スタートアップが事業計画を盛らないために出来ること

Watt_inoue
·
公開:2024/3/15

スタートアップ関係者の多くは、スタートアップの事業計画が盛られすぎて、ビジネスの原形が分からなくなった計画書を何度も見てきたはずです。ここは僕も立場上、汗をかく話ばかりですが、自分の事業計画の考えを書くことは、CEOの重要なコミュニケーションと思うので、自分を棚に置きつつ思うままに書いていこう。

事業計画を書く目的

事業計画を書く目的は、ビジョンを細分化し、ビジョン達成のための戦略と施策があり、施策を実行するためにどれぐらいの投下資本とリターンがあると経営陣が考えているのかを関係者と共有するためにあります。

世の中を変えるビジョンを掲げるならば、どの程度サービスが使われることで世の中を変わるか考えているかを数値を元に相手に伝えることもできます。具体的に何人が使えば、世界が変わったと思えるのか。それは、どのタイミングで何をやって、どんなスピード感で達成しようと考えているのかを相手に伝えるのは事業をともに一緒にする人との地についた議論をするための基点と考えます。

事業計画は強い成長を求めるスタートアップだけではなく、成長を目的にしない企業でも定量化された数値をもとにコミュニケーションをすることは大事です。例えばひとつひとつの製品の品質がキープできる数量を規定し、規模を求めない、長期的に循環するサービス作りは、大切な考えで、人が使用する分や、人が価値を感じる分だけを生産するのは、これからの時代にフィットした考えに思います。ただ、それでも働くスタッフと成長速度を事業計画をベースに共有するのは、大切なコミュニケーションに思います(自分が働く立場として想像すると、成長を求めないのは共感するとして、それで会社は社会にどのような価値を提供するのか。どんな未来を目指すのか、それによりひとりひとりのキャリアはどう考えるかは、自分なら知りたいと思いますし、そういったコミュニケーションが取れる会社で働きたいと考えます。それは事業計画が会ったほうが建設的なコミュニケーションが取れます)

数値の作り方

スタートアップの数値の作り方を書いていこう。例えばシード期で、サービスリリース後半年で100万円の売上を作る事業計画があったとすると、その中で重要なことは、確かなことと不確かなこと(検証していくこと)を切り分けることにあると考えています。シリーズA以降はコミットが求められますが、シードである、コミットよりも検証の数こそかなと考えます。

初期フェーズのスタートアップであれば、売上を獲得するために、何がKPIでどのような手段で、どのようなリソースで、どのような人員で計画を達成しようと考えているのか?をまとめることになります。

そこである程度実証出来ている部分を切り分けて書きます。僕らなら、最初のフェーズはテレアポの受電後のアポ率をKPIにして仮説検証を回したわけなんだけども、それと並行して同業他社で働く人にヒアリングをします(調べ方はビザスクとツテ!)競合の受電後のアポ率が10%〜15%と聞いたとすると、そこで僕らのアポ率のKPI目標を30%に設定してチャレンジし、ここの検証はすぐに回せるので、検証を回してみる。ここを複数人でやってみて、実証された数値として書いても良いなと思えば、実証数値を入れることで事業計画の説得力は高まります。そして不確実な部分は不確実な部分として切り出しておく。

ここで事業計画で採用と戦略の見える化もしています。エンジニアの採用のコスト感は過去の実績ですが、エンジニアの採用とは採用により、どのようにサービスが進化するのか?という説明もあわせてしていきます。それらにより客単価向上の蓋然性が高まり、事業計画をベースにしたビジョン達成についてコミュニケーションが可能となります。エンジニアの採用とは、プロダクトの機能実装のリリース数(もしくはライン)が増えることとイコールもしくは、イコールに近づけることは数値計画をもとに、メンバー全員で共有したいところです。

事業計画を外すこと

スタートアップのシード期で事業計画を外すのはあるとしても、先程書いたように大事なことは「確実性」と「完全な不確実性」を分けて、PMFに向けての検証が進んでいるのか?を全体で共有することが大切です。何が実証できて、何が実証できなかったのか?を数値をもとに振り返る必要があります。

僕らはこんな感じの事業計画のシートですが、

KPIを左上に切り出して、それらのKPIがどのような仮説をもとにしているのか?まとめています。そして下に実証した数値(セールスやCPA)を記載しています。あと資本政策のイメージ、市場規模をどのように算出しているのか?(どの市場を、どの順番にターゲットにしているの?)も同じスプレッドシートにまとめています。

数値のプロが見たらツッコミどころ満載とは思いますが、精美な数値よりも、メンバーやステークホルダーと相互コミュニケーションを取るために、自分の考えをベースに数値化するのは大事と考えています。まあ自分の解像度のレベルをオープンにする意味もあります。わはは(乾)。

数値を盛らないために

事業計画とセットになるのは、戦略です。戦略のドキュメントは別途作成しており、テキストベースだと戦略の意味が伝わりにくいと思うので、loomを使いドキュメント+動画で撮影しています。どの順番でどこにアタックするのか?というのを自分の声で説明します。

この戦略と事業計画の数値の資料をあわせて作っていくと、自分が動画で話していて、このKPI無茶だなとか、根拠が足りないなとか、信じきれないなという部分が出てきます。逆に無茶でも信じきれれば達成できるってなもんです。自分の中で説得性がないなと思ったら計画を修正します。自分で自分を説得できるなら、その計画はある程度の盛りでも良いと考えます。説得できないなら、そのドメイン理解、サービス理解、お客さん理解が足りていないとうことです。「まだあわてるような時間じゃない」ということで、解像度をせっせと上げましょう。

盛りを減らすことをまとめる以下です。

・盛りは不確実な部分でしか起こりませんので、盛りになる箇所をKPIとして切り出して、盛っている数値を可視化する。それらは同業他社との比較である程度分かる。

・経営者自身が盛りと感じるか、いけると感じるかは、事業計画と戦略を作り、それらを動画で通じて話してみることで、自分の納得感が作れるか。

の2点から振り返ると良いかなと思います。

事業計画が全てじゃない。

ここまで書いていますが、改めて事業計画が全てではありません。シード期であれば、KPIはあくまで経営陣の考えをオープンにするための定量的な指標です。シード期は、ひとりのお客さんの行動をつぶさに見ることを最上段に起きたいと考えています。そしてサービスで何を目指しているのかが1番大事です。以前ブログで書きましたが、KPIを企業の大上段に置くと、みんなKPIの達成だけを考えています。KPIにこだわるのは、まだはやい!ってな心意気です。

ただビジネスの哲学だけだとコミュニケーションが空中戦となり、話が積み重なっていきません。蓋然性のある数値づくりをすることで、哲学が説得力を持ち、哲学とロジックの両輪がしっかりあることでチームはワークすると思いますし、先にそれを経営陣ファーストでチームに提出するのは有用な施策に思います。じわじわと数値の確実性が上がっていくのも、良いものであります。

というわけで、自分への戒め100%の記事でしたが、ビジョンを語るからには、数値を使ってコミュニケーション必須!という背水の陣をお届け(汗祭り)

@igoue
C向けのサービスをよく作ります。誰でも自分の居場所が見つかるサービスを作っています(好き:みてね、タイミー)Watt_ceo@inoue