おもちゃのような車をおもちゃとして買った。トヨタ「C+pod」

MIRO
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公開:2026/3/2

おもちゃのような車を買いました。いやマジでおもちゃ。たのしい。

以前、間違えてネットでくるまをポチッとしたら届いちゃった話…というのを書きましたが

これに懲りず、また業者間オークションを使って車を買ってしまいました。やっぱ一回体験すると慣れるというか度胸がつくというか。

その後、↑のときに買ったくるま(BMW i3)からわりとデカいくるまに乗り換えていたのですが、BMW i3の、なんというか、こう、ゲタのように使い勝手よい手軽な運転感覚がどうにも忘れられず…。やっぱり、自宅近所の超狭苦しい道での普段使いには小回り効くちっちゃい車が要るよなあ、なんて思ってしまったんですよねえ。ゲタ欲しいゲタ。やっぱゲタこそ至高。

「超小型モビリティ」

で。「ちっちゃい車」というと一般的には軽自動車を思い浮かべる人が多いとおもうのですが、実はその軽自動車よりもさらに小型の車のカテゴリ、というものが日本には存在します。

そのなかでも比較的よく見かけるのが「ミニカー」。これはいわゆる50ccエンジンクラスの車で、ナンバープレートは水色の小さいやつ。道路運送車両法上は原動機付自転車の区分で、道路交通法上は普通自動車の区分、という扱いになっています。法の狭間というかなんというか。結果として、原付のように運用が楽(車検がない、税金がとても安い)だけど、車のように扱える(ヘルメット要らない、二段階右折しなくていい)、というたいへん便利な素敵カテゴリに仕上がっているわけ。原付なので1人乗りしかできなかったりはしますが、素敵カテゴリだけにかなり昔からちょこちょこと地味に使われていたりします。みなさんも街中で見たことありませんか、水色ナンバー。セブンイレブンの配送車(コムス)とかでも見かけたりしますね。

で。

「ミニカー」はそんなわけでとっても素敵なカテゴリですが、1人しか乗れないし、原付扱いなのでエンジン出力の制限がかなり厳しい。不便なところもある。

そんなわけで、ピコーン! このあたりの制約をちょっと緩めてやればこういうタイプの自動車がもっと流行ってエコなのでは…?(ぼくの考えたさいきょうのアイデア!)…と新設されたカテゴリがあります。それが「超小型モビリティ」ってやつ。

ミニカー以上、軽自動車未満

そんな経緯で生まれたカテゴリなので、「超小型モビリティ」はミニカー以上、軽自動車未満…という領域を定義したものになっています。現行では「ミニカー」の上はいきなり軽自動車になってしまい、軽自動車フルフルな安全基準を満たす必要がでてきてしまいます。そこで、ミニカーよりもエンジン出力を高めたり、2人乗車を許可しつつ、フルスペックの軽自動車ほどの衝突安全基準は求めない領域。衝突安全性能を落とすかわりに、最高速度は60km/hに制限する。最高速が出ないのと衝突安全性能が高くないので、高速道路は走行不可。…と、そんなカテゴリをつくってあげればいいのでは?と、いう話です。(※ここでミニカー以上、と表記しているように正確には「超小型モビリティ」にはミニカーも含むのですが、わかりにくいので以後ミニカーのことをミニカー、軽自動車カテゴリに食い込む超小型モビリティ領域のことを超小型モビリティと呼称します)

結果、どうなったか。

ミニカー:原付のように運用が楽(車検がない、税金がとても安い)だけど、車のように扱える(ヘルメット要らない、二段階右折しなくていい)

超小型モビリティ:軽自動車と同じ運用(車検がある、税金も同じ)だけど、軽自動車よりも制限が多い(2人しか乗れない、高速道路走れない、最高速度60km/h)

ど う し て こ う な っ た … ?

