シャドーワークのすすめ
「シャドーワーク」とは、無意識にある問題を意識化して解決することです。「シャドー」とは、本人の内面世界にあって本人は認めたくない・感じたくないものの総称です。内奥に押し込められ蓋をされています。本人によって否定されており、生きられなかった側面で、まさしく「影(シャドー)」。ユング派の皆さまにはおなじみの概念ですね。
わたしは日頃、「(広義の)トラウマを解除しましょー!」と言っていますが、これは「シャドーワークしましょー!」と同義です。
シャドーワークは、まずは表面の問題に着目します。表面の問題はすぐにわかりますが、その根本にある問題は掘り下げてみないとわかりません。
表面の問題とは、「原因不明の苦しさ・症状」です。その「原因不明の苦しさ・症状」に注目し、それがなぜ生じているのか掘り下げて原因を探ると意志して、「原因不明の苦しさ・症状」を分析します。すると根本の問題が表出します。根本の問題を解決すると、「原因不明の苦しさ・症状」が解消します。
これが王道でしょうか。シャドーワーク専門のカウンセラーにでも頼るのが一番手っ取り早いのでしょうが、自分の問題であれば自分でできます。
というか、この手の問題は基本的に自分で解決するものです。腕の良いカウンセラーでも、自分を救う意思のない患者は救えません。自分を救うと意志したとき、カウンセラーは必ずしも必要な存在ではなくなります。
スピパイはわたしにすげぇ寄りかかって内面をブッ散らかして自爆していました。わたしも爆発に巻き込まれました。
巻き込まれたのは、わたしが職場の人間関係を平和に保ちたいという欲目からスピパイを拒絶できずにテキトーに甘やかしてしまったためで、まあ自分のせいなのですが、勘弁しろよとは思いました。
他者のシャドーワークを手伝いたい場合は、プロでもない限りはとりあえずおやめください。素人はあまり触らないほうがよい分野です。どうしてもやりたい場合は、自分のシャドーワークをある程度終わらせて、自分の内面をクリアにしてからにしましょう。
なぜ他者に手を出したいのか。他者を利用して自分の価値を感じようとしていませんか。なぜ他者を使ってまで自分の価値を感じたいのか。まずはそれを掘り下げましょう。掘り下げまくったあかつきには、他者に手を出したいとは思わなくなっている人がほとんどではないかと思います。
こういう人たちが、巷のスピ商売のカモになっているような印象を受けています。レイキの伝授を受けてあなたもヒーラーに、だとか、即席で占い師になってあなたも人助けで活躍、だとか、その手のビジネスすごいよね。カモの皆さんに必要なのは、似非スピではなく自己分析やカウンセリングでしょう。
そして、もし手を出すのだとしたら、素人の場合は、超絶軽い問題にのみ触れるのがよいと思います。ただし、その問題の根本が超軽いか否かは掘り下げてみないとわからないことが多いので、どちらにせよ手を出さないのが安牌。
職場のおねえさんの逆流性食道炎が対話と内省により治った話
職場には結構ガリガリ仕事をしたい人が数人所属していて、件のおねえさん(オネさん)もそういうタイプでした。
このオネさんは、基本的には善良なのですが、他者への要求が結構強いタイプで、「誰それのこういうところをもう少しこうしたらもっと良くなるのに」という文句がとても多かったのです。
この人、いつも苛立っているというわけでもなく、それなりに楽しそうにしていますが、不満は結構あるっぽい。生きづらそうな感じもなく、テレビやスマホに浸かって様々が麻痺した現代人らしい暮らしを送っている様子です。
まあべつに何でもよいのだけど、その手の文句はあまり聞きたくない。
実際、よく気が付いて細かい仕事をもりもりこなしてくれる人なのです。会社的にはありがたい存在ではありますが、現場において、こういうのは気付いたもん負けみたいなところがありますよね。掃除みたいに。我慢できないほうがそれをやる、といった具合です。そういうタチで、自分(とあと数人)だけがちゃんと仕事をしている、みたいに思いがちな人でした。
