ。もしくは、絶対に成功させたい演奏会というのが、よりマリを追い詰めたのかも(そう考えるとさらに切ない……)
セーブや体力回復など、一息つくためのシステムが、マリに集約されているのもゲームの妙だと感じます。マリを見つけると安心するというのが、サニーの願望や心情と重なり、上手だなと思う部分ですね。
夢の世界ではひたすらオモリを元気づけてくれる発言が多かったり、現実パートでマリのエピソードを周囲から聞いたりする中でも、本当にサニーを思ってくれているお姉さん像しかなくて、つらい……溺れるサニーを助けるスチルは、美しく慈愛に満ちていて、変なうめき声が出ました。全員いい子たちのはずなのに、幸せな未来を送るはずだったのに、どうして(n回目)
上記でも述べましたが、夢の中で見るマリは、どこまでいってもオモリ/サニーが作り出した都合のいいマリでしかない。でも、引っ込み思案なサニーを愛し守った姉であったことは絶対の事実だから、自分の中のマリを信じて生きることが、サニーの償いなのよな……と、思うばかりです。