サイバネティック機能不全モデルに興味を持ったものの,いまだに特徴と特徴的適応の違いを理解しきれていない。このモデルのルーツにあたるサイバネティック・ビッグファイブ理論(CB5T)の中で両者の区別と概念整理がされていたので,まずはここだけまとめてみる。
特性と特徴的適応の区別および測定
特性と特徴的適応の違い
CB5Tでは特性と特徴的適応を区別する。
特性:普遍的なサイバネティック機構のパラメータの反映
特徴的適応:個人の特定の生活状況に関連して定義される目標,解釈,および戦略
目標:大まかに言えば望ましい将来の状態を表すものであり,より厳密にはサイバネティクスの基準値として定義される。ほとんどの目標はさまざまな部分目標の達成を通じて達成されなければならない。
解釈:自己を含む世界の現状を表すものであり,事実的な情報と評価的な情報の両方を含む。解釈における評価的あるいは感情的な要素は,必然的に目標との関係の中で位置づけられる。
戦略:現在の状態を望ましい将来の状態へと変革しようと試みるために用いられる計画,行動,スキル,および自動化された手順。目標は階層構造を持つため,最も単純な行動以外のすべての戦略には,入れ子になった一連の目標が含まれることになる。
多くの特性は正常に機能するすべての人間に見られるが,その程度はさまざまな動機(例:報酬を追求する,罰を回避する,課題を完了する)と関連している。対照的に,個人の特徴的適応に関連する動機(例:論文を書きたい,職場で昇進したい)は多くの人に見られるかもしれないが,決してすべての人に存在するわけではなく,たった一人にしか見られない場合もある。
特徴的適応は特定の生活環境に対する反応であるが,特性は必ずしもそうである必要はない。とはいえ特性も生活環境への適応をある程度示しており,その遺伝的基盤は堅固であるものの,環境の影響によって特性のレベルが変化し得る。特性の変化はすでに進化したメカニズムのパラメータの変化であるのに対し,特徴的適応の変化は記憶への新たな追加あるいは記憶への過去の追加内容の再構成である。CB5Tにおいて,特性は特徴的適応に対する遺伝的影響を媒介するため,特徴的適応の遺伝率は特性よりも低くなると予想される。
特徴的適応の判断根拠
具体的に何が「特徴的適応」に該当するのか。単純な答えとしては,十分な持続期間がある限り,特性ではないあらゆる心理的個人差変数が特徴的適応である。
たとえば,自己概念のほとんどの側面は特定の文化的および個人的な生活状況に対する個人の反応を反映しているため,明らかに特徴的適応である。例として,自己定義的な人生の語り(Self-defining life narratives)は,個人の多くの目標,解釈,戦略に対する意識的なメタ表象を提供する一種の解釈である。対照的に,自尊心は,あらゆる人間文化において個人が行う自己の良し悪しに関する包括的な評価を反映しているため,特性と見なされるべきである。自尊心に対する環境的影響は文化によって異なる可能性が高いが,全体的な自尊心は神経症的傾向の一側面として実証的に特性階層に適合する。そのため,経験的・統計的に特性の階層に位置づけられており,これは,否定的な感情を経験しやすい傾向が,あらゆる文化において自己評価に対する最も強力な影響要因の一つであることを示唆している。
価値観の場合,文化的に普遍的な現象を指す場合は特性となり,文化的または個人特有の現象を指す場合は特徴的適応となる。さらに,個人の価値観の明示的な順位付けは,たとえその順位に含まれる価値観の多くが文化的に普遍的な現象を指すものであったとしても,どの価値観がリストに含まれ,どのような順序で並べられるかは多少なりとも特異的であるため,特徴的適応を構成することになる。そのような順位付けは個人の自己概念の一部と見なすことができる。
防衛機制やコーピングスタイルの場合,問題となっている機制やスタイルが(必ずしも同程度の強さではないにせよ)あらゆる文化に見られるのであれば,それはすべての人間に共通する機制の働きに由来する特性であると見なすべきである。例として,人々が一般的に問題焦点型対処を好む傾向の度合いは特性と見なされるべきであり,感情焦点型や意味焦点型などの一般的傾向も特性と見なされるべきである。対照的に,ある個人が特定のストレス要因(例:要求の厳しい上司)に対して習慣的にどのように対処しているかを検討する場合,その具体的な戦略(例:頻繁に病欠する)はその説明に当該個人の特定の文化的状況を参照する必要があるため,特徴的適応である。
特性と特徴的適応の具体例
議論好きなのは特性,法廷弁護士であることは特徴的適応
友人とふざけ合うのが好きなのは特性,学生団体に所属していることは特徴的適応
一般的に予防志向であるのは特性,家を出るたびにコンロを確認するのは特徴的適応
一般的に回避的な対処スタイルを持つのは特性,特定の知人を習慣的に避けるのは特徴的適応
一般的に不安定な愛着スタイルを持つことは特性,現在の恋愛相手に対して不安定な愛着を抱くことは特徴的適応
正直さを重視することは特性,正直さを自身の最高の価値観として明示的に主張することは特徴的適応
質問紙で特性と特徴的適応を分化できるか
ある概念が「特性」なのか「適応的特徴」なのかを判断するのが複雑になりがちな理由の一部は測定方法に関係している。質問紙による評価における問題の一つは,特性質問紙の一部の項目が文化的に特有な適応を記述している点である。
多くのパーソナリティ項目は単に文化的に普遍的な特性を記述しているものの,一部の項目は文化的に特有な行動や経験のパターンを指している。しかし,たとえ特性尺度の全項目が異なる特徴的適応を記述していたとしても,それらの項目が記述する特徴的適応がすべて主に同一の特性と関連していれば,その尺度の総得点は有効な特性の測定値となり得る。これは集約の原理を反映している。すなわち,総得点は特定の適応行動そのものを反映するのではなく,それらの適応行動すべてが関連する特性を反映することになる。
特徴的適応行動を用いて特性を評価できる可能性を考えると,質問紙で特徴的適応行動を評価することはできるのか? その答えは間違いなく「できる」である。必要なのは,文化的・個人的な特異性をすべて含めた特定の適応に項目を集中させることである。たとえば,特定の個人との単一の関係に関連してすべての項目を構成する愛着に関する質問紙は,その特徴的適応が典型的な愛着スタイルを反映する特性によって影響を受けているかどうかにかかわらず,特徴的適応を有効に評価している。