周囲を気遣い、他者の困りごとに介入してくれるその性質ゆえに、物言いをつける事で職場の浄化には結構な貢献をしてくれてはいるのですが、上層部は物言いに対する策を取れない・取らないので、オネさんは「もう言うのやめようかな、言っても何も変わらない」などと言いつつも言うのをやめられないというどーしよーもない循環をお楽しみでした。
こういうのは、口頭では嫌がりながらもそれに中毒している場合が散見されます。疾病利得と似た構図です。何を言っても仕方がないと落胆を味わいつつも、文句を言うのが楽しいのでやめられない。上層部が対策を取って職場の浄化が進むと、オネさんは枯死するかもしれません。苛立ちが活力の元である場合もあるのですね。
経験上、この手の感情を燃料とするのはあまり良くありません。ワンカップ大関で手っ取り早く酩酊しようとするようなもので、質が良くないです。きっかけはそれでもいいかもしれませんが(良くない場合もある)、燃料は早めに切り替えるのが吉です。理由は割愛。
そうやって、めちゃくちゃ分かりやすく表面には出さずとも、他者に対する期待値が結構高い、「誰目線??神の目線なの??」みたいな……言い過ぎかな、まあそんな感じのオネさんだったのですが、ある時、凡ミスから足首を骨折してしまいました。
結構な大怪我で、2カ月入院して手術、プレートで固定して、それでも当然歩きにくく、少し歩いたらもうダメ、といった具合で、動きまわることが多いこの職場において、それなりの役立たずになってしまいました。できる仕事に制限が掛かりまくりです。
本人もその状況を良しとせず、復帰して無理をしてまた休職する、また復帰して無理してしばらく休む、ということがありました。それくらい、仕事を全うしたいという思いの強い人でした。立派だなー。
そんなことがあり、「無理をしない」ということをようやく覚えたオネさんは、申し訳なさそうに仕事をしていたのですが、そのうち、胸のつかえ、喉のつかえといった症状に悩まされるようになります。
オネさん、何かあったらすぐ服薬したり受診したりするタイプ。西洋医学に重きを置いています。あえて雑菌をもらいに行くわたしとは対照的です。
そういうオネさんなので、周りに相談して逆流性食道炎であるとアタリをつけ、市販薬の服用を始めました。でも治らない。
そして、病院にかかりました。病院では、とりあえず原因不明の逆流性食道炎ということで、それなりの薬を出してもらって服用を続けていました。でも治らない。
そんな折、「あーあ……私、どうしちゃったんだろう……」などとわたしに話しかけてきたので、真面目なわたしは真剣に対話しました。人格のクソと真面目は両立し得るのです。誰がクソ人格か。わたしです。
オネさんとは、前々から「誰それのこういうところをもう少しこうしたらもっと良くなるのに」という思考の癖ゆえに苛立つ件に関して相談というか雑談を振られていたため、わたしなりの考え方をおっぴろげてオネさんが自分に適用できるように話していました。柔軟で素直な方なので、わたしの話を聞いて様々を考察してくれて、その結果あまりイライラしなくなったなどと良い報告を受けていたため、教祖KDによる真剣対話が発生したのです。よいことであります。
イライラする件に関しては、何話したんだっけ。他者に対する期待値高すぎ問題を嚙み砕いて喋ったような気がします。誰かに何かをしてもらおうとするのが既に間違ってんじゃね?みたいな。あと、モチベーションとパフォーマンスは別でしょ、ってやつ。
わたしは、今の業務内容は基本的に相当楽だと思っているし、この業種はバーカでもクーズでもできると思っているし(この業種に対して熱意と誇りを持っている方ごめんなさい)、そもそもこの業種に懸ける思いややる気なんてほぼ皆無で、この業界の闇を見、この業種の人間の闇を眺めるのを軽い趣味としてしまったクソ人間ではありますが、給与の支払いがある以上は目の前の仕事をこなすのです。それでも、ニヤニヤ仕事をしているだけのわたしは(オネさんによると)周りからの評価が良いらしい。よく動いてくれる人の扱いだそうです。信じられない!!!
