実のところ、もうとっくにできていた。年が明ける前に、である。
そう、あの干し柿だ。
左は紙紐を使ったにもかかわらず運良く紐がちぎれず生き延びた柿、右は落下して潰れてしまい蘇生措置を施された柿になる。昨年のクリスマス前に「そろそろいいんじゃないかな」と室内に取り込まれ、台所の布巾掛けのバーにとりあえず吊され半月以上。どちらもすっかり一端のドライフルーツのようになった。
もう、食べてもいいのではないだろうか。なんかちょっと硬いし。
これ以上吊しておいたら、水分がもっと飛んでガッチガチになってしまう……
そんなわけで、食べることにした。
何しろ初めて作った干し柿、本当は配偶者にも試してほしいところだが、生憎と配偶者は柿が好きではない。私だけが味わうことになる。ふたつ食べられる。やったー!
右の柿は干す際にドロドロになってしまったところ(実際は触ってみるとちゃんと乾いてはいた)に不安があったので、包丁でカットした。そして左の柿は、紐を取り付ける箇所を作るために突き刺した竹串が抜けないまま。だが、いい。味に変わりはないだろう。
まずは、右の柿を一口。
甘い。ものすごく甘い。
皮を剥いて煮沸消毒して干して、表面が乾いてきたら少し揉んで、その後また軒下にぶら下げて放置していただけ。
それなのに、渋柿がこんなに甘くなるのか!
感動した。ど素人の私でも、干し柿を作れるのだ。こんなに簡単に、そしておいしく!
左の柿もいただく。
こちらも甘い。おいしい。干されているのでジューシーさはないが、思い切り「こういう糖分」という味がする。
あっという間に、ふたつとも食べてしまった。大好きだから仕方ない。私は柿に感謝した。山に感謝した。こんな幸せがあっていいのか。いいんだな? いっか!
初めての干し柿作りは大成功を収めた。そして味をしめてしまった。何ということをしてしまったのだろう。こんなのまたやっちゃうに決まっている。『簡単おいしい』は大正義なのだから。
今年の晩秋も、また、柿を干そう。固く心に決めたのだった。