一周目クリアした時の感想はここ。
※以下、Fate/Samurai Remnantのエンディングのネタバレしかありません。
Fate/Samurai Remnantの二周目をクリアした。
もう。あの。あのさあ。なんというか……「起こらないでくれ」と思っていたことが総なめで起こったので、怒るとか悲しむとか以上にすごいな……という気持ちになってしまっている。すごい。ものすごく綺麗に『悲しい予感』を回収された、という気分。
誤解なきように言っておきたいのだが、これはつまらなかった、という意味ではない。ストーリーは本当に面白く、登場人物は皆魅力的だ。私はこの作品が大好きである。だが、一周目の時点で「なんかスッキリしないな……」と思っていた部分、同時に「スッキリしないけどスッキリさせたら碌なことにならない気がする」と思っていた部分を余すことなく開帳された。碌なことにならなかった。思った通りじゃん!!!!!!!
伊織くんのことを、皆「優しい人」だと言ったし、私も違和感を覚えながら「悪い人ではない」と感じていた。性根がそうかはおいておいて、穏やかで誠実な人ではある、そのようにありたいと己の中の手綱を引き絞っている人である……と感じていた。
しかし、どうやらそれも少し違っていたらしい。
伊織くんは「穏やかで誠実な人」でありたいと思ったことなどなかったのだろう。結果的にそう見える、というだけだった。己の本性を隠さないと人の世界で生きられないから、という理由でもない。ただ「理解した方が相手を殺せるから」という理由が一番上にあり「人間を理解するため」に「人間とはこういうものだ」というムーブをしていただけらしい。それが結果的に、他人から見ると『穏やかで優しい、誠実な男』に見えていた、ということだ。
二周目に入ってから、丁寧に丁寧に外堀を埋められて『宮本伊織はただ穏やかで優しい男ではない』ということはもうわかっていた。私よりもずっと近くで彼を見てきた、一緒に過ごしてきたセイバーはより強く感じていたことだろう。だからセイバーも驚かなかった。彼の本当の望み、そしてそれが自分の行く道と交わらないともうわかっていたのだろう。そして交わらないからこそ剣を交える、というのが伊織くんが心から望んでいたことであることも。
どうにもならない。どうしようもないのだ。どういう式を書いたとしても、一度こうなってしまったら、導き出される答えは一つしかなく、ふたりが戦わない、という選択肢は存在しなくなる。
そも、盈月の器を残す理由というのも、彼が述べた『災いとして残す=己が強者と戦うための餌とする』ということ以上に『こう言えばセイバーは止めに来る。力づくでも』と伊織くんはわかっていたのだろう。
ふたりはお互いを理解している。理解してしまった。一緒に過ごす間に、心を通わせ、何気ない日常を共に過ごし、何度も死線を潜り抜け、ささやかな喜びに一緒に笑い、歩み寄って来た。互いを信頼し、背を預けられる相棒として心をつないできた。そのたどり着く先がこれである。理解しているからこそ剣を交え、理解しているからこそあの結末に至ったのだ。
もし、出会った頃のままの関係性の二人だったとしたら、違った結末に至ったかもしれない。
胸を貫かれた伊織は、満足げに望外の友を得たと呟いてこと切れる。セイバーがどんな気持ちでそれを聞き、ひとり盈月の後始末をしたのか。考えるだけで胸が抉れる。セイバーの望みは盈月の器なんかに願わなくても叶ったものだったけれど、同時にそれはもう永遠に叶わない。
なんでだよ、という気持ち、いいと思う、という気持ち、それはそれとして一人でいい空気吸ってんじゃねえぞという気持ちが伊織くんに対して代わる代わる湧いてくる。いや、なんでだよ、も、どうして、も全部わかっているのだが。理解していることと飲み込めるかは違う話である。
一人だけいい空気吸ってんじゃねえぞ、も、深く深く傷ついただろうセイバーのことを思うと拳を振り上げてしまうのだが、けれどあの湊の一夜から今の今までまともに息すらできなかったのだろう伊織くんのことを思うと、振り上げたこれどうしたらいいのという気持ちになる。私は彼を責められない。
むしろ盈月の器を残すと言い出した時に『いいんじゃない?』とすら思ってしまったのだ。
だって、やっと伊織くんが心からの言葉で喋って、行動してくれたのだから。ずーーーーっとここに至るまで、見せてくれなかったものを見せてくれたのだから。それがあまりにも『息が楽そう』で、否定することなんてできなかった。許すとか許さないとかは私の判断するところではない。
それに私はどこか『安心』すらしていた。ここまで少しずつ拾い上げてきた不安と予感、危ういバランスで積み上がったそれらをどうか倒れないでくれと祈りながらここまで来たものを、一突きで倒され、全てぶちまけられて、台無しになったことが『心地よかった』
カタルシスだ。地面に落ちて砕けた卵を見るような。あーあ、という気持ち。そうか、とても嫌だけれど、じゃあ仕方ないね、という気持ち。
ここに至るすべてが美しい。心からの『友』などいなかっただろうふたりが、信頼を重ね、心を通わせたからこそ、殺し合うことになった。
柔らかで優しいものが、確かな絆が存在したからこそ、それらすべてが反転し残酷な結末へと至る。それは物語としてあまりにも美しい。と、物語が好きな私は納得している。拍手すら送りたくなる。なんて見事な脚本だろう。
けれど同時に、二人のことが大好きで、二人の幸せを願っていた人間からするとなんでだよお……!! と泣きながら台パンすることしかできないでいる(ある意味でハッピーエンドだとは思うが私が目指すハッピーエンドは最小単位『ふたり』の幸せである。一人だけ満足していい空気吸ってるのはハッピーエンドとは認めない)
ちなみにこのあと焔ルートも見たのだが、ダイナミックでヒロイックで、まさに大団円、伊織くんも言っていたけれど『綺麗な幕切れ』で、綺麗過ぎて、理解はできるがすっきりしない、というエンディングだった。
鬼になることを踏みとどまり、願いを斬ってくれとセイバーに託す伊織くんと、それを受けて『ありがとう』と返すセイバーに、言外のものを感じてぐっとき……はしたのだが、しかし『剣の渇きは満たされず』なのだ。
もうどうしようもない。
サムレムのエンディングは特殊なものを除きすべて見たと思うが、どのルートもすっきりすべてが解決するものは存在していない。どれも少しずつ足りない。欠けている。あるいはすべてが崩れる。
多分どれだけ探してもそんなものは存在していないのだろう。伊織くんがああで、セイバーがこうである限り、すべてが満たされるエンディングというのは存在しえない。それをじっくりと時間をかけて確かめた、というだけの話だ。
その、おそらく人によっては徒労と感じる結論すら、私は愛しい。そりゃ望めるなら『すべて都合よく満たされるエンディング』だって見たいけれど、そうじゃないことなんてこの世に五万とあるのだし。
私はFate/Samurai Remnantが好きです。出会えてよかった。
でも今はちょっとつらすぎるので、慶安神前試合で心を癒さないと立ってられないです。