信じられない!!!のはオネさんも一緒でした。わたしのことを、すごくやる気と熱意のある人間だと思っていたらしいのです。そんな風に見えるだなんて得してる。
やる気と成果は別だし、発揮できる能力の個人差は結構えぐいので、「もっとこうしたらよいのに」という思いを掛けて期待したところで無理なものは無理なのです。努力できるか否かも能力のうち。常に80%の力を出せるのか、たまにホームラン打てるけれど日常30%しか発揮できないのか、その発揮の仕方も能力のうちです。
そんな話をしたような気がしますが、それを受けての真剣対話です。
◇
オネさん「全然治らないんだよね。あーあ、私、どうしちゃったんだろう……」
*喉でしたっけ?食道炎?
「そう、本当に詰まるんだよね。息しづらいっていうか、ぐーーーっと胸を押される感じでさあ」
*それいつからでしたっけ??
「〇日頃からなんだけど……」
*その頃って、オネさんがちょうど無理して足痛めて翌日から休んだ時でしたよね?
「ああそうねー、そうだわ」
*それってメンタルからくる症状じゃないですか?胸のつかえとか喉のつかえとか、わたしの見立てでは……ちょっと楽しくない話ですけど聞きます??
「うん聞く聞くー」
*オネさん、すごくちゃんと仕事しようとしてくれる人じゃないですか。いろんな困りごとに対応しようとしてくれてますよね。わたしもお世話になりましたよ、その節はありがとうございました。おかげさまで毎日楽しく勤務できてます。
「えー、ここで楽しく働いていますって人初めてだわww」
*なにその反応心外ですー!ww ここ社会の縮図って感じで面白くないですか?善人からクソまで皆さん色んな表情見せてくれて!おもしろー!って結構毎日思ってます!正義感バトルも勃発するし……!
「ひどい言い草!! でもそうだわねー」
*ね、だからね、わたしはオネさんには楽になって欲しいんです。軽くなって欲しい。だから、嫌な話でも聞く姿勢を持ってくれるのうれしいです。その前提でぜひ聞いてください。
「……『楽になってほしい』って初めて言われたわ……なんか嬉しいね」
*それは何より。
*オネさん、ちゃんと仕事を全うしようとするでしょう。「これは自分の仕事じゃないけれど、やっておいたら別の誰かが楽になるから」ってやるタイプですよね。
「うんそうね」
*で、誰かの仕事を見て、粗が見えるでしょう。
「うんそう」
*わたしならこうやるのに!ってなりがちでしたね。
「そうそう。今だいぶ思わなくなったけど」
*それはよい傾向。過去と他人は変えられません、基本的には。他人はどうしようもないですよね。それはわたしと喋って、オネさん真面目で柔軟だから持ち帰って反芻して考えて、自分の血肉にしてくれましたよね。これって結構すごいことですよ、価値観の転換って、そうそうできるものではないです。
「KDさんが色々言ってくれたからねー。すごく楽になったんだよ」
*それはオネさんがわたしとの縁を使いこなしたからで、オネさんの力量です。わたしを通過しても変わらない人はいます。だから、ね、それはオネさんの実力で、自分で自分を楽にしたんですよ。オネさんにはその力があったってことです。わたしのせいにしないでくださいw
*それで、ちゃんと仕事をしたいオネさんが、無理してさらに足を痛めて、仕事が全然できなくなったと。自分が「仕事できない人」になったんです。これって、今まで自分が腐してきた、って言ったら言い方悪いけど、まあそういう側に自分がなってしまったということです。認めたくないし見たくない事実かもしれません、でも、自分でもそういう思いがあるのでは?
