Apple Vision Proを普段の仕事環境として使い始める

MIRO
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これだけで何不自由なく仕事ができる。あとおそらく数ヶ月後の未来には。

Apple Vision Proを日常的に使い始めた。「日常的に」というのがとてもだいじで、デモを体験するとか、ちょっと借りてみるとかではなく、わざわざ大枚はたいてアメリカまで買いに行ったのはこれをやるためだった。はたして、これが普段使いのツールとして便利に、生活に馴染む時代はやってくるのだろうか?というのを見極めたい、とおもったからだ。

実際に作業環境として「空間コンピューティング」というやつを受け入れ始めると、AppleとMetaの違い、Vision ProとQuestの設計思想の違いがより際立って見えてくる。Vision Proの話を見聞きすると、だいたいセットで「それ、Quest3でも同じことができるんだけど」という話もついてくるんだけれども、同じようで、同じでないんだということがよくわかる。

Appleが作りたいのは、まあストレートに彼らはそう言っているのではあるが、空間を使ったコンピューティング環境だ。視界を覆うディスプレイはあくまでも新しいコンピューティング環境を作るための手段にすぎない。視界をコントロールすることが目的なのではなく、視界の中の空間をコンピューティング環境とするために、手段として、視界をコントロールしている。

だからVision Proのコアとなる技術はどこにあるかというと、実はそのデバイスではない。高価で、高密度で、あらゆるものに惜しみなくリソースが注ぎ込まれているこのキラキラしたヘッドマウントディスプレイ。ついそのハードウェアに目が行きがちではあるけれども、Appleという企業が真に恐ろしいと感じるのは、visionOSのほうだとおもう。ここが、まさしくMetaとの違いが際立っているところだ。

AppleはvisionOSをつくるにあたり、iOSで長年培ってきたUIコンポーネントやOSの概念を、3Dに拡張するところからはじめた。空間内に複数のアプリケーションが配置され、それぞれ2Dや3DのUIコンポーネントを持ち、同時に起動していて、場合によっては空間に干渉したりする。そういう空間におけるコンピューティングとは、という概念を定義して、そのためのコンポーネントを定義し、開発環境と、コントロールするためのOSが整備されている。この順番でつくられているから、アプリケーションを空間に複数配置してもまったく自然に制御できる。

Vision Proを操作していても、さもそれが当たり前のように複数のアプリケーションを空間に配置し、操作できるのを感じている。というか、むしろvisionOSの流儀に沿っていない環境、つまりはMacのデスクトップ画面のほうに違和感を感じてしまう有様だ。

まだVision Proを使い始めて2〜3日しか経っていない。それでこれだけ馴染んでしまうのだから恐ろしいものだ。これは、個人的にはとても「いい傾向」だと感じている。

Metaもザッカーバーグの話していることを聞く限りでは、こういうことをやりたいんだろうな、こういう時代の覇権を握りたいからやっているんだろうなってのは端々から見えている。だから、「それQuest3でもできるよ」という話が毎度毎度出てくるんだけれども。

でも、Meta Questが持つOSは、Androidをベースとして、非力なハードウェアの力を最大限に引き出す、どちらかというとコンシューマゲーム機に近い方法論で作られている印象がある。それはそれですごい体験、面白いVRゲームを作る上では非常に重要で、そして実際にPicoなど後続企業との差を見る限りでは非常に高度な仕事を成し遂げている。けど、そこからPC的な作業・仕事のコンピューティング環境へはまだちょっと距離があるのも事実だ。QuestでもAndroidのapkをインストールすることもできるし、複数のウインドウを配置することもできる。けど、「できる」と、「根本からそれを前提として設計されている」の間にはどうしても体験に差が出てくる。

先日はこんなふうに「すごい」技術は売れない、みたいなことを書いたけれども、ゲームに関しては「すごい」はとても有効だ。エンターテイメントだからね。だから、Metaのアプローチが間違っているというわけではない。実際彼らはQuestシリーズを恐ろしい数売っているし、すでに橋頭堡を築いている。

なので、ビジネスとしてQuest/Metaのアプローチが正解なのか、Vision Pro/Appleのアプローチが正解なのかは正直自分にはわからない。どちらが成功するとか失敗するとかそういう話はしないし、興味もあまりない。

ただ、作業環境、仕事環境としてつかいはじめると、Apple Vision Proは現時点でもかなりよくできていて、これが日本語対応になるだけでももう実用域に入ってくるなあというのは感じるのだ。

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@miro
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