前にもここにぽちぽちと書いたりしたけれど、1年とすこし前。こどもたちが大きくなって手狭になったのをきっかけにマンションからいまの家に住み替えたのです。で、住み替えたのはいいけれど、あたらしい家はともかく広く、そして築古の家だったので、断熱性能も高くない。つまり、マンション時代とくらべて、光熱費がドカンと上がったんですね。おりしも世界はエネルギー価格高騰の時代。出てきた電気代にほんと目ん玉飛び出るかとおもったんですよ…。
冷暖房効率がもともと悪いうえに、暖房としてエアコンをつかっていたのでなおさらです。毎月これではやってられん、なんとかせんといかん、ということで、あわてて家庭用太陽光発電の導入を決めました。せっかくじぶんで持ってる建物だし、ね。
家庭用太陽光発電。まあ賛否両論というかえらく嫌われているというか、人によっては本当にボロクソ言われていて。でもまあそんななかいろいろ調べてみると、少なくとも自分の環境では、リスクを織り込んだうえでも十分メリットがあると判断したわけです。というわけで、今日は、設置から1年経ったので、1年目の答え合わせをします。赤裸々に生の数字をババンと出しますね。
設置費用
どこの会社で、どの見積もりでというのは道義上お見せできませんが、かかった費用は公開してしまいます。
パナソニック 太陽光発電システム 5.4kW
パナソニック 家庭用蓄電池システム 12.6kWh
機器・工事等一式で費用は363万円(税込)
システム見積もり時に、メーカーから発電量のシミュレーションももらえます。設置場所の緯度経度・方角と勾配から、年間日射量をベースにだいたい年間でこれくらいの発電量が推定されて、自家消費と売電でこれくらいのメリットがあると思われます、という試算ですね。
その発電量シミュレーション資料によると、年間推定発電金額は114,920円/年。つまり、単純計算で回収に31年半かかる見込みとなります。これではまるで設置するメリットはありませんね!っていやまあ、もちろんそんなことはないので設置したわけですが。実際の発電量がシミュレーションに対してどうだったか、コスト回収の見込みがどうなのかは続いて明らかにしていきます。
公的助成
こういったシステムを設置するにあたって、特に重要なのは公的な助成がいくらでるかです。上記のように、単純に生のコストだけを見た場合経済的なメリットがないが、社会的には導入を進めたい…。そういうところに、助成というかたちで経済的なメリットを付加することで導入のインセンティブとするわけです。特に最近は東京都が社会全体の低エネルギー化に非常に、非常に熱心で、恐ろしいほどの助成制度が整っています。
今回私が得られた助成は以下のとおり
東京都「家庭における蓄電池導入促進事業」 太陽光発電システム助成
648,000円
東京都「家庭における蓄電池導入促進事業」蓄電池システム助成
1,620,000円
こどもエコすまい支援事業
64,000円
補助金が233万円ほど出た計算です。特に東京都の家庭用蓄電池設置に対する助成は令和5年度・6年度の現在恐ろしく手厚く、太陽光発電とセットで設置を進めることで都市エネルギー需給の平準化をしたいのかなという行政側の意思を感じます。結果的に設置工事にかかった費用の3分の2近くが助成されることになりました。
ちなみにこういった助成金で固定資産を取得/改良した場合は助成金を総収入に算入しないのですが、かわりに申告が必要です。「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を書きましょう。
メンテナンスコスト
太陽光発電についてよく言われるのが「メンテコストが無視されている」みたいな話。まあうちはまだ1年経ったところなので当然メンテもへったくれもないのですが、もし何かあったとしても機器保証でおおむね対応可能と見ています。さいきんの太陽光パネルは品質が向上しており、メーカー(パナソニック)で太陽光モジュールは25年、システム機器は15年、蓄電池ユニットは10年の無償保証がついています。なんと自然災害にも15年保証がついていたり。なので、「故障したらどうするんだ!」という声に対しては「保証でなおします」というのが答えになります。いまのところお金はもちろんかかっていません。
収支(1年目)
それではいよいよ1年目の発電実績です。
左側が各月の実績値。
太陽光発電の発電量
家庭全体の電力消費量
太陽光発電のうち、売電した量(のこりは自家消費)
電力会社から電気を買った量
中央が事前予測対比。
メーカーの事前シミュレーション資料による、予測発電量
