うた子さん
お返事ありがとうございました。やはり、いいものですね。しみじみと嬉しく思いました。
うた子さんがちょうど往復書簡に関心を持たれていたとは、ラッキーというか、タイミングもよかったのですね。さっそく『さびしさについて』を買ってきて読み始めています。小説家の滝口悠生さんは知っていましたが、植本一子さんのことは初めて知りました。往復書簡のやり取りを読んでいるうちにだんだん二人の事情や状況がわかってくるのがおもしろいです。一度に読み終えてしまうのも違う気がしたので、ひとまず3,4往復くらいまで。
『さびしさについて』とあわせて買ったのが、岸政彦さんと柴崎友香さんの共著『大阪』です。さいきん文庫化されたばかりで、近いうちに読みたいなと思っていたもの。「共著のエッセイって、それはほとんど往復書簡かも?」と気付き、それならこのタイミングで買わなくてはと。ただ、読む前にわたしにとっての「大阪」を書いておきたくて、まだ積んでいます。わたしが大阪に住み始めたのは1年ほど前からで、この街のことをどう感じているのかを書き残しておきたいのです。
他にも買ったばかりの積読本がいくつも待機しているので、千葉さんの『センスの哲学』にはひとまず待ってもらっています。「いま買わないとタイミングを逸してしまう」と思って買う本もあれば、「いずれ読むのだから慌てて買わなくてもよいだろう」と思って買わない本もありますね。
うた子さんが『現代思想入門』を読み始められたというのは、なんだか嬉しいです。文章がとても読みやすいんですよね。哲学系ゴリゴリの論文などは難しいのですが、一般向けに書かれたものは驚くくらい読みやすい。わたしは『アメリカ紀行』というエッセイが特に好きです。わたしがいちばん影響を受けた作家のひとりだと思っています。
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『虎に翼』、第3週もよかったですね。15話で、泣いてしまって苦しさを吐露した花江さんに反発したよねさんが批難するところや、そのあと涼子さんが言った「わたくしが優秀なのはわたくしが努力したからなのに、それは誰も認めてくれない」という言葉などに、ああ、このドラマはこんなところまで語れるんだと思いました。
ひとつ、思い出したことがあります。
昨年たまたま取材したイベントで、10分ほどのプレゼンテーションをしていた若い女性のことです。まだ大学生のその女性はプログラミングが得意で、「未踏IT人材発掘・育成事業」というプロジェクトにも採択されています。また、女性とノンバイナリーのためのプログラミング関連の大規模イベントを企画し、先月無事に開催されたとのこと。すごい人がいるなあ、応援したいなあと強く思いました。そしてその一方で、なんともいえない、申し訳ないような気持ちもありました。
彼女は、自分のプログラミングの力をつかって女性が安心して生活することをサポートするアプリを開発していますし、女性比率の少ないプログラマーをエンパワメントすることを目指したイベントを開催しています。それらは素晴らしいし素敵なことなのだけど、なんというか「背負わせてしまっている」と感じたのです。彼女は、他のことでも活躍できたのかもしれない。その才能や体力や行動力をつかって、もっと別の分野のアプリ開発やイベント企画もできるだろうに、選んだ業界の女性の立場が十分ではないために開拓者とならざるをえないのだとしたら……、と。こんなことを勝手に考えるのは、とても失礼なことだと思います。もしも、ご本人にそんな話をしたら、「わたしの感情や関心を勝手に決めつけないでください」と言われることでしょう。
米津玄師さんの音楽ナタリーでのインタビュー記事の中に「神聖視するのも卑下するのも根っこは一緒な気がする」という言葉がありましたが、わたしがその方に感じた(感じてしまった)ことの自分自身への違和感は、つまりそういうことだったのかなと思いました。
うーん、やっぱりうまく書けませんね。書けていないように思います。ただ、この話はたぶん、信頼できる人との往復書簡という形式を取らなければ、できなかったと思います。もうすこし言葉や思考を進めて、あらためて話せるといいのですが。
『虎に翼』に登場するいろいろな人物たちは、それぞれに自分の闘いを生きていて、自分は同じような立場にいなくても物語を通して想像し思考することができます。とにかく、考えることを続けていく。優れた物語は、その助けにもなるのだなと思います。
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そうだ、結婚記念日なのでしたね。おめでとうございます! うた子さんたちは記念日にはちゃんとお祝いしてそうなイメージがあります。どんなふうに過ごされるのでしょう。
わたしは記念日を意識することがどうも苦手で、ちゃんとお祝いをしたことがほとんどありません。よし、ちゃんとしよう!と妻に「今年はなんかお祝いしようか」と声を掛けたところ「その日は飲み会が入ってるから無理だよ」と言われてしまいました。長年ちゃんとしていなかったのに、急に取り繕ってもダメでしたね。わたしたちも20年近い付き合いになり、いろいろと手を抜いてしまっている部分があるよなあと反省しました。
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写真は、数日前に公園で見かけた藤棚です。Blueskyの「青空がある」フィードに載るように、「藤棚の余白を覆うblue sky」と付けて投稿してみました。「ブルースカイ」が5音なので、初句と中七を持ってくれば気軽にBluesky俳句ができそうですね。またいい感じの青空に出会えたらつくってみようかな。
それでは、また。