軽自動車ではなく超小型モビリティを選択する、ということに制度上なんのメリットもなくなってしまい、当然のごとくまったく流行っていません。そらそうよ。利用者側のインセンティブまったくないもの…

超小型モビリティ(型式指定車)

この「超小型モビリティ」というカテゴリ。じつは細分化されてさらに2種類にわかれています。それが「超小型モビリティ(認定車)」と「超小型モビリティ(型式指定車)」。

このあたりたいへんわかりにくいのですが…さらに背景事情の部分から説明すると、欧州にもこういうマイクロカーのカテゴリ(クアドリシクル。L6e/L7e)が定義されていることがあります。国とカテゴリによっては免許も要らなかったりなど制度上かなり優遇されていて、結果としてそれなりに流行っており各社対応しているマイクロカーを販売していたりするわけです。利用者の制度上のインセンティブが重要なことがここからもわかりますね!

これ、2人乗れてそこそこパワーがあってとたいへん使い勝手がよいし、かわいいし安い。のですが、日本のミニカー基準には合わないので、そのまま日本に持ってくるわけにはいかない。座席を1つ潰して1人乗りにし、エンジン出力を下げてミニカー基準にあわせることで日本で走らせることもできますが(やっている人もいます)ミニカー基準だと「2人乗り」は実現できない。「2人乗り」は需要が大きいので、そこはなんとかしたい。

そこで試験的に実証実験的な取り組みとして「地方公共団体または地方公共団体が組織した協議会」が申請することで、なんとかこういったマイクロカーを軽自動車の枠組みに押し込んで走らせることができる、としました。これが「超小型モビリティ(認定車)」

これでEUのクアドリシクル(L6e/L7e)カテゴリにおさまる車を、2人乗りのまま合法的に日本の公道で走らせることができる…ことになったわけですが、これを使うためには、自治体主導のプロジェクトとしてひとつひとつ「認定」してもらう必要があるわけで、個人で活用するのは不可能。(もちろん自治体の取り組みとして観光地の街乗りレンタカー、みたいな形で提供されているものを利用者として運転することはできますが)

…と、話が長くなりましたが、そんなわけで別途「『超小型モビリティ』の安全基準を定め、『超小型モビリティ』に適合していることを車種として認定し、公道を走らせられるようにする」という枠組みも定義されました。これが「超小型モビリティ(型式指定車)」。2020(令和2)年9月、道路運送車両法施行規則等改正により生まれました。

それから5年半。

2026年3月現在。「超小型モビリティ(型式指定車)」に適合する車は、後にも先にも私の知る限りでは「トヨタ C+pod」1車種のみ。その「C+pod」も2024年8月に販売を終了しており、現在の日本で「超小型モビリティ(型式指定車)」に適合する新車購入可能な車種は存在しません。

結果的に1車種のためだけにつくられた車両カテゴリとなってしまった「超小型モビリティ(型式指定車)」。うひょう、しびれますね!そして、これに付き合ったトヨタの律儀さに感じ入ります…!

個人でも気軽に買える「激レア車」

国を挙げてわざわざ道路運送車両法施行規則を改正し、自動車のあたらしいカテゴリーとしてつくった枠組み。それに適合する歴史の上でもただ1車種のくるま。そしてその累計販売台数は約2000台。日本全体で2000台のために法的整備された車両カテゴリー

こう振り返るとマジでおもしろいですよね。興味がわいてきます。

販売台数約2000台。もちろんこんな車両区分、先述したとおり利用者側が利用したくなるような制度上のインセンティブなんぞ無いので個人にはほとんど売れていません(というか、そもそも最初は法人へのリースのみで個人対象には販売すらされませんでした)。ディーラーだったりお付き合いでの社用車とかそんなかんじの販売先が多かったと思われますが、C+podは電気自動車ということもありCEV補助金の対象。補助金を利用して購入した場合4年間の保有義務期間があるので、だいたいは4年間はそのまま維持されます。しかしまあお付き合いで買ったような場合はその間ほとんど乗られることはなく…

って何がいいたいかといいますとですね。

2021年に販売がはじまったこのC+pod。2026年初頭のちょうどいま、ほとんど乗られていない低走行4年落ちの中古車両がぼこぼこと流通しています(笑)自分が買った個体もオドメーター1400km!ですよ。4年落ちで。