予測発電量に対する実際の発電量の成績
そして右側が具体的な収支です。
家庭全体の電力消費量から逆算した、本来の電気代
実際に電力会社へ支払った電気代
電力会社へ電気を売った額
差し引き収支(本来の電気代 - 実際に買った電気代 + 電気を売った額)
システム設置費用から補助金を引いた実質手出し額(129.8万円)に対する表面利回り
実質手出し額を回収するのにかかる年数
設置からの総回収額
おおむね毎月1.5〜2万円くらい、年間で約20万円の回収があり、特に夏場(昼間多く発電しているときにクーラーで電力消費がある)にメリットが大きいです。これは、電気代が高騰しており売電するよりも自家消費に回すほうがコストパフォーマンスがいいからで、電気の自家消費量を増やすために蓄電池とのセット運用をするほうが効果的ということです。
投資額に対する利回りは15%くらい。6.5年程度で回収する見込みで回っています。それ以後は発電するだけしたぶんすべて利益になるわけで、機器保証が15年・太陽光モジュール保証が25年あることを考えると十分以上にメリットを享受できると見ています。
また、実際の発電量はすべての月で事前シミュレーションを上回っており、シミュレーションはクレーム避けに若干低めに出すのかな?という気もしています。
家庭用太陽光発電・蓄電池設置のメリット・デメリット令和最新版
単純に金銭的な面で言うならば「太い助成があるならば十分にメリットがある」と言えるかなとおもいます。東京都の超絶助成がなかった場合はけっこうリスクに対して微妙なラインかもしれません。
さらにV2H+EVをシステムに組み込み、本当に無駄なく発電した電気を蓄電し家庭で使い切る循環を作れればメリットは増やせますし、災害時などに心強いバックアップになるのもよいところです。自宅ではStarlinkも常備したので、少なくとも電気とネットはインフラ遮断されてもしばらく生き延びられる予定でいます。
パネルが寿命を迎えたときにどうするのか、というのが課題と言われてはいますが、現在の太陽光パネルは先述のとおり25年出力保証がついています。25年間は少なくとも出力を維持できる見込みなわけで、さすがにそれだけ使い切れば収益面でも廃棄コストくらいは出せるだろうと見込んでいますし、そのころにはリサイクル体制も整っているでしょう。既に太陽光パネルの自動解体ラインなども開発運用されていますし。
と、見てみるとわかるとおり、太陽光発電システムのコストパフォーマンスは
電気料金と売電単価をいくらで見込むか
蓄電池を併設するかどうか、自家消費率をどこまで上げられるか
太陽光パネルと蓄電池のシステムコスト
助成金の額
太陽光パネルの性能・保証
といったパラメータに大きく左右されます。そして、そのパラメータは、20年前・10年前と今ではそれぞれ大きく前提条件が異なるので、「以前設置したひと」の体験談や収支と今の体験や収支は大きく異なります。以前は売電単価が高く、電気代が安かったので自家消費率を下げてすべて売電に回すほうがお得だったりもしたくらいです。今とは真逆ですよね。
そして答え合わせ
冒頭に示した発電量シミュレーションでは「回収に31年半かかる」見込みだったのが、1年終わって試算してみると7年もあれば回収できる計算になってました。さて、この差はいったいどこから出てきたのか?
一番大きいのは補助金。支出363万円が129.8万円まで下がったのですからそりゃあ短くなります。これだけで31年半が11年ちょっとに短縮です。
そして次に大きかったのが、蓄電池も導入したことによる自家消費率の向上でした。
検討時にいろいろな資料やサイトを調べてみても、家庭用太陽光発電の自家消費率はだいたい30%という話しか出てこないのです。これは蓄電池がないときの数字で、昼間発電している電気をその場でつかう分しか計算に入っていないので当然といえば当然です。いまは売電価格よりも買電価格のほうがはるかに高いので、自家消費率を上げれば上げるほどコストパフォーマンスが良くなります。でも、蓄電池を併用したときにどれくらい自家消費率が上がるのかはあんまりちゃんとした数字が見つからなかった。なので、自分は保守的に見て10年くらいで回収できるだろうと読んでいました。
つまり私的な答え合わせとしては、事前の試算よりはるかに効率がよかった、という結論になります。多少のトラブルがあってもこれなら充分回収できるでしょう。
というわけで「以前の話」ではなく、いまの、令和最新の「家庭用太陽光発電の収支」をまとめてみたというわけでした。気になっているひとの参考になれば、とおもいます。