数分でロープウェイは吉野山駅に到着した。ゴンドラを降りると、晴れていて日差しは眩しかったけれど、空気は比較的ひんやりとしていた。この地でさえ、例えば電車の乗り換えで待っていた橿原神宮前駅のあたりと比べてもかなり涼しいのに、今回は行く予定は無いが奥千本はもう寒いくらいなのだろうかと想像した。
爽やかな秋空の下、しばらく歩くと金峯山寺仁王門(二王門)が見えてきた。吉野山駅から土産物店や飲食店が並ぶ細い県道の突き当たりにそびえ立つ仁王門は、門自体もまるで一体の仁王像のようでとても圧倒された。しばらく門の前の階段の下に佇み門を見上げていたのだが、何故かその時は写真を撮ろうという気にはならなかった。私の横では大きなカメラを抱えた人が何度もシャッターを切っていた。
仁王門を撮影していた人が去った後、私もようやく階段を上がり門内に入った。門内に安置されている約5mあるという金剛力士像をじっくり目に焼き付けた。なお余談だが、現在、金峯山寺仁王門は解体大修理中で、完成予定は令和10年度である。Google Mapのストリートビューで近年の仁王門を見ると、階段以外は大きな囲いに覆われた状態になっていた。金剛力士像も現在吉野を離れ、修理完了まで奈良国立博物館のなら仏像館で特別公開されている。
そして、目的であった金剛蔵王大権現が安置されている蔵王堂(本堂)に到着した。蔵王堂を目の前にした時もまた、少し離れた場所で立ち止まり、その造形に思わず見入っていた。蔵王堂にも、想像以上に多くの人が訪れていた。