「あぁ、そうかも……」
*悲しかったし悔しかったと思います。どうしてあんな怪我したんだろう、どうして無理したんだろう、って、自分に対して怒ったかもしれないですね。いろんな感情が巡ったというか、吹き荒れたというか。感情が激しく乱れたと思います。
「そうだねー……自分に腹立ったわ」
*怒りが落ち着いた後に残ったのは何ですか?悲しいとか悔しいとか、そういうのだと思うんですけど、どうですか?
「そうだね悲しいし……申し訳ない、どうしようー、って思ったわ」
*おお、そうなんですね。オネさん責任感強いし、そうなるんですね。でね、これって良い悪いではなくて、ただそうである、という話です。「そこにゴミ箱がありますね」っていうのと同じで、悪口ではないんです。ただ「ある」と言っているだけ。それでね、感情が動くのは当たり前です。だってそれだけの出来事だったでしょう?だから、ここで無理して、自分は大丈夫、って自分に言い聞かせると、それこそ地獄ですよ。感情は感じないとダメ。便秘みたいに身体に悪さします。まじで。
「ああー、そっかー」
*で、先に言っときますけど、申し訳ないとか思う必要は全くないです。
「そうは言ってもねー!」
*どうして申し訳ないと思っちゃうんでしょうね。そこまで頑張って仕事を全うしないといけない理由は何ですか?てゆーか休んだ分賃金発生しないんだから、ただの休みですよね。悪いことなんて一つもしてないでしょ?シフトに穴が開くっていっても、ここはそんなことどうにでもなるミラクルな職場じゃないですか。なんで申し訳なくなるの??
「……そうだね、何でそう思うんだろうね……でも悪い気するんだよね」
*それって誰の価値観ですか?……っていうのはおいおい考えていった方がより楽になると思います。今日のところはこの話題はヤメましょう。
*それでね、表層、上っ面では抑えていても、潜在的には存在する感情があります。抑えて表には出ないようにするから、認識しづらいです。でも、あるものはある。今、わたしの指摘を受けて、そういう思いがあるんだとある程度の認識ができたと思います。これについては、オネさん真面目だから、わたしが何も言わなくてもおうち帰って考え始めると思います。
「うんたぶんやっちゃうね」
*はい、やりたくなったらやってください。では、自分がそういう側になってしまったということで、そういう側の人たちのことを考えます。
*仕事が甘いだとか、やらないだとか、そういう人達って、どうしてそうなると思いますか?
「いやあ、やっぱサボってんじゃないの?って思っちゃうよね」
*まあ理由はいろいろありますよね、きっと。それじゃあ、例えばね、オネさん、今から大学入試の数学の問題に挑戦しましょう、って言われたらどうですか?基礎から勉強して、時間をかけて訓練すれば絶対解けるようになりますからさあやりましょう!能力を伸ばしましょう!!って言われて、できますか?実際、努力すればある程度できるようになると思うんですけど、どう?
「いやー、まずやらないね!できない!」
*そうでしょ?そうでしょ?興味ないことってできなくないですか??やる理由もない。それって、仕事においてもそうだって思ってあげられないですか??
「仕事は仕事だろーが!って思うわー」
*そらまあそうなんですけど、あれだけ仕事しないおじさんが主任として君臨してるんですよ?下々が「あっアレでいいんすね」ってなるのはまあ無理からぬ話……あの主任さんを引き合いに出さなくても、給与貰っていようが何しようが、やらなくていいならやらない、みたいなタイプ、コスパ最強を意識する省エネマンとか、いてもおかしくないとは思いませんか?ね?
