アクセシビリティ Advent Calendar 2023の9日目の記事です。タイトルにアクセシビリティカンファレンス福岡2023のキャッチコピーを持ってきました。
語られることの少ない発達障害について「ここにいる。」を示すべく、発達障害当事者の立場からいろいろ書きます。
※発達障害はアメリカの精神医学会が発表しているDSM-5の日本語訳で神経発達症と訳されるようになりました。しかし次に挙げることから「発達障害」とこの記事内では書きます。
発達障害という言葉のほうが広く知られていること
法律的には「発達障害」と書かれていること(発達障害者支援法など)
「障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって作り出されていて、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である」とする「障害の社会モデル」の考え
発達障害の当事者であることが分かった夏
2023年8月に、心療内科でCAARSとAQテストを受けて、自分の幼少期のエピソードや生活する上で困っている点などを踏まえた上で、ADHD(不注意優勢型)とASDの診断を受けました。
その後自分のことをより知る手段としてWAIS-IVも受けた結果、全体的には平均値の100を超え、平均より上の110以上になる群指数も複数あることが分かりました。ただ処理速度だけは平均より下回る数値になって、ディスクレンパンシーが存在する状態ということも分かりました。
こういった結果を踏まえて、現在はアトモキセチンという薬を服用し続けています。
なぜ発達障害であると自覚し始めたか
前々から仕事をする上でなかなか改善できない部分があって、それが評価につながってしまう部分があったり、あとは数年前にメンタルがやられて心療内科へ行ったときにADHDの傾向があるのではないかということを言われていたりしました。
それらがいろいろ積み重なって、2023年6月くらいにブレインクリニックでQEEG検査という脳波を定量的に見る検査を受けて、やはりADHDやASDの傾向がありそうという結果が出たのがきっかけでした。
なお治療方法としてTMSを勧められましたが、それはまだ実験的な部分も多いことは調べて分かっていたのと、治療費も自費治療となり高額なため、きっぱりと断りました。
QEEG検査やTMS治療については、専門的な医師が上げているQEEGや光トボグラフィなどの高額な検査で診断は正確になるのか? rTMSの治療は?の動画を見ると良いでしょう。
私は上記のQEEG検査を面白半分で受けた面もあったので、だいたいは直接に心療内科で検査してもらって、診断してもらい、服薬が必要ならするという流れを取るのが良いと思われます。
自分の困りごとと対策
自分が感じている困りごとやその対策を一部紹介します。
頭の中ではいろいろ考えているが、それを短時間で人に分かりやすく話すのが苦手
対策: Slackなどのチャットツールのように、テキストベースのコミュニケーションなら考えをまとめて話せるので、仕事上のコミュニケーションはテキスト主体にしています。
短期記憶力が弱く、口頭で話された内容などが頭から抜けやすい
対策: すぐにタスクリストに入れるなどして後から見返せるようにしたり、話された内容を独自にテキストでまとめたりして、内容に対する解像度を上げるようにしています。
大きい文字が目立って表示されている状態が苦手
WordPressの「データベース接続確立エラー」とだけ表示されるのを見たり、fast.comで速度測定の結果を見たりするときに、圧倒されてしまう感覚があります。
対策: WordPressを使わないようにしたりCloudflareのSpeedtestを使ったりしています。
コンテキストスイッチが苦手
対策: 抱えているタスクに対して関連付けをおこない、頭の中でまとめられるようにしています(これはまだ試している最中)。
ストレスの許容量が人より少ない可能性がある
対策: ストレス発散の手段を複数持つ。とはいえカラオケで「紅だーーーーーー!」と叫べばだいたい解消しますけどね。あとは辛いものを食べることでしょうか。神泉にある「うさぎ」というラーメン屋の汁なし担々麺が好きで、いつも辛さを1辛、しびれを2辛にして食べています。最近だと自作キーボードについていろいろ調べるのもストレス解消の1つです。
発達障害は難しい
発達障害は外見から分からない障害です。そのためなかなか理解しにくく、またどのような困難があるのか想像しづらいという声を耳にします。
そういった声に対して当事者の立場から言うとどうなのよという話ですが、正直自分もどこまでが発達障害の特性によるもので、どこまでが自分の性格や学習によるものか区別がつかない部分もまだあります。前述した自分の困りごとと対策についても、自分だけでなく皆が感じていることかもしれません。
自分がそんな状況なので、他人から完全とは言わなくても大部分を理解してもらうのは、専門の医師や臨床心理士といった専門職以外にはそんなに期待していません。
あと脳内でエミュレーターを動かし続けることで、障害を感じさせないように動くのもできてしまっているようです。実際に発達障害であるとチームリーダーへ話したときに、そうとは気づかなかったという反応をもらいました。
ただこの辺りの話も、自分がWeb系の開発職という立場だからこそ成り立っているもので、他の職種になったら破綻するのかもしれないです。そこは経験してみないと分からないですね。
今のところ、ラインで流れてきた品物を検品するといった単調な作業は精神的な苦痛を伴うので向いていないことしか分かっていないです。
誤解されがちな発達障害
厚生労働省や国立障害者リハビリテーションセンターなどが公開しているように、発達障害は誤解されることが多いという印象を持っています。
実際に自分も元々自閉症と言われていたものに対しては「コミュニケーション能力に乏しくまた人とそんなに関わらないが、特定の分野においては詳しい」、注意欠陥多動性障害に対しては「集中できずよく動く」といった画一的な認識をしばらく持っていました。
発達障害だけでなく、どの障害にも言えることだと思いますが、障害の程度は人によって違います。困る点もそれぞれ違います。得意な点も違ってくると思います。
この記事で書いた内容も他の発達障害当事者からは当てはまるところもあれば、当てはまらないところもあると考えています。発達障害といってもいろいろありますし、程度も人それぞれです。
これらのことは他の障害や特性にも当てはまると考えています。
なので障害当事者に対しては、画一的な見方だけを持つのではなく、その人が困っていることや得意なことを気にしつつ、同時に環境の整備もしていってお互いがより良い結果を出せるようにするのが大事だと考えます。
おわりに
この記事を書くことに対して迷いました。
発達障害かもと感じ始めてからもまがりなりにも擬態して生きていけたし、実際に発達障害を持っていることを感じさせないようにもできていたので非開示としても問題ないと考えていました。
そう「事情」を伝えなくてもなんとかなってほしいで書いた「事情」はこのことでした。開示する・しないを考えなくてもあるがまま生きたい気持ちはありました。
とはいえ開示しても開示しなくても自分が何か変わるわけではありません。変わる点と言えば隠すことに対するストレスが消えることでしょうか。
あと障害当事者について話題が出るときに、発達障害について話が上がることは少ないと感じていました。少ない理由もどういったことに困っているか想像しづらいという話を見聞きしていました。
なので少しでも発達障害について知るきっかけになれば良いと考えて、記事を書いて公開しました。
この記事が発達障害について解像度を上げるきっかけとなれば幸いです。