梅の実は黄ばみ雨は降り第二の梅仕事は始まる

半井ユキヤ
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 梅子黄。「うめのみきばむ」、と読むらしい。七十二候のひとつで、ちょうど今ぐらいの時分、梅の実が黄色く色づくこと。またその頃に長雨が始まるので、梅雨と呼ぶようになった、とか何とかかんとか。風流だねぇ。

 甘い、甘い、ちょっとすっぱい、梅の香り。それがたまらんと述べたのは、先月の末か。そのとき漬けた梅シロップも頃合いかとなったある日、私はテレビで梅仕事の特集を見てしまった。

 「しまった」とはどういうことか、というと、まぁつまりそういうことである。

 見ているうちに、「梅干しもやりってええぇぇぇ~ィ!」となってしまったのだ。

 とはいえ、その気持ちは毎年持っていた。しかし梅干しを作ったところで喜んでモリモリ食べるのは私だけで、配偶者は何らかの料理に加工しない限りは口にしない。持て余してしまうのではないか、と踏み切れずにいた。そのときも例に漏れず、「でもなぁ、私しか食わんしなぁ」と気持ちはしゅるんと萎んだ。

 テレビの梅仕事特集を見た同じ日の夜、今度はトロピカルフルーツを取り上げている番組を見た。ライチが好きな私は、ライチが食べたくなってしまった。そういえば、買い物に行ったときにスーパーで見掛けたな、と思い出す。翌々日に外出の予定があったので、帰りに立ち寄ってあったら買おうと心に決めた。

 しかし、用事を済ませたその帰りにスーパーに立ち寄ると、ライチはなかった。龍眼はある。ライチは見当たらない。

 龍眼じゃないんだよなぁ~、と少しガッカリして、ふと周辺を見渡すと視界に入ったのは――梅の実。

 シロップにするのに漬けたものより一回り大きい、3Lサイズ。でかい。

 私は梅の実と、お昼ごはんを買って帰宅した。「ライチがなくて悔しかったので」、と言い訳をしながら。

 で、

 買ってきた梅の実を、

 まず漬けた。通常は粗塩で漬けるらしいが、うちで日頃使っているのはヒマラヤ岩塩のパウダー。ピンク色なのはそのせいだ。粗塩よりもまろやかな味のヒマラヤ岩塩と、殺菌作用を期待するのも込みではちみつも入れたので、多分できあがったらかなり食べやすくなるはずだ。これなら配偶者も「すっぱ!」となんかすごい変な顔はしないだろう。

 とか何とかやっているうちに、とうとう住んでいる町のあたりも梅雨入りした。梅雨が明けたら、漬けた梅を天日干しにする。漬けた梅を干す、梅の漬け物を梅干しへと変貌させるためのその大事な作業は、数日間こまめにひっくり返しながら干すのだという。何と丁寧なことか。雑な私に務まるだろうか。でも始めてしまったからにはやるしかない。始めたのは私。私が始めた梅仕事だ。

 若干不安になりつつ、入ったばかりの梅雨が明けるのを待ちながら、今日も私は梅がぎっちり入ったジップ付きの袋を返し梅酢を行き渡らせている。

 今年の梅仕事は、まだまだ終わらない。

@nakyukya
まったくここはしずかなインターネッツでつね