「うーん、そうなんだけどさあ、仕事だろー!ってなるわ」
*まあそうなりますよね。なるのはなるで、まず置いておいて、現実問題としてそういう人間が発生している、というところに注目してほしくてですね……あっ!そういえば、お辞めになったマーさん、あれだけ仕事できないで有名なのに人事考課は平均だったっていう話で、去年の暮れにそれについておかんむりだった人の愚痴を延々聞かされました!ひどい会合でした!でもわたし、その話を聞いて、「すげえ!サラリーマンの低みを目指せるぜ!!」って喜んじゃったんですよね。そこまでやっても解雇にならないんだな、っていう目安がわかって大喜びですよ。こういう人間もいます。
「うーわー悪い奴いたわ!!そんなこと考えてるようには見えないのにねー」
*笑顔で挨拶ってやる人が少ないから。テキトーにニコニコしてるのは費用対効果抜群ですね。ありがたいことです。……ね、悪いでしょう?こういう人間が職場にいるんだと皆さんに知っておいて欲しいです。つけ入る隙があればズルいことやる人間がいるぞ、って知って欲しい!偉い人達には、つけ入る隙を埋めて職場の公平性を保っていただきたい!!ww
「ああ、そっかー。そう考えるんだ、でもそれっていいことだよね。もっといい職場になって欲しい!でもKDさん仕事は手を抜かないでしょ」
*いやそれなりにサボってますよ。何もしない時間結構ありますし。これで手抜きしない人って思われるのチョロいです。なんて楽な職場!ありがとうございます!
「そうなんだ、そっかー。でもあれだけやってくれれば手抜きしてるってわかんないわ」
*皆さんがやらないから!相対的にできる人扱い受けるってどーゆー職場か!!ww
*それで、仕事しない側のことですけど、どういう理由で仕事をしないのか、それとも能力的にできないのかって、結局外部からじゃわからないんですよ。わからないものを延々と考えてもしょうがない。ある程度考えるのは、自分のスタンスを決めるために整理するという意味では必要だと思います。でもね、そこに執着してしまうと、結局自分を蝕むことに繋がるわけです。実際苛立つでしょ?苛立ったら楽しくないでしょ。できれば平和に行きたくないですか?
「うんそう」
*じゃあ苛立つのやめましょう。それでどうするかっていうとですね、前提を疑うことをします。どうしてそこまで職場の潤滑を考えて仕事をせねばならないんですか?その方が皆ギスギスしないってのはまあわかります。でもね、あの辺のおじさまたち、ズルいことやってサボるけど最低限仕事してるでしょう。それだけじゃダメなのはどうしてですか?それやったら手取り上がるんですか?同じ給与ならムカつくのはわかりますけど、サボる側にしてみたら頑張っても旨味ないのに、なんでやらなきゃならんの?ってなる。なんでそこまでやらねばならぬのか??職場の潤滑以外の理由を教えてください!さあどうぞ!!わはは!!
「えっ………………なんでだろう?その方がいいから?」
*フワっとしすぎですー!あんだけトロくさい奴が主任さんなんですよ!士気下がってサボる奴出てもおかしくないでしょ?っていうかもう出てる!!ww
「……そうだね。良くないよね」
*「良くない」のはあなた目線でのお話です!サボる側にとってはトロくさ主任の存在は福音そのものであります!!……まあ冗談です。いや結構本気、おもしろい。これだけの仕事でいいんだ、って思ってそれなりの仕事でお茶を濁すヤツが発生しても責められないでしょ。主任の背中見て真似してます、って言ったらそれまでですよ。あーおもしろ。ね、どうですか?
「そりゃそうだ」
*わたし、あの主任さんが遅刻したことについて色々言い訳してた時、優しくフォローしたんですよ。慰めて欲しそうにしてたから。だから「上に立つ方がそういうことをしてくださると、下々もやりやすくなりますから」って言ってあげました!!あはははは!!!全然響いてないんですよーーーー!!!