中古車サイトやカーオークションの流通価格とかを眺めているとまだけっこうお高めですが、これからも似たような車両が市場に大量に出てくるだろうし、中古車販売もすでにダブつき気味に見えます(2000台しか売られてない車なのに!)。なのでもっと相場が下がるんじゃないかなあ、なんて思います。制度上のインセンティブが無いかわりに、車両がじゅうぶん安ければそれがインセンティブになるのである程度みんなが「お得」と感じるところで需給がバランスするんじゃないでしょうか。

私はまあ、こういう明後日な方向のオモシロ話は個人的に大好物なので…無くなってしまいそうなレアものは、体験できるときに体験はしておくべき、と思って買ってみたわけです。要するに趣味のおもちゃで水素燃料電池車MIRAI買ったのと似たような動機。ちなみに、自分はこのC+pod、カーオークションでけっこうお安く買えています。いまの「相場」では売れないと見込んで売り急いだのか、当時のオークション相場から見てもかなり安くぽっと業販価格で出された個体を狙い撃ちしました。

トヨタが「ちゃんと」つくったおもちゃのくるま

で、実際に買ってみると、やはりそこかしこで「激レア車」であることが体験できたりしてめちゃくちゃおもしろいです。まず、登録するのに車検を通す必要がありユーザー車検として検査場(軽自動車検査協会)に持ち込むわけですが…

検査場の係員さんからして「初めて見ました…個人で買われたんですか?」となる。車体番号の刻印がどこにあるのか、車速を測定するのに車両の安全装置を切る方法は、安全基準のどこを見ればいいのか、なにもかも初見すぎてマニュアルを参照しないとわからない。係員がわらわら集まってくる。そりゃそうよね、法人で買ってれば指定工場で車検通すだろうからそもそも数が少ない以上に検査場に持ち込まれることなんてないですもんねえ。

そこであらためて実感するわけですが、このくるま。見た目に反してプリクラッシュセーフティやらエアバッグやらといった今どきの安全装備がきっちりついているだけでなく、ABSやらトラクションコントロールやらもしっかり動作している!こんなおもちゃみたいな車なのに!いやあさすがのトヨタ、安全装備に手抜きはありません。(※車検場で車速を測定するために測定器の上でタイヤを回す必要があったのですが、TRCが効いてしまいエラーで停止。TRCをオフにする隠しコマンドを探すのに手間取ったりしたのでした)

エンジン(モーター)出力は12.5ps。街中の流れにぎりぎり乗ることはできますが、とにもかくにも常にいっぱいいっぱい。安定感などないし、ふわふわ揺れるし跳ねるしまあうるさい。運転していると始終「おもちゃだ…」ってなるのですが、2人乗れるし安全装備だけは異様にきっちりしている。そんなわけでミニカー区分よりはなんぼか安心感があります。

外装はフレームのまわりに樹脂パネルがネジ止めされており、表に見えているのは基本樹脂。そんなところもおもちゃ感がある。昔AZ-1でも見たやつだなこれ、などとも感じつつ、そのうちパネルだけ調達して色変えとか楽しめたりするかなあ、なんて思ったりもします。たぶんやりませんが。

小回りはめっちゃ効くゲタ感最高な取り回し、ただし重ステ

当初の目的だった、おもちゃ…もとい、狭苦しい道でも気軽に走れる機動性、ゲタとしての性能はもう申し分ないです。わたしは墨田区在住で、実家は世田谷。まあどちらも細くて細かい道はマジで気が狂うほど細かくて。でかい車で迷い込もうものなら死にそうな目に遭うのですが…このC+podさんは本当にどんなところでも気にせず突っ込んでいけます。安心感パない。

車幅は軽自動車(1480mm)よりも19cm!も細い1290mm。全長も2.5m(2490mm)しかなく軽自動車(3400mm)よりも1m近く短いです。最小回転半径は3.9m。全長の短さ・幅の狭さもあわせて細い道がほんとうに苦にならない。そして路肩に駐車している車がいても、車線からはみ出さずにパスできてしまうくらいの気楽さがある。

スーパーに買い物に行こうかな…ってときに、いままで「うっでも車出すのめんどくさいな…?」と内心思っていたりした、そのちょっとした心理的ハードルがだいぶ下がった実感があります。ちょっと散歩、のノリで乗り出せる。そう、まさにこの気楽さがほしかった。これを求めていた。ゲタとはこうでなくてはいけないのだゲタとは。

ただ、重ステなのはさすがにコンセプトとしてどうなのか。いや制度としてのインセンティブがないぶん車両のコスト下げたり軽くしたりが重要なのはわかるんだけどさあ、走行しているときには気にならないけど、駐車のときの据え切りが…つらいですよ先生…。超小型モビリティ、「高齢者の足に」とかおまえら言うけどさあ、ステアリングだけは高齢者に回させる気がないでしょこれ??

