10月18日土曜日、パシフィコ横浜。『キミとアイドルプリキュア♪LIVE2025You&I=We're IDOL PRECURE』昼夜2公演に参加した。会場のざわめきの中、心の奥でずっと波が立っていた。熱気の中にいても、どこか現実味がない。コンテンツとして大好きだし、ライブそれ自体も楽しみだったが、それ以上にこの舞台に髙橋ミナミさんが立つということがなんだか夢心地だった。映画の舞台挨拶でもキュアウインクを背負って立つ姿を拝見したけれど、今回はキュアウインクとしてステージに立つ。
そして彼女が出てきた瞬間、ステージの上にいたのは声優としての髙橋ミナミさんであり、かつキャラクターとしてのキュアウインクでもあった。その境界は存在しつつも曖昧になった。演技とは嘘を信じさせることであるとすれば、そこに現れたのは2つの重なり合う現実(reality)である。つまり、彼女が生きる現実と、キャラクターが生きる現実、双方が確かに同時に存在していると、一瞬にして信じさせられたのだった。あのステージの上で、彼女はこれまで追いかけてきたプリキュアという夢と、その「運命のプリキュア」の息吹を、ひとつにして存在していた。そんな光景を目の当たりにして、涙せずにはいられなかった。以前声優オーディションのイベントに行った際に、声によるこの信頼性の構築に身体がいかに関わるのかを感じたのだが、やはりその所作一つひとつにキャラクターが乗っかっていた。声に身体が宿り、声が身体を超えて立ち上がっていたのだった。
夜公演の最後のMCにて、髙橋さんはこう述べた(記憶より抜粋)。
今日この景色を見るために、今までやってきたんだろうなあと感じる一日でした。ここまですごくすごく長い道のりだったかなと思うけど、運命のプリキュアのキュアウインクに出会えたことが何より幸せだなって。「出会えてうれしい たのしい」って。
この言葉からは、キミプリが決まってから、始まってからの時間だけでなく、彼女がプリキュアを目指してからの10年間も含んでいる(https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1757043232)という、長年の想いと努力の一端を垣間見た。「運命のプリキュア」。出演が決まった時からこれまでのキミプリのインタビューで何度も口にしている言葉。
ただひとつ確かな事はやっと運命のプリキュアに出会えたって事!!
2025.01.05「キャストコメント」 (https://www.toei-anim.co.jp/tv/precure/news/2025010501.php)
今回のライブでは、着ぐるみのプリキュアたちもキャストと一緒にステージに立った。キュアウインクのソロ曲「まばたきの五線譜」では、センターで踊るプリキュアとシンクロしつつ優しい眼差しを向けていた。その目線の奥に何を見ていたのだろうか。いちファンからは想像すらつかないけれど、この曲の歌詞はまるで髙橋さんのこれまでの歩みに寄り添うように聞こえ、その長い道のりが一つの声に結晶していた。主人公・咲良うたから蒼風ななへ渡された勇気が、ななをプリキュアへと至らせた。そんなキュアウインクから勇気のバトンを受け取った彼女からの声、メロディー。
きらめきへ踏み出そう 受け取った勇気つないで
まばたきの数だけ 五線譜に焼きつけていく
今日の優しい音 ずっと忘れないよ
出会えたキミへと奏でたい
いつまでも鳴り止まないメロディー
昼公演は大人は声出し禁止で、子どもたちからの声援が響いていた。純粋で憧れに満ちたその声は、出演者にまっすぐ届いたことだろう。コーレスをするキャストたちの表情は感慨にひたるような笑顔で溢れていた。ステージの存在が、光や憧れとなることをこんなにも感じたことはない。主役の松岡美里さんが、昼公演のMCで「プリキュアってなりたいと思ったらなれるんだ!」と力強く述べていたのが印象的だったが、まさに髙橋さんもその思いを実現した人であり、そしてプリキュアに憧れる子どもたちもまたそれができると思わせてくれるパワーがあった。つまり、今度はプリキュアから勇気をもらったキャストたち、髙橋さんから、光を渡すということ。勇気のバトンは繋がれていく。
さらに、その子どもたちの声や笑顔が今度はステージ上の彼女たちの元気や勇気へと変化していくのだろう。今回、フルでの披露が初となった「キミとシンガリボン」という曲の1番Aメロではこんな歌詞がある。
双方向性に行き交うキラキラは
毎日の(キラッキラン)
素敵・無敵・エナジー
これまで私は、演者の言う「ファンの応援が力になる」という言葉に対して、クリシェだろうと、どこか信じきれないでいた。しかし、今回のライブでこの存在や声のもつ「双方向性」を初めて身をもって実感したように思う。キラキラのバトンは繋がれ、往還する。何よりここで注目したいのは、この歌詞の前半部分はキュアウインクのパートであることである。「受け取った勇気 つないで」と歌う彼女こそが、この「双方向性」を最も説得力を持って体現しているのだ。そして、その声を担当する髙橋さんもまたそうである。このバトンの往還が、その中で想いを増幅し未来へと繋がっていってほしいと、強く願わずにはいられなかった。キミプリの映画でもキュアアイドルの言葉にあったように、「キミが覚えていてくれる限り、私たちは永遠だよ」と。
私はこの日確かに受け取ったバトンをどこかに手渡すことはできるのだろうか。長い間、私は「推し」という概念に葛藤してきたのだが、それの一つには「推す」行為において、他者への規範的、欲望的な要求が存在し、それによって避けがたい影響を及ぼしてしまうことへの不安や恐怖というものがあった。しかし、その面も裏返せば、今回のライブのように、希望や光に満ちたバトンを手渡せるのではないのか。ずっと恐れていたものだったけれど、ようやく何か光が差した予感がしている。想いのバトンは確かに受け取られ、次の誰かへ渡すことができるのだ。私は長年ファンをしてきてようやく、初めて心からの想いを手紙にしたためることができそうな気がする。