「えっ!!そんなこと言ったの!!ワザと?だよね?」
*当たり前です!でも本当にそう思って言ってます!主任さん、立場的には「やべぇ!」って思った方がいいのに、なんかホッとした様子でした。わたしはどっちに転んでも旨味があるなと思ってそれ言いました。おもろい。
「ホントどうしようもない……」
*ね、主任さんと見比べてくださいよ、サボる人らを責められないでしょ??くふふ……ちゃんとやらなきゃならない外的な理由は潰れました。強引ですけど。サボる人の心情も、納得はできなくても理解はしてほしいです。「そこにゴミ箱がある」んです。
「あー……そうだねー…………」
*じゃあ次、能力的にできない人のことを考えましょう。キネさんは入社半年ですけど、最初からすごいバタバタした人でしたね。実際今問題ありな感じですけど、職務においてはお客さんみたいな感じであまり参加してくれませんよね。仕事する姿勢が弱いというか。メモ一つ取らなかった人ですよ。それでいて、不器用だから色々の仕事をこなせないでしょ。このキネさんを鍛えてできる人に仕立て上げることはできますか?
「いーや、無理じゃないかなー」
*オネさんの目から見てもそうなんですね。ね、そういう人だっているでしょ。どうやったって無理なものは無理なんです。そうやって、物理的にできない人もいるし、精神が削られてサボる人もいるわけですね。そこは理解してあげて欲しいです。色々の理由で、無理なものは無理なんです。
「うーん、そうだね……」
*オネさんがどうやっても仕事に責任感を感じてしまうように、どうやってもやる気出ない人とか、物理的に無理な人とかいるんですよ。そういう人にもっとコミットメントしろとか、無理ですって。コミットして給与上がるんですか?ないでしょ?じゃあやる理由ないじゃーん。オネさんが入試問題の数学に取り組むことが無理なように、彼らにとっても仕事の成果を上げるのは無理なんです。……って考えたらどうですか?無理じゃない?
「……うん、無理だねー」
*ねー。
*でね、実際そういう人達と仕事するとオネさんイラァとするでしょう。苛立つのは苛立つでしょうがないです。ムカつくもんはムカつくんだし。ただ、無理系がどうして無理系なのか、本当のところは分からないけれども無理系であることはもう仕方がないんだと受け入れて、その上で自分がどうするかを考えましょうよ。他人をどうこうすることは超ムズカシイです。苛立つことと、無理系の人間が存在することとは、それぞれ別の問題として分けて考えましょう。
*さあ、それじゃあ、次の話に行きましょー!オネさんは、どうしてそれを他者に求めてしまうのか問題です。どうしてでしょうねー??
「えぇーー……どうしてだろー……時代のせい?そういう世代だから?」
*そうですね、そういう教育が効いていた世代かもしれません。それって、オネさんが自分で納得して採用している価値観ですか?
「えぇ……どうなんだろう」
*しばらく前に同じような質問をしたんですけど、覚えてますか?「それって誰の価値観ですか?」に対してオネさんははっきり「私の価値観です」って言い切ったんですけど、すごい変わりようです。
「えっ、そうだっけ……」
*うん、まあ……はい。それでね、ここから先は結構面倒な話。だからこの話はここまでにしますけど、この誰のかわからない謎の価値観のことはおいおい考えていった方が、オネさんがより楽になると思います。わたしの目下の目的はオネさんの胸のつかえがなくなることなので、ちょっと話を変えましょうか。でも、「それを他者にも求めがち」という性質は意識の片隅に置いておきましょう。
*オネさんは、怪我をして仕事に制限が掛かって、復帰してすぐ無理してまた長期間休んで、思うように仕事ができませんでしたよね。それについて、すごく色々な思いがあったはずですけど、それはさっき話しましたよね。
「うん」
*オネさんは望んでこの業種を選んだと前にお話してくれましたね。だからこの仕事をきちんとやりたいというのはよく伝わってきます。アホばかりのこの職場において、この業種に対する思いが人一倍強いでしょう。思いが強いから、ちゃんとやらない人に対して思うところがある。でも、今のオネさんは自分の思うように仕事ができない。怪我で制限が掛かってしまったからです。悲しいし悔しいし、腹立たしい。その腹立たしさ、怒りは、誰に向いていますか?自分にだけですか?「私はやりたいのにできない。お前らはどうなんだ?」って、思いませんでしたか?
