前回書いたように、強みの振り返りでは思いがけない強みが見つかった。基本的にはこの特性と経験値を活かして仕事をしていきたいと考えた。しかし、根本的な問題として、当時は手持ちの仕事がないという状態だったので、何かしらマーケティングしなくてはという焦りが出始めた。外の空気が寒くなりはじめた頃の話。
とはいえ、焦ったところでフットワークが急に軽くなるわけでも、市場の急所が見えるわけでもない。強みを組み合わせてみたころで具体的なプランも思い浮かばない。この頃、カラムーチョの消費量が急増した。
こんな風に頭がこんがらがってきたところで、会社員時代に知り合った方から「一緒に仕事をしませんか?」とお声がけいただいた。ありがたい話である。
早速お話を伺ってみると、会社員時代の経験が活きるだけでなく、純粋にワクワクする話だった。ただ、私のスキルでは対応できないタスクが半分以上あって、どうしたものかと考えた。
ここで、自分には二つの選択肢があった。
ひとつは「全部できます!やります!」と宣言して猛勉強して臨む方法。中小企業診断士の開業日記でしばしばでてくる話だ。そもそもコンサルタントはクライアントの本業について、クライアント以上に知っているわけではない。そのため、駆け出し診断士は案件の内容に関わらずに食らいついて学べ、というわけだ。私は診断士ではないが、独立の研究材料としていた。
もうひとつの選択肢は「私のスキルではこの部分は十分な対応ができません」と素直に伝えることだった。これは誠実である一方で、アグレッシブさに欠けるし仕事が広がらない懸念がある。アサーティブであるが勇気が必要だ。
相当に悩んだあげく、二つ目を選択した。つまり、できないことを素直に開示したのである。技術コンサルタントである以上、技術には誠実でなくてはならない。ただそれだけでなく、この案件だったらこういった点でお役に立てると思います、と控えめにお伝えした。
その結果どうなったか。
結果的には当初とは違う形で案件に参加させていただくことになった。そして、自分の経験やスキルを活かせるプロジェクトになった。本当にありがたい話で、感謝してもしきれない。
ところで、ここに書いたエピソードは、複数の案件で同時に起きたことだった。2か月ほどの間で同じようなコミュニケーションから3つの仕事につながった。不思議な感覚だった。
この新しい仕事にはとにかく全力を尽くした。全力というのは、ノウハウの出し惜しみなしで、自分のスキルをフル稼働させ、ご契約いただいた内容以上の成果を出すべく努力すること。そうしないと貢献できないだけでなく、経験からも学べないと思ったから。何よりその方が自分も楽しい。
こうして新しく始まった案件に集中するようになると、自然とSNSやnoteの更新が滞ることになった。隙間時間があればプロジェクトに関係のある本を読み、活用できる題材を探す。また、業務遂行に必要なハードウェアや学びに有効なサービスはガンガン買う。報告書に書く以上に様々なアプローチを試す、などなど。コストのことはひとまず脇に置いた。
書いていて気づいたのだけど、こんな感じでストレートにガリゴリやるのは自分の特性の一つだと思う。不器用な面も含めて。それは、同期から「面白くないところが面白い」といわれた言葉の裏にある真面目さに根差すものなのかもしれない。
この活動の結果、次の仕事をご紹介いただくことになった。リピートである。
こうして、誠実に会話し、誠実に仕事をするというシンプルな方法によって、仕事をいただくことができたのだった。私のキャラクターとして無理のない戦略だったともいえる。
この先、事業がどのように変わっていくか自分でもわかっていないのだが、この期間に学んだことはずっと忘れないだろう。
つづく