第22週「女房に惚れてお家繁盛?」
亭主が女房に惚れ込んでいると、外で浮気や道楽もせず家庭円満になるということ
今週は星家の問題と後輩・秋山の妊娠を通して女性の働き方問題が描かれた。女性の働き方問題、というか、働く女性を守る気がない社会問題、ですよね。
さてまずは星家の問題。う〜ん…なかなかむずかしかったですね。
やっぱり違う家族が一緒に住むっていろいろあるよなぁ。というかそもそも体温の低そうな星家に、明らかに”陽”の気が強すぎる寅子親子の参入、最初からうまくいくはずもないよね…
母親の照子が亡くなり、不在がちの父は心を閉ざしていて、朋一とのどかは寂しくても、うちの家族はそういうものだとあきらめて「いい子」でいようとしてきたんだろう。そんな父が新しい家族、寅子と優未の前ではニコニコと笑って違う顔を見せる。百合さんも、そしていつのまにか朋一まで。のどかにしてみたらたまったものじゃないと思う。私の家なのに、私の家族なのに。
航一は寅子が来てくれたら家族関係も良くなるんじゃないかと思ってたみたいだけど気は確かですか???丸投げにもほどがあるが??? まあね、一緒に暮らすことで問題点がクリアになったり、話し合ういいきっかけにはなったのかもしれないけども。今週はとにかく「お前がしっかりしろよ星航一!!!」とばかり思ってましたね😂 解決まで寅子に頼らなかったのはよかったです。
最後はのどかだけじゃなく百合さんも言いたいことを言えてよかった。誰だって、何歳になったって、自分を見てほしい。そしてときには褒めてほしい。やってもらって当たり前、そんな家庭内ケアの透明化問題をこのドラマは何度も描く。
直明に頼まれて教え子の中学生たちに裁判官の仕事を説明する場を設けた寅子。ある民事事件、女性車掌が巻き込まれたトラブルについて説明していると、ひとりの男子中学生から、「好きで働いてるんでしょ?女は。男は絶対働いて家族を養わなきゃいけないけど女は違う。自分で働くことを選んだのに何で文句を言うの?」と問われ、困惑する。しかしそこですかさず「わかる!」とその中学生に同調してみせたのが小橋だった。
できる男と比べられるのもいやなのにさらにできる女とも比べられる! 頑張らなくてもいいのに頑張る女たちに無性に腹が立つ。
学生時代の小橋を思い出す。寅子たちをバカにしてからかって、なんとか優位に立とうとしていた。どうせ嫁に行くくせに、遊びに来てるんだろ。俺達とは違う。そんなふうに思ってただろう。
おまえの想像している通りその苦しさはずっと続くし、おまえはこの先の人生、ずっとできる奴らと比べられ続ける。平等ってのは俺達みたいなやつにとってたしかに損なところもたくさんある。
男性の生きづらさ。職業、年収、肩書、結婚してるかどうか。男性もまた社会からのジャッジに、もしくはジャッジされているという意識に、自己評価に、苦しめられている。
だけどその苛立ちを向けるとき、おまえ弱そうな相手を選んでないか?
