麻布台ヒルズギャラリーで開催中の「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」のチケットをキャンペーンでもらっていたのだが、会期が今月末までだったことを失念していて、慌てて行ってきた。
オラファー・エリアソンのインスタレーションは、昨年の「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」で展示されていたのを見て、好きなものの一つだった。《星くずの素粒子》は見る場所や回転する球体の位置によって様々な形を見せ、空間に反射光が散りばめられることで鑑賞者もその世界の一部に取り込まれる。
今回の展示でも、関連する吊り彫刻《蛍の生物圏(マグマの流星)》があった。エリアソンのHPを見てみると、(ガラスの球体は同じ?)色の違うものが2つあるようで、それぞれoceaningとtwilightingと副題が付されているのだが、これはmagma falling starでよくわからない。でも見た目にも綺麗だし、光と影、位置によって同じ様相を見せないというのは、先日観た『PERFECT DAYS』での木漏れ日とつながっているなと感じた。
他にも、太古の氷河の小片が溶けるに任せてキャンバス上の顔料を動かし制作された水彩画、亜鉛廃棄物を再生利用した彫刻、ホースから撒かれる水にストロボの光を当てて浮かび上がる瞬間のインスタレーション、など面白い作品が並んでいた。
しかし、展示点数はかなり少なく物足りなかった。しかもこれで一般1,800円もするらしく厳しい値段設定。タダで行けてラッキーだった。
エリアソンは自然および環境問題に関心が強いらしく、そうした関心に基づいて制作された諸作品によって、展示された空間と人、そして意識がそれらに巻き込まれていくというのは良い体験だった。
それにしても麻布台ヒルズという施設が去年できたばかりのくせに高級感だけは強く、導線がわかりにくく大変不便で、バリアフリーでもなく、いわゆる都市開発という感じの場所だった。再生可能エネルギーを使用しているとか、「緑に囲まれ自然と調和した環境」というテーマとかがエリアソンと共鳴しているとして企画されているのだろうが、こうした人間中心の都市開発とは全く共鳴しているようには思えない。彼の諸作品はむしろ自然に比重があり、そこに人が関わっている。この力点の違いは正反対の極にあるのではないだろうか。