古典部シリーズの米澤穂信による警察物ミステリ。氷菓のアニメは見たけど米澤氏の小説を読むのは初めて
作品内容以前にまずaudibleのレビューにある通り、ナレーターの読み上げがめちゃくちゃ悪い。ガサガサとした声で聞き取りづらく最初はだいぶ面食らってしまった
とはいえハードボイルドな男性刑事という役柄なので聴き進めるうちにだんだん雰囲気に合ってるかなと感じられるようになった
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ミステリといえば探偵だけど本作では警察が通報を受けて捜査し、推理して解決に至る。まっとうな手続きだ。では逆になぜ探偵というものが好まれるのか
警察のようなプロではない素人でも自由に推理できるのが読者目線であるし、組織としてのお仕事ではなく趣味的なモチベーションの高さを持っていたり、無能な警察を出し抜く探偵という構図の気持ちよさもあるんだろうなとは思う
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ちょっと話がずれてしまうけど、元日からの災害でSNSではたくさんのお気持ちが溢れてて、それを見てるだけでかなり疲弊してしまった。こうした大衆のお気持ちによるアイデア出しはまさに探偵の推理行為に近い感じもしてしまう
でも実際にはそんなことをする必要もなく事件に対して警察は仕事をしている。もちろんそこに間違いや不正が無いとは言えない。だからそこにつけ入るヒーローが名探偵になる
けどほとんどの指摘は素人のお気持ちに過ぎず、プロフェッショナルな専門性を有していない。SNSではそうしたお気持ち名探偵が溢れていて、彼らのパフォーマンスを見るたびにしんどい気持ちになった
…なんだか老害の社説みたいなことを書いてしまった
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この小説を聴いてたのは前回書いた正月に20km走ってたときで、改めてミステリとランニングの相性の良さを感じた
ミステリはたどり着くべきゴールがあり、情報の入手と起こり得た可能性の絞り込み検証を繰り返して一歩ずつ進んでいく
もちろんカンの良い人なら一気に真相にたどり着くこともあるだろうけど、自分はあまり謎を解き明かそうというモチベーションは持ってない気がする(倍速で聴いてるせいもあるけど…)
それよりは一つずつ情報が加えられていくことによる状況の進展感。それ自体に確かな足取りを感じる。それがなんだか走っているときの気分にマッチするなということを改めて感じた