本当にそれ、なんですよね。典型的な弱者男性問題にぐいと差し込む一言。と同時に、小橋は自分の劣等感に向き合い、ちゃんとここまで言語化できるようになったんだなぁ〜と妙に胸がいっぱいになってしまった。小橋はここまでぜんぜんプライベートの情報もないし、仕事の外ではどんな人生を送っているのかわからないけど、ちゃんと成長してるし、まわりからもなんだかんだ信頼されてるんじゃないかなって思った。
ま、とはいえ?いうても小橋は「男性」であり「判事」じゃん???めちゃめちゃ恵まれた立場ですが???と思ってたらすぐに次のシーン、寅子と二人になった秋山がこう吐露する。「平等なわけない」「男と女のつらさを一括りにされたくない」と。そして妊娠したことを打ち明ける。「なんで今」と悔しそうに。
当時認められていたのは出産の前後6週間ずつの休業申請だけ。なんとか仕事できる程度のつわりで済んだとして、入院や安静などの必要がなく妊娠が継続できたとして、元気に生まれてくれたとして、就業中に預かってくれる人や場所が見つかったとしても、夜はまだまだ何度も起きなきゃいけないし、赤ちゃんによっては寝付きが悪くて親は寝不足になる。赤ちゃんが問題なく粉ミルク飲める子だったとしても、母乳がたくさん出る体質の人だったら貧血気味にもなる。なんというか、妊娠も出産も赤ちゃんも、人間がコントロールできない領域なんで社会システムと相性が悪すぎるんだよねぇ…
寅子は自身のトラウマを思い出す。泣きながら六法全書を行李にしまい込んだ日のことを。
その週の感想を読み返したら本当にしんどかった。初めての妊娠という不安と、女性法曹はもう自分しかいないという切実な責任を背負って、必死にあがいているときに、梯子を外された。他でもない、穂高教授に。
だから寅子は秋山にきっぱりとこう言う。「あなたの居場所は必ず残すから」と。あのとき自分が言ってほしかった言葉を。
そして寅子は要望書を作成し、桂場と対峙する。「時期尚早」と一蹴しようとする桂場に寅子は食らいつく。
生き残らなければ同じ場所に立てない、それは果たして平等と言えるのでしょうか。今明らかに目の前にある問題を次の世代にそのまま先送りにしていくのが苦しいんです。
ここで「平等」というワードで桂場に切り込むのが、さすが寅子!相手の勘所をわかってる。ふたりが出会った第1週、桂場は大学で授業をするえらい先生で、寅子はお下げ髪のいち女学生だったことを思い出す。あのころよりもっとえらくなった桂場相手にぐいぐい交渉できる寅子の成長に泣ける…😭
寅子の交渉は不発に終わったけど、桂場も桂場で、かつて妊娠中の寅子が倒れた日のことを思い出していた。出産に専念するようアドバイスして寅子にブチギレられた穂高に「先生だけは彼女を信じるべきだったんじゃないですかね」と失望を露わにしてしまった日のこと。あの日から何年経っただろう。あの日も「時期尚早」と言った。「またそれか」ため息交じりの寅子の呆れたような言葉。桂場は、もはや廊下で立ち聞きする傍観者でなく、自分が穂高の立場に立っていることを自覚しただろう。
一方の寅子は桂場と喧嘩することもなく、淡々とやるべき道を探す。最高裁事務総局に提出するための意見書と署名を集め取りまとめること。このあたり、敗戦直後の民法改正時に意見書を出した婦人団体と関わった経験が活きているように思う。
私たちが次にするべきは道の開拓ではなく舗装です。この道を以下に通りやすく平坦で快適なものにするかだと思うんです
寅子の呼びかけに、竹もとに集まった面々がそれぞれ集めた署名を手渡す。その数の多さに秋山は感極まり、寅子はにっこりと笑う。
寅子は、誰にも救われなかった過去の自分を救いに行くんだと思った。当時はいなかった仲間や後輩、もしくはいないものと勝手に思って手放して傷つけてしまったよね。寅子はもうひとりじゃなかった。
若い世代に同じ苦労を背負わせたくない。そんな動機による行動はめちゃめちゃフェミニズムど真ん中だな〜と思うし、たぶん脚本の吉田さんがそういうメンタリティなんだろうなと思う。
過去の感想にも貼ったリンクですが再度。
先陣を切るフュリオサにはなれなくても、後ろに続く世代が傷つかないように、自分が盾になって強い人たちに立ち向かっていけたら。自分が年齢を重ねるにつれて、そう強く思うようになりました。それによって自分より若い人たちが傷つかなくてすむなら、「面倒くさい女」と思われることはどうってことないです。
このインタビューほんと大好きです🫶
とはいえ、男女雇用機会均等法が施行されるのが1986年、育児休業法は1992年!先の長さにうんざりしてしまうけれど、寅子たちだけじゃなく、いろんな業界の女性たちが声を上げ続けたんだろうなと思う。長い長い闘いの一端だけでもこのドラマで見ることができてよかった!
第21週シナリオふりかえり
けっこう削られたセリフが多くてひとつひとつ指摘するのは諦めますがいっこだけ!
ヒャンちゃんが山田轟事務所を訪ねてくるシーンがシナリオにはある〜😭泣きながら抱き合う梅子さんとヒャンちゃん、よねさんもその輪に入って…というところ想像しただけで泣けちゃう😭😭 撮影済みでしたらDC版に入れてください😭😭😭
過去の感想は「虎に翼ふりかえり」のタグに並んでます↓