「2人乗れる」ことと「トヨタ」である安心感

おもちゃおもちゃと言いながらも、この車を買った目的は繰り返しているとおり「日常のゲタ」です。ゲタとして気楽に・気軽に使い倒すための車なので、メンテナンスや維持にこまごまと気をつかう必要があったら本末転倒。それと、日常の買い物は奥さんと一緒に移動することも多いので2人乗れることは必須です。

じつは「ミニカー」カテゴリには面白い車がいっぱいあります。最近だとmibotもそう。輸入車や小さいメーカーのおもしろ製品もいっぱいあるし、ルノーTwizy(ミニカー登録)もめっちゃかっこいい。しかもミニカー登録なら税金も激安で車検もない。めっちゃ悩んだのですが…、やはり「2人乗れる」要件が重要でうちの車としては選べなかった。

それと、C+podは「トヨタである」ことの安心感はとても大きい。ゲタ車なので、メンテや整備に頭を使いたくなかったんですよね。趣味といいながらもこいつは雑に・ガサツに扱えるスニーカーであってほしい。トヨタ車なら、まあ壊れないだろうし困ったらすぐ近くのディーラーに駆け込めばいい。このあたりの感覚、安心感は「トヨタ」のすごさを感じます。

と、いうわけで…

まあそんなこんなでC+podという「おもちゃ」なゲタ車を買ったわけです。で、しばらく乗ってみての総評なのですが

       「普通はおとなしく中古の軽自動車買っとけ!」

実に身も蓋もないが、まあ正直そうとしかいいようがない。「ちっちゃい」「非常にレア」「制度としてとてもおもしろい存在」というあたりを楽しめる人にとってC+podはかなり「おもしろい」車であることには違いないです。また、ふつうにご近所買い物カーとして乗り回しているぶんには何の問題もないし、電費も良くて使い勝手は良いのです。なので、「私は」けっこう満足しています、が。

やはり買って乗って体験してみたとて、あらためて「超小型モビリティ」というカテゴリの設定自体が間違えているとしかいいようがない。軽自動車と同じ維持コストで、軽自動車と同じくらいの価格で、軽自動車より不便な車。そんなものが受け入れられるわけがないのです。いまからでも、「軽自動車の下のクラス」ではなく「ミニカーの上のクラス」として制度をつくりなおしたほうがいいんじゃないかなあ、とおもいます。EUのクアドリシクル(L6e/L7e)車をミニカー相当の登録でそのまま持ってこられるようにするだけでいいんですよ。魅力的な製品もあるし、2人乗れたままミニカー程度の維持費でいいのであればけっこう「あ、これでいいじゃん」になる人いると思うんだよなあ。

ただ、自分のように「ほかにちゃんとした車を持っていて2台目」「維持コストはまあしょうがない」「2人乗れるゲタ車がほしいけど普通の軽自動車じゃなんか嫌」「変な制度とか変な製品とかが好き」みたいなあまのじゃくなタイプはC+podすげーおもしろいとおもいます。かわいいのは間違いない。めっちゃかわいい。かわいいは正義。そして珍しい存在であることも間違いないし、車の持つコンテクスト・物語もおもしろいです。ものすごい制約の中でなんとか作り上げられた、制約内でのとてもよく出来てる車なのは本当に間違いないんですよ。高齢者向けとか言ってる場合じゃないぞ!あまのじゃくに売れあまのじゃくに!

我が家の車(EV)たち。2台の馬力を平均すると400psくらいあるのでパワーにはこまらない。力 is パワー。

@miro
おもしろいものをつくりたい