「あぁー……あるかも!」
*これね、わたしの見立てでは、「私は怪我で仕事ができなくなった。お前らは五体満足でその体たらくか!!!」みたいな怒りとも恨みともつかない想念が、オネさんを蝕んでいます。仕事ができない側になってしまった自分に対する落胆と怒りと、無傷でいる他者への羨望と、憎悪、って言ったらすごくキツイけどそんな感じの。
*そりゃあ悔しいでしょう、だってあれだけ一生懸命だったんですよ?怪我しても保証もなく身体を痛めてもずっと耐えて仕事を続けて、まあ、オネさんのその時代をわたしは知らないけど、とうとう骨折であの現場から離れましたよね。それまで歯を食いしばって続けてきたんでしょう?いつ辞めようかずっと考えてる、って言ってたくらいだし。お話を聞く限り、結構な扱いでしたよね。それでも献身的に真面目に仕事を続けてきたんですよ。軽い不注意であんな大怪我になって、張り詰めていたものがなくなったと思いきや、罪悪感にさいなまれて散々ですよ。できない自分になってしまって周囲に対して申し訳なく思って、その上で、自分が望んでも得られない「健康」を持ちながらもオネさんがやりたいのにやれないきちんとした仕事をやらないアホどもを見たら、そら腹も立ちます。悔しいし悲しいし、さぞやムカつくことでしょう。こういう気持ち、つらいし見たくないものですよね。でも、そういうのがあるかもしれない。
「………ああ……そうかも、そういうの、確かにあるかも……」
*……話早い。
*今わたしが言ったことは、そういうこともあるかもしれないと思って、よくよく自分の内面を観察してほしいです。わたしが言ったから意識に上りました。でも、それが本当にあるのか、わたしの影響を受けて捏造してはいないかを慎重に確かめてほしいです。ないものをあるとしないように気を付けてください。わたしが指摘しなかった感情もあるかもしれません。もしそれらの感情があれば、それは蓋をしたり誤魔化したりせず、ちゃんと感じてあげてください。認めて感じるのが大事。オネさん、わたし、普段から「アイサツはハイセツよりタイセツ」って言ってるでしょ。感情を認めて感じるのは、アイサツよりタイセツなんですよ。認めて感じたら、感情は手放されます。大概は。
◇
数日後
オネさん「KDさん!あのあとから胸のつかえが嘘みたいになくなったの!信じられない!すごい!」
*おおー、よかったですー。
「本当になくなったんだよ!すごいね!どうもありがとう!KDさん、何者なの?」
*ただの悪いおばさんですww でもよかったー。あのね、すごいのはオネさんですよ、だってわたしの指摘を受けて黒い感情を直視したのでしょ?ね?わたしとの縁を使いこなしたオネさんの力量です。自分で自分を治しました。あなたの実力をわたしのせいにしないでくださいww
「いやっ、そんなことないでしょ。でもなんでそういうこと知ってるの?」
*人間(の動く仕組みや機能)が好きだからですよ。
「胡散臭いなあ!」
これがシャドーワークそのものだったと気づいたのは、オネさんから治ったという報告を受けてしばらく経ってからでした。わたしをうまく使うとこういうことを起こせます。
オネさんは素直で柔軟で頭が良かったのでこうなりました。
◇
どうしてですます調なのかというと、別名義で文章を書こうと思っているからです。お試しに書いてみましたが、悪くないかもしれません。そちらはもうだいぶお上品